異世界でもプログラム

北きつね

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第四章 ダンジョン・プログラム

第十一話 エイダの新しい装備?

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 返事をすると、アルがエイダを抱きかかえて入ってきた。

「兄ちゃん!カルラ姉?」

「どうした?」

 用事があるのは、エイダのようだ。
 アルの腕から、飛び降りて俺の前までエイダが歩いてきた。

『旦那様』

「エイダ。いろいろ呼び名が変わっているけど、結局、”旦那様”にするのか?エイダの見た目なら、マスターとかがいいと思うけど?」

『それなら、マスター』

「なんだ?」

『アルバンと、ダンジョンの外に出ました。半日・・・。正確には、8時間ほど魔力の供給を受けられない状況で稼働しました』

「大丈夫なようだな」

『はい。後ほど、ログを提供いたします』

「わかった。感覚的には?」

『魔力を使う動作は、肉体強化と、視覚強化と、聴覚強化と、探索魔法を常時使いましたが、0.3パーセントほどの利用率に抑えられました』

「そうか・・・。もう少しだけ、効率を良くしたいな。半年程度の稼働になってしまうだろう?」

『休止時間を設定すれば、12ヶ月程度は稼働できると思います』

「戦闘を考慮しなければ・・・。だろう?」

『はい』

「支援魔法は常時使わないにしても・・・。魔核の統合は無理だよな?」

『はい』

「うーん」

 手元に持ってきていた、親指シフト端末オアシスポケットを見る。元々は、単3乾電池2本で動いていた。今は、魔核をセットすると動き出す。調べた所、内部のコンデンサーを交換した痕がある。所謂「ル・マン化改造」機だ。ワープロ専用機だが、メモを作成するのに優れている。他にちょうどいい端末が無かったこともあり、持ち出して使っている。

「エイダ。魔力を補充はできるよな?」

『可能ですが、休眠しないと貯まりません』

「例えば、魔核から吸収できるようなら、エイダ用の補助魔核を俺が持ち歩けば解決しないか?」

『わかりません』

「そうか、試してみるのが良さそうだな。魔核を持ち歩くのは・・・」

 カルラを見ると、首を横にふる。
 確かに、魔核は現金化しやすいから、盗難されやすいだろう。俺・・・。でも、襲われそうだな。形を変化させたほうが良さそうだな。

「カルラ。少しだけ席を外す。アルから報告を聞き取りしてくれ・・・。アル。カルラに、今日のウーレンフートの様子を報告してくれ」

「はい」「わかった」『マスター?』

「エイダ。手伝ってくれ」

『はい。マスター』

 エイダを抱きかかえるように、部屋を出る。
 管制室に入って、エイダを降ろす。

「エイダ。魔核を頼む。それから、そうだな・・・。オーガ辺りの皮がいいかな・・・」

 エイダが近くに居た者に命令して、資材を集めている。
 作業部屋に指示した資材が準備される。

 エイダから提出されたログを見てみるが、稼働に一定の魔力が必要になっているのがわかる。動きによる変動はないが、魔法の発動で一時的に利用が増える傾向にはある。あと、ログを取るための機能も魔力を消費している。ログを見ると、やはり供給方法を考える必要がありそうだ。魔法を継続利用すると、発動時の魔力の利用が増えていく傾向にあるようだ。原因は、今後のログで判断するとして、ひとまずは供給を考えよう。それから、ログの精査を行えばいいだろう。

『マスター。お食事をお持ちします』

「そうか・・・。頼む」

『はい!』

 エイダは、側に控えていた二人を連れて作業部屋からキッチンへと移動した。

 エイダ用の補助装置を考えよう。
 魔核をそのまま持ち歩くのは駄目だ。高価なものだし、いらない詮索をされてしまう可能性だってある。その前に、ヒューマノイドベア?が街を歩いていて問題は無かったのか?
 アルバンと一緒だったからか?それとも、ホームの関連だと思われたのか?

 ゴーレムも居るし、その類だと思われたのかもしれない。
 アルバンに聞いておけばよかったな。でも、カルラもアルバンも疑問を投げかける前に馴染んでいたから大丈夫なのだろう。

 作業場所を見ると、材料が揃っているので、早速もモノ作りを始める。

 皮で、ポシェットを作る。
 エイダの色に、差し色を入れるような感じにしようと考えている。肩掛けをイメージしている。モノ作りは好きなので、問題はない。ポシェット自体は、よくある形にして、機能はそれほど付けない。硬貨が数枚入る程度にしておこうと思う。
 魔核からの吸収は、隠れた機能にしておけばいいだろう。

 ポシェット中身は拡張しない。
 その代わりに、肩紐の部分に作ったポケットを作る。拡張して魔核を保管するようにしよう。ポケットから、ネットワークが繋がるようなイメージで、接続可能な場所を作る。肩にかけている部分から接続して補充ができれば、ポケットに魔核を入れておけば不測の事態が発生しても大丈夫だろう。

 作業の手を止めて、振り向いたらエイダがサンドイッチを持って居た。
 どのくらい待っていたのか解らないが、待っていたのは間違いない。

「悪い」

『いえ、マスター。どうぞ?お飲み物は?』

「コーヒーを頼む」

『かしこまりました』

 準備をしていたのだろう、コーヒーをヒューマノイドが持ってきた。

「エイダ。コンセプトは決まった。形を簡単に作ってみたから、使ってみてくれ、デザインはカルラと相談してホームで調整してもらってくれ」

『はい!』

 簡単に作ったポシェットをエイダに渡した。
 少しだけ大きいけど、調整を任せれば大丈夫だろう。

 ポケットに付いている接続端子にエイダが接続を行う。

『マスター。補充が出来ます』

「基本は、これで大丈夫そうだな」

『はい』

 エイダから、ポシェットを受け取って形にしていく、形にして大凡の材料を計算する。予備を含めて、2-3個の制作を依頼しよう。エイダだけではなく、俺が持つ武器や防具に魔力を渡すことができるかもしれない。
 予備があれば実験もできるだろう。

 制御室から、執務室に移動する。
 すぐにカルラが部屋にやってきた。

 コンセプトを作ったポシェットをエイダに渡した。同時に、カルラにデザインを依頼する。

「マナベ様?」

「ん?」

 カルラが、エイダを抱えた。エイダに説明を任せたのが間違ったのかもしれない。

「・・・」

「アルからの聞き取りは出来たのか?」

「終わりました。後ほど、まとめましてご報告いたします。それよりも、このポシェットの様な物は?」

「え?ポシェットだけど?」

「はぁ・・・。わかりました。このポシェットの様な物を、ポシェットに仕上げて、エイダが持っていても違和感が無いようにすればいいのですか?」

「あっ大事なのは、肩紐の所にあるポケットだから、その部分だけはしっかりと位置の調整を頼む」

「かしこまりました。材質は、なにかの皮のようですが?」

「オーガ・ジェネラルの皮だと思う。他にも、リザードマンの皮とミスリルスパイダーの糸を使っている」

「・・・。わかりました。材質もこちらで吟味します。ポケットの材質は内側に、オーガ・ジェネラルの皮を使えばいいですか?」

「うーん。それなら、いろいろな素材で、複数のポケットを作ってみてくれ。肩紐の部分だけでいい」

「わかりました。そのように指示を出します」

「頼む。素材は、エイダかヒューマノイドたちに頼めば持ってきてくれる」

「はい」

 エイダを、渡してから、カルラは一礼して部屋を出ていく、指示を出すためだろう。

「あっ。マナベ様。後ほどお時間をいただきます。アルバンの報告と、私の報告の続きがあります」

 ドアを閉める寸前で思い出して、振り向きながら今後の予定を伝えてきた。
 ダンジョンの監視と制御のプログラムは終わっている。あとは、負荷テストや避難訓練を数回ほど行って問題がなければ、実運用に移行する。エイダのポシェットも形が出来てから、魔法を付与すればいい。武器や防具も、一通りは大丈夫だろう。付与すべき物は終わっている。

 報告の中で、馬車の話が出だろう。カルラなら、俺が馬車を”いじる”可能性も考慮しているだろうから、素材の選別と魔法の組み込みプログラムをしておこう。

 他にも、指輪以外の装備品も作っておこう。
 共和国でも王国貨幣は使えるけど、田舎ではわからない。そのときに、物々交換ができるような装備品を持っていくことにする。自重した物にしておけば問題も発生しないだろう。特に、クリスあたりに目を付けられると後々厄介だから、作ったアクセサリーをカルラに見せて確認を行っておこう。
 あとは、馬車に腐らない素材を積んでいけば行商人に見える・・・。と、いいな。
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