96 / 179
第四章 ダンジョン・プログラム
第十一話 エイダの新しい装備?
しおりを挟む返事をすると、アルがエイダを抱きかかえて入ってきた。
「兄ちゃん!カルラ姉?」
「どうした?」
用事があるのは、エイダのようだ。
アルの腕から、飛び降りて俺の前までエイダが歩いてきた。
『旦那様』
「エイダ。いろいろ呼び名が変わっているけど、結局、”旦那様”にするのか?エイダの見た目なら、マスターとかがいいと思うけど?」
『それなら、マスター』
「なんだ?」
『アルバンと、ダンジョンの外に出ました。半日・・・。正確には、8時間ほど魔力の供給を受けられない状況で稼働しました』
「大丈夫なようだな」
『はい。後ほど、ログを提供いたします』
「わかった。感覚的には?」
『魔力を使う動作は、肉体強化と、視覚強化と、聴覚強化と、探索魔法を常時使いましたが、0.3パーセントほどの利用率に抑えられました』
「そうか・・・。もう少しだけ、効率を良くしたいな。半年程度の稼働になってしまうだろう?」
『休止時間を設定すれば、12ヶ月程度は稼働できると思います』
「戦闘を考慮しなければ・・・。だろう?」
『はい』
「支援魔法は常時使わないにしても・・・。魔核の統合は無理だよな?」
『はい』
「うーん」
手元に持ってきていた、親指シフト端末を見る。元々は、単3乾電池2本で動いていた。今は、魔核をセットすると動き出す。調べた所、内部のコンデンサーを交換した痕がある。所謂「ル・マン化改造」機だ。ワープロ専用機だが、メモを作成するのに優れている。他にちょうどいい端末が無かったこともあり、持ち出して使っている。
「エイダ。魔力を補充はできるよな?」
『可能ですが、休眠しないと貯まりません』
「例えば、魔核から吸収できるようなら、エイダ用の補助魔核を俺が持ち歩けば解決しないか?」
『わかりません』
「そうか、試してみるのが良さそうだな。魔核を持ち歩くのは・・・」
カルラを見ると、首を横にふる。
確かに、魔核は現金化しやすいから、盗難されやすいだろう。俺・・・。でも、襲われそうだな。形を変化させたほうが良さそうだな。
「カルラ。少しだけ席を外す。アルから報告を聞き取りしてくれ・・・。アル。カルラに、今日のウーレンフートの様子を報告してくれ」
「はい」「わかった」『マスター?』
「エイダ。手伝ってくれ」
『はい。マスター』
エイダを抱きかかえるように、部屋を出る。
管制室に入って、エイダを降ろす。
「エイダ。魔核を頼む。それから、そうだな・・・。オーガ辺りの皮がいいかな・・・」
エイダが近くに居た者に命令して、資材を集めている。
作業部屋に指示した資材が準備される。
エイダから提出されたログを見てみるが、稼働に一定の魔力が必要になっているのがわかる。動きによる変動はないが、魔法の発動で一時的に利用が増える傾向にはある。あと、ログを取るための機能も魔力を消費している。ログを見ると、やはり供給方法を考える必要がありそうだ。魔法を継続利用すると、発動時の魔力の利用が増えていく傾向にあるようだ。原因は、今後のログで判断するとして、ひとまずは供給を考えよう。それから、ログの精査を行えばいいだろう。
『マスター。お食事をお持ちします』
「そうか・・・。頼む」
『はい!』
エイダは、側に控えていた二人を連れて作業部屋からキッチンへと移動した。
エイダ用の補助装置を考えよう。
魔核をそのまま持ち歩くのは駄目だ。高価なものだし、いらない詮索をされてしまう可能性だってある。その前に、ヒューマノイドベア?が街を歩いていて問題は無かったのか?
アルバンと一緒だったからか?それとも、ホームの関連だと思われたのか?
ゴーレムも居るし、その類だと思われたのかもしれない。
アルバンに聞いておけばよかったな。でも、カルラもアルバンも疑問を投げかける前に馴染んでいたから大丈夫なのだろう。
作業場所を見ると、材料が揃っているので、早速もモノ作りを始める。
皮で、ポシェットを作る。
エイダの色に、差し色を入れるような感じにしようと考えている。肩掛けをイメージしている。モノ作りは好きなので、問題はない。ポシェット自体は、よくある形にして、機能はそれほど付けない。硬貨が数枚入る程度にしておこうと思う。
魔核からの吸収は、隠れた機能にしておけばいいだろう。
ポシェット中身は拡張しない。
その代わりに、肩紐の部分に作ったポケットを作る。拡張して魔核を保管するようにしよう。ポケットから、ネットワークが繋がるようなイメージで、接続可能な場所を作る。肩にかけている部分から接続して補充ができれば、ポケットに魔核を入れておけば不測の事態が発生しても大丈夫だろう。
作業の手を止めて、振り向いたらエイダがサンドイッチを持って居た。
どのくらい待っていたのか解らないが、待っていたのは間違いない。
「悪い」
『いえ、マスター。どうぞ?お飲み物は?』
「コーヒーを頼む」
『かしこまりました』
準備をしていたのだろう、コーヒーをヒューマノイドが持ってきた。
「エイダ。コンセプトは決まった。形を簡単に作ってみたから、使ってみてくれ、デザインはカルラと相談してホームで調整してもらってくれ」
『はい!』
簡単に作ったポシェットをエイダに渡した。
少しだけ大きいけど、調整を任せれば大丈夫だろう。
ポケットに付いている接続端子にエイダが接続を行う。
『マスター。補充が出来ます』
「基本は、これで大丈夫そうだな」
『はい』
エイダから、ポシェットを受け取って形にしていく、形にして大凡の材料を計算する。予備を含めて、2-3個の制作を依頼しよう。エイダだけではなく、俺が持つ武器や防具に魔力を渡すことができるかもしれない。
予備があれば実験もできるだろう。
制御室から、執務室に移動する。
すぐにカルラが部屋にやってきた。
コンセプトを作ったポシェットをエイダに渡した。同時に、カルラにデザインを依頼する。
「マナベ様?」
「ん?」
カルラが、エイダを抱えた。エイダに説明を任せたのが間違ったのかもしれない。
「・・・」
「アルからの聞き取りは出来たのか?」
「終わりました。後ほど、まとめましてご報告いたします。それよりも、このポシェットの様な物は?」
「え?ポシェットだけど?」
「はぁ・・・。わかりました。このポシェットの様な物を、ポシェットに仕上げて、エイダが持っていても違和感が無いようにすればいいのですか?」
「あっ大事なのは、肩紐の所にあるポケットだから、その部分だけはしっかりと位置の調整を頼む」
「かしこまりました。材質は、なにかの皮のようですが?」
「オーガ・ジェネラルの皮だと思う。他にも、リザードマンの皮とミスリルスパイダーの糸を使っている」
「・・・。わかりました。材質もこちらで吟味します。ポケットの材質は内側に、オーガ・ジェネラルの皮を使えばいいですか?」
「うーん。それなら、いろいろな素材で、複数のポケットを作ってみてくれ。肩紐の部分だけでいい」
「わかりました。そのように指示を出します」
「頼む。素材は、エイダかヒューマノイドたちに頼めば持ってきてくれる」
「はい」
エイダを、渡してから、カルラは一礼して部屋を出ていく、指示を出すためだろう。
「あっ。マナベ様。後ほどお時間をいただきます。アルバンの報告と、私の報告の続きがあります」
ドアを閉める寸前で思い出して、振り向きながら今後の予定を伝えてきた。
ダンジョンの監視と制御のプログラムは終わっている。あとは、負荷テストや避難訓練を数回ほど行って問題がなければ、実運用に移行する。エイダのポシェットも形が出来てから、魔法を付与すればいい。武器や防具も、一通りは大丈夫だろう。付与すべき物は終わっている。
報告の中で、馬車の話が出だろう。カルラなら、俺が馬車を”いじる”可能性も考慮しているだろうから、素材の選別と魔法の組み込みをしておこう。
他にも、指輪以外の装備品も作っておこう。
共和国でも王国貨幣は使えるけど、田舎ではわからない。そのときに、物々交換ができるような装備品を持っていくことにする。自重した物にしておけば問題も発生しないだろう。特に、クリスあたりに目を付けられると後々厄介だから、作ったアクセサリーをカルラに見せて確認を行っておこう。
あとは、馬車に腐らない素材を積んでいけば行商人に見える・・・。と、いいな。
0
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...

黄金の魔導書使い -でも、騒動は来ないで欲しいー
志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。
そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。
‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!!
これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。
「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる