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第四章 ダンジョン・プログラム
第十五話 出国準備
しおりを挟む共和国の情報は、意外な所から入ってきた。
「え?ダーリオが?」
「はい。ダーリオ殿の知人が、共和国から逃げ帰ってきたそうです」
「そうか、カルラ。ダーリオは、他になにか言っていたか?」
「はい。共和国との国境は機能していないようです。確認は、出来ていませんが、人の流れから真実だと思われます。ダーリオ殿は、マナベ様が共和国に行くと知っているので積極的に知人から情報を聞き出してくれました。資料としてまとめてあります」
「わかった」
カルラが手にしている資料を受け取る。
スタンビートが発生したいのは、ほぼ間違いは無いようだ。近隣の村や街は大丈夫だけど、街道が封鎖されてしまっている。
「街道の封鎖の理由は?」
「はい。対外的には、『魔物の襲撃があるため』となっています」
「対外的?」
「これも、ダーリオ殿からの情報なのですが、どうやら街道に”盗賊”が大量に発生しているようです」
「盗賊?カルラ。おかしくないか?共和国には、”盗賊”は居ないよな?」
「はい。”いない”ことになっています」
それぐらいのことは理解している。
盗賊に身を落とす者たちが存在している。その場合には、近隣の街に常駐している”軍”が対処を行う。
「そうか、盗賊の対処が難しい状態になっているのだな?」
「はい。魔物のスタンピードが発生して、魔物に対応している最中に、魔物に襲われた村や冒険者たちが、盗賊や山賊になってしまったようです」
「そうか・・・。カルラ。その盗賊や山賊を俺たちが倒しても問題はないよな?」
「はい」
エイダを戦力として加えて考えれば、村人から盗賊や山賊になってしまった者たちなら、討伐はできるだろう。
問題は、冒険者崩れや軍から流れ出た者たちへの対応だろう。1人や2人なら、俺たちの戦力なら対処はできるだろうが、統率された動きをされていたり、数の暴力に襲われたり、集団になってしまった場合には、対処が難しくなる。集団の中に、”アイツら”に匹敵する者たちが居た場合には・・・。カルラやアルバンを守りながら・・・。
「もっと・・・。違うな。このくらいの障害を喰い破らないと、やつらには届かない。カルラ!共和国に向かう。ダンジョンには潜ることは可能か?」
「はい。すでに準備は終わっています。ダンジョンには、調査した段階では制限はされておりません」
「そうか・・・。制限が発動したら、盗賊や山賊を討伐すれば・・・」
「わかりました。アルバンを呼び戻します」
「ん?アルは、ウーレンフートに居ないのか?」
「いえ、ウーレンフートには戻ってきますが・・・」
「あぁ馬車を乗り回しているのか?耐久テストにはなっているだろうが・・・」
「もうしわけありません」
「いいよ。カルラ。先に、地上に出て、アルを捕まえておいてくれ、それから、馬車の確認を頼む」
「わかりました。マナベ様は?」
「ヒューマノイドユニコーンとバイコーンを作ろうと思っている。馬車を牽かせるのに丁度いいだろう?」
「目立ちませんか?」
「目立つのが目的だからな」
「え?」
「盗賊や山賊が、ユニコーンとバイコーンに牽かれた、紋章がない馬車を見たらどう思うだろうな。あっマナベ商会の紋を作ってもいいけど、すぐには登録出来ないよな?」
「すぐの登録は出来ないですし・・・。危険では?」
「御者も、用意したほうがいいな」
「御者?」
「アルとエイダでは、見た目が悪いだろう?盗賊や山賊を誘い出すのには丁度いいが、村に入るときに体裁が悪い」
「あっ・・・。それなら」
「俺やカルラが御者をやって、アルが馬車の中に居たら、今度はアルが落ち着かないぞ?」
「そうですね」
カルラが、地上に戻ってから、執事とメイドも追加で作ることにした。
カルラは、俺が承認した書類を持って地上に戻る。他にも、委任状を書いて持たせた。俺が居ないことで、ホームの運営が止まるのは不本意だ。かなりの黒字になっているので、その資金を使えるようにしておく、その他にも受け入れ体制に関する委任状だ。
カルラが戻ったので、ユニコーンとバイコーンのヒューマノイドを作成する。馬の動きに関するデータは、十分なデータが揃っている。ユニコーンもバイコーンは、属性攻撃ができるように設定しておく、違う属性にした。30階層のボス程度の強さだ。アイツらには抵抗出来ないが、一般の冒険者なら対応は可能だろう。エイダへのリンク設定は必須になる。
エイダを上位者に設定して、人格を設定する。人格は、標準的なヒューマノイドにする。エイダとのリンクがあれば、サポートが受けられるだろう。執事とメイドは、20階層のボスに設定するような戦闘力を持たせる。学習の余地を残しておけば、人とのふれあいで違った学習データが得られるかもしれない。
ユニコーンとバイコーンと執事とメイドが2名。エイダの負荷が上がりすぎる可能性があるな。
通常時は、ダンジョンとのリンクが行われるから、処理は大丈夫だとは思うけど、高性能なノートパソコンを一つ予備に持っていくか?
『はい。マスター』
手伝いをしてくれているヒューマノイドを手招きする。
「高機能の棚から、ノートパソコンを持ってきてくれ、台数は、4台だ」
『かしこまりました』
リンクを切り替えるスクリプトを書いていると、命令を出したヒューマノイドが先頭に2体のヒューマノイドがノートパソコンを持ってきた。
『マスター。どこに置きますか?』
「そうだな。棚に置いておいてくれ」
『かしこまりました』
お!こんな端末が流れていたのか?
ヒューマノイドたちが持ってきた端末の中に、UMPCのサイズながらi7-8500Yを積んだ変態機種だ。これなら、リンク切れ時のエイダのバックアップに使えるだろう。あと、ゲーミングUMPCでi5を積んだ物を持っていこう。俺が使う端末にできるだろう。あとは、ポケコンを魔法の発動用に馬車に組み込もう。
手で、ヒューマノイドに下がってくれと命令を出す。
一礼して部屋から1体を残して出ていく、VX-4に発動できる魔法を組み込んでファンクションに設定していく、基本言語がBASICかCASLだ。BASICからCASL部分の隠し機能を使えばコールができる。優秀なポケコンだ。RS-232Cが使えるのも嬉しい。外部デバイスの利用ができる、実験は必要だが、魔石で代用が可能だろう。
ケーブルの取り回しを考えなくていいのはありがたいが、プログラムからの接続ができるのか確認が必要になる。実際に作ってみなければわからない。
---
TRON
---
デバッグのために、トレースを有効にしてから、プログラムを書き始める。
外部に接続した魔石は、アクセス方法で性質が変わるようだ。”0:ファイル名”や”CAS0(F):ファイル名”では、フロッピーやカセットテープだと認識してプログラムがロードされる。ロード時間は、早くはない。詠唱するよりは高速なので、数節の簡単な魔法なら問題にはなりそうにないが、条件を含めた詠唱だと遅く感じてしまう。
RS-232Cでの接続は直接メモリマップに接続できるようだ。接続速度も、9600bpsで問題はない。マシン語での保存が必須になってしまうので、プログラムに慣れは必要だけど、馬車に実装するための物だと割り切れば十分だろう。耐久性を含めてチェックは、出国までに終わらせれば十分だろう。最悪の場合は、俺が結界を展開すればいいだけだ。
移動中にプログラムを修正するための端末の準備も終わった。
予備のVX-4も用意できた。予備の予備として、3台を同じ設定にした。
エイダのバックアップとスクリプトも準備できた。スクリプトはエイダに設定してから試せばいいだろう。
ヒューマノイドたちの接続は、今はダンジョンになっているが、それをエイダにしてから人格を設定すればいい。インストール用のスクリプトも作った。
スクリプトとプログラムの確認をしていると、ヒューマノイドが近づいてきた。
『マスター。準備が出来たそうです』
「わかった。俺が地上に戻ってからの指示は端末を通して行う」
『かしこまりました』
ヒューマノイドたちが俺に頭を下げる。
しばらくは、戻ってこられない。そのために、外部から指示を送れるようなUIを作成した。
さて、最後の仕組みを起動する。
「パスカル!」
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