97 / 179
第四章 ダンジョン・プログラム
第十二話 カルラからの報告.2
しおりを挟むアルバンとエイダが、”地上に出る”ことにしたようだ。
エイダの新装備を軽く試すのが主題だ。それと、外に居る魔物を倒して、新装備の長子を確かめてくることになった。4-5日の予定だと報告された。ついでに、共和国への遠征に伴う準備の状況を確認してくるように指示を出した。
カルラもアルバンとエイダについていってホームの様子を見てくると言っていた。
久しぶりに、2-3日は1人で過ごすことになった。食事は、ヒューマノイドたちが準備をしてくれる。
訓練所の難易度を上げて、魔法や武器の調整に時間を使う。
カルラたちがやっていた訓練を魔物の数を2倍に増やした。魔物の数を、6倍まではなんとか対応することができた。
しかし、俺が求めている訓練にはならない。量ではなく質の訓練を行うのが難しい。
対人戦は、ホームで訓練を行ったが、アイツには届かない。イメージで戦っているが・・・。そうか!アイツをイメージした敵を想定すればいい。ダンジョンでの戦いをトレースして学習させよう。体格の問題もあるが、エイダに学習させておくのもいいかもしれない。
『マスター。カルラ様がお待ちです』
ヒューマノイドが呼びに来てくれた。
カルラは、外に出てすぐに戻ってきたのか?
「早いな、まだ半日くらいしか経っていないよな?」
『いえ、マスターが訓練室に入られてから、1日と15時間が経過しています』
「え?」
『訓練室に入られる前に、制御室で16時間、過ごされています』
「・・・。そうか、わかった」
1日以上戦っていたのか?気がつかなかった。何度か食事はした記憶がある・・・。栄養補給しただけだ。徹夜で仕事をしていたときのような疲労感はない。部屋の機材を組み立てているような感覚だ。身体と心が若いのか?負荷を感じない。
「カルラに、待っていてもらってくれ、シャワーを浴びてから、執務室に行く」
『かしこまりました』
ヒューマノイドが頭をさげてから、訓練室を出ていく、動きが洗練されてきている。
ホームの様子をモニタリングして、メイドたちの動きを、学習データとした意味が出てきたのだろう。まだ、決められた動きに”毛”が生えた程度しか出来ないが、受け答えは、概ね満足できる状況になってきている。
シャワーを浴びてから、執務室に入るとカルラが待っていた。
「悪いな。待たせた」
「大丈夫です。まずは、ご指示があった、調査の件ですが、あの方々に連絡をいたしました」
「解った」
クリスたちだな。
確かに、調査を行うにしても、貴族家が絡んでくる可能性が有るのなら、クリスやユリウスが絡んだほうがやりやすいだろう。特に、辺境伯の名前が使えるクリスなら適任だな。
「馬車は、アルバンとエイダが受け取りまして、試運転をしております。明日には、ホームに戻ってくると思います」
「問題は?」
「ありません。ただ・・・」
「なんだ?」
「はい。馬車を見た、ホームの者たちが、自分たちも欲しいと言っています」
「構わないぞ?魔法の付与までは出来ないけど、別に馬車を作るなとは言わないぞ?」
「マナベ様がお書きになった設計図ですよ?」
「うーん。別にいいぞ?ホームで管理するのだろう?」
「はい。売りに出しても?」
「いいぞ。それこそ、勝手に売ってくれていい。そうだな。一応、クリスに話を通しておいてくれ」
馬車では取引にならないだろうが、ライムバッハ家の武器に仕えるのなら、使ってもらったほうが嬉しい。
「わかりました」
「馬車を作った職人たちにも迷惑をかけることになるな」
「仕事が増えて喜ぶと思います」
「わかった。それで、共和国は?」
カルラの顔色が変わる。
何かしらの問題が発生していると考えられる。
「一部で、魔物の氾濫が発生している”らしい”と情報があります」
「スタンピード?」
「わかりません。共和国内で、対応が出来ているのかさえも不明です」
「新しいダンジョンでも見つかったのか?たしか、共和国内には、管理されているダンジョンが3箇所だったか・・・。それだけだよな?」
管理されているダンジョンがあるのは認識している。
ウーレンフートのように街が出来ている場所は少ないようだが、それでも共和国の領主たちが私兵をダンジョンに潜らせて魔物を駆除していると聞いている。管理されているダンジョンなら、スタンピードが発生するとは考えにくい。
「魔物の種類は?」
「わかりません。ただ、複数の種類で、上位種も確認されているらしいです」
「わかった。様子見だな」
「はい。共和国行きを延期しますか?」
「混乱しているのだよな?」
「はい」
「目標のダンジョンは、国境を越えてすぐの場所に有るのだったよな?」
「はい。国境から、5日程度の距離です」
時間的距離は、感覚がつかめない。5日程度とカルラが言っているが、新しい馬車でヒューマノイドと同じ技術で作られた、魔馬が引くのなら単純計算でも半分の時間になる。急げば、もっと短くできる。
指摘してもしょうがない。カルラが出してくる時間の半分だと思えばいいだろう。
「ダンジョンに入ることができるのか確認してくれ、可能なら共和国に行こう。無理なら、その時に考える」
「かしこまりました」
カルラは、他の報告に関しては、ホームでまとめられた資料を持ってきていた。
資料を受け取った。アルバンやエイダに関係している資料も存在している。
エイダに関する問題は発生していない。
機能も十全に動いているようだ。ウーレンフートでも、従魔だと思われていると報告されている。街以外から来ている商人からは、エイダと同じ様に、”獣魔にできる魔物が居たら捕獲して欲しい”という依頼がホームに来たらしい。
獣魔として提供するのなら、ヒューマノイドタイプを作っても良いとは思っているが、エイダと同等を期待されると提供は難しい。いろいろな意味で、エイダはダンジョンと深く連携してしまっている。
連携部分を切り離して、ヒューマノイドベアなら提供はできるが・・・。無視しておこう。商人が求めるのは、パートナーではなく、商材だろう。エイダだけではなく、ヒューマノイドタイプを商材として考えるのは、”何か違う”と思える。
報告は、ウーレンフートの外部にも及んでいた。
特に、鍛冶師の村は外部からの侵入を防ぐ方法を強化していた。ホーム以外からは行けない状況にしてしまった。ホームに居た樹木を扱える者たちで、鍛冶師の村の周りを森にしてしまった。元々は、鍛冶で使う燃料の確保を目的としていたのだが、ダンジョンから燃料が供給出来てしまうので、必要が無くなってしまった。建築の資材の役割も有ったのだが、森の成長が早かった。奴隷になってしまった者や、心に傷を持つものが多かったために、森が広がったのを幸いとして、外部との接触を断ってしまった。ホームを通しての依頼は受けているようなので、生活には困らないようだ。
それにしても、森にしてしまって問題は無かったのか?カルラが、クリスに連絡をしているのだろうから、問題は無いのだろう。
「カルラ」
報告書の中に気になる部分が有った。控えていたカルラを見ると、同じ様な考えのようだ。
「マナベ様。その件は少しだけ時間をください。調べます」
「解った。ウーレンフートには関係していないのだよな?」
「大丈夫です。ただ、近隣の村では、数名の行方不明者が出ております」
「領内なのか?」
「領内なら、簡単に調べられるのですが・・・」
「それもそうだな。それにしても、成人前の子供だけを狙うのか?」
「はい。最初は、口減らしだと考えたのですが、比較的余裕のある家庭の子供が突然居なくなっています」
「両親は?」
「それが・・・」
「何も訴えていないのか?」
「はい。不自然なくらいに静かに暮らしています」
「そう・・・。街や村は変わりが無いのだよな?」
「・・・。正確には、わかりませんが、自然な様子です。子供だけが消えている状況です」
「保護者が絡んでいるのか?」
「わかりません。しかし、保護者が関係していると考えるのが自然だと思います」
「わかった。貴族や国が絡んでいるようなら、クリスに連絡してくれ」
「かしこまりました」
カルラからの報告は、読んだが、”子供が不自然な状況で居なくなっている”以外の問題はなさそうだ。
馬車が来て、共和国のスタンピードの問題の情報が入ってきたら、共和国に向けて出発してもよさそうだ。
0
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる