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第四章 ダンジョン・プログラム
第三話 ヒューマノイドベア?
しおりを挟む「兄ちゃん!」
「アルか?どうした?」
「今日は、どうするの?カルラ姉から”聞いてこい”と言われた!」
言葉遣いを、カルラから注意されていたが、アルバンの言葉遣いは矯正できていない。俺も、別に気にしないのだが、カルラが最低限の言葉遣いは身につけるべきだと言い続けている。
「あ!そうだ、エイダを連れてくるから、カルラと食堂で待っていてくれ」
「え?新しい、ヒューマノイド?」
「あぁ違・・・。わないけど、違う」
「うん。わからないけど、わかった!」
一度、エイダを連れに戻った。
以前は、部屋から出られなかったが、魔核が安定したので、出られるようになっている。イヴァンタール博士は、生みの親で、俺は”マスター”という位置づけになっている。エイダは、”魔物”なのかと聞かれると、違うように思える。ヒューマノイドタイプではない。エイダの中に、通信機や予備の魔核を入れるために、内部を触って確認したら、”ぬいぐるみ”で間違いはない。そこから、カスタマイズが行われている。カスタマイズで済まされるレベルでは無いのは解っているが、魔物の素材を使って、防水はもちろん防塵にも、防刃にもなっている。魔核に魔法を付与する方法で、かんたんな結界が常時発動している状態にもなっている。机の引き出しから出てきた未来の耳がない猫型ロボットと同じで、地面から数マイクロミリだけ浮いている状態になっている。
ちなみに、魔法を逆コンパイルして解析してから、自分に使ってみたが、実用に耐えられるレベルにはならないと判断した。重量が影響しているうえに、恐ろしく燃費が悪い。体積に依存してしまうように思える。うまく調整すれば、空が飛べるかもしれないと考えたが、違う魔法式を考えたほうがよさそうだ。
「エイダ!」
「マスター。御用ですか?」
返事だけでもわかるくらいに、随分と表現が豊かになった。
「問題は何かあるか?」
「快適です。改良の許可を頂けましたので、バージョンアップを行っています。それから、この部屋は、”管制室”と名付けました」
確かに、部屋の名前が定まらないと、方向性が難しいからな。
機械学習の成果も出ているようだ。エイダと名付けたのは正解だったかもしれない。”管制室”なんて言葉は、流れ着いた素材の中にしか存在しないだろう。エイダが名付けで利用した知識は、日本の知識だと思われる。
「わかった。”管制室”だな」
「はい。マスター」
発音も問題はなさそうだ。イヴァンタール博士は、エイダには声帯も組み込んでいたが、発声のプログラムが出来ていなかった。発声を作るのは難しいと思っていたが、スピーカーからサンプリングを再生するようにしてみた。魔核が追加で必要にはなったが、エイダが話せるようになる方が重要だと判断した。
「エイダ。カルラとアルバンという従者が居るのだけど」
「はい。存じております」
「二人と今後の話をしたい。エイダにも参加して欲しい」
「わかりました。議事録を作成すればよろしいですか?」
「そうだな。紙は無理でも、後で話し合った内容がわかると嬉しい」
「かしこまりました」
エイダを連れて、食堂に移動すると、カルラとアルバンが待っていた。
ヒューマノイドも食事の用意をして待っている。
「兄ちゃん!」
「アル。待たせたな」
「大丈夫!それよりも、その生き物みたいな奴は何?ヒューマノイドベア?」
「俺のサポートをしてもらう。エイダだ。ヒューマノイドではない。でも、何者って言われると困る」
「アルバン様。カルラ様。私は、マスターのサポートオートマタのエイダです。よろしくお願いします」
「「さぽーとおーとまた??」」
二人の言葉が重なった。
俺も疑問に思ったのだが、たしかに”オートマタ”はいい表現だ。機械仕掛けではないが、自律人形と考えれば、たしかにオートマタだ。
「はい。私の役目は、マスターのサポートです」
カルラもアルバンは、”サポート”を気にしたわけではない。”オートマタ”の意味がわからなかったのだが、エイダには、サポートがわからないと聞こえたのだろう。サポートの説明をしている。
エイダの目的は、知識面のサポートになってくる。ダンジョンや魔物に対する知識は、エイダがいればまかなえる部分が多い。市井の噂はなしから、集合知を得ることも出来る。今は、ウーレンフートの俺たちのホームに関した”集合知”だが、これから範囲を広げていけるだろうと予測される。
芽生えた個性を喜ぶかのごとく、エイダは説明を行っているが、”クマのぬいぐるみ”が身振り手振りをしているのが微笑ましてくかわいい。声を中性的に調整してしまったのが、悪かったのかもしれない。アニメなら、”CV:蒼井翔太”とか出てきそうだ。個人的には、”CV:釘宮理恵”でも似合いそうと思った。
「マナベ様。エイダ様はわかりましたが、これからどうされるのですか?」
「カルラ様。私には、”様”を付けていただく必要はありません。エイダとお呼びください。マスター。私からの提案があります」
「なんだ?」
「マスター。共和国にも、ウーレンフートと同じダンジョンがあります。そこを攻略されてはどうですか?」
「兄ちゃん!ダンジョンに行くのか?俺も一緒に行く!」
「アルバン!もうしわけございません。マナベ様。私とアルバンは、近くの街で情報収集を行います」
「うーん。カルラ。まずは、共和国にダンジョンがあるのか?」
「存在します。ただ、ここのような施設の話は聞いたことがありません。共和国のダンジョンは、攻略済みのダンジョンだけだと思います」
「そうか、一種の資源としてダンジョンを閉鎖しないようにしているのだな」
「はい。帝国のイヴァンタール博士の研究結果から、ダンジョン・コアを破壊してしまうと、ダンジョンがあった場所に、魔素溜まりが出来て、凶悪な魔物が産まれます。そのために、ダンジョンは、閉じないようにするのが一般的です」
「エイダ。攻略済みのダンジョンなのか?」
「マスター。カルラ様。ダンジョンは、博士が見つけて、封印を施したダンジョンです」
「「え?」」
俺とカルラが驚く。未発見に近いダンジョンだということだ。
それは、すなわち、魔物の巣窟になっている可能性が高い。博士が封印したとして、最低でも300年は放置されていたことになる。
「兄ちゃん。カルラ姉。どうしたの?未発見のダンジョンなら、お宝が見つかる可能性だってあるよな?」
「アルバン・・・。貴方は・・・。マナベ様は、お気づきになられたようですが、博士というのは、イヴァンタール博士を指しているとしたら、350年以上前に活躍された帝国の人です。残念ながら、詳細はわかりませんが、それでも、300年以上前であるのは確実なのです」
「ふーん」
アルバンは、カルラが心配している内容がよくわからないようだ。
「”ふーん”て、アルバン。いいですか、ダンジョンは300年の間、封鎖されていたのですよ?」
「うん。だから、お宝が沢山あるよね?そうだよな。兄ちゃん!」
「そうですね。未発見の魔道具がある可能性がありますが、それ以上に、300年の間、封鎖されていたダンジョンには、魔物が溢れている可能性が高いです」
「あっ・・・。そうか、だれもダンジョンに入っていないから、魔物が倒されていないのか・・・」
「マナベ様?」
「魔物の氾濫の可能性はあるけど、俺は行こうと思う」
「・・・」
カルラは、辞めて欲しいと考えているのだろう。クリスだけではなく、ユリウスが心配すると考えているのだろう。俺は、未踏破のダンジョンというだけではなく300年以上魔物が駆除されていないダンジョンは、危険なのは解っている。しかし、それ以上に得ることもあるだろう。”あいつ”に追いつくには、この位の無茶を軽くこなせないと駄目だ。クリスやユリウスが止めても俺は、もうダンジョンに行くつもりになっている。
「マナベ様。お止めしません。しかし、私とアルバンを連れて行ってください」
「死ぬかもしれないぞ?」
「わかっています」
カルラを見つめる。
カルラは、死ぬ覚悟があるのかと思ったがどうやら違うようだ。カルラとアルバンが一緒なら、俺が無茶な攻略はしないだろうと考えたようだ。
「条件がある」
「条件ですか?」
「そうだ、今から2週間で・・・」
俺は、思いついた条件をカルラとアルバンに提示した。
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