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第三章 ダンジョン
第七十六話 イヴァンタール博士
しおりを挟む四枚目を読み始める。
イヴァンタール博士は、やはり、AIを作ったのだと書かれている。身体は、人造人間なのだと書かれている。人でない理由は、永遠に生きる理由を、”転生して来た魂を博士が無理やり押し込んだ”と信じ込ませるためだと書かれていた。他にも理由があるのだろうが、それ以外には書かれていない。
魔法生物は、俺が魔法で作る”龍”と似て非なるもののようだ。魔物の心臓と魔核を使って居るようだ。
そして、肝心の性格は”パソコンのAI”を埋め込んだと書かれている。記憶が出来て、教えた通りの動きは出来るが、学習は出来ないと書かれている。そんなことが出来るのかと思うが、出来たのだろう。
俺が知りたかったことが書かれている。
埋め込んだ魔核に”プログラムをアップロード”出来るのだ。どこまでのことが出来るのかは、調べてみればわかるだろう。
ケーブル類がないことも説明されている。
魔素がケーブルの代わりになっているようだ。接続の時に、魔素を操作して繋げればいいだけのようだ。電源が必要ないのも、魔素を使っているからだと説明されていた。この辺りの理論や説明は、AIにインストールされているようだ。
パソコンや機材は、魔素溜まりから”産まれる”ようだ。その時に、魔素に適合する”魔道具”に変わるようだ。イヴァンタール博士の見解では、80年代中盤から2000年代の初頭くらいまでの物が多いようだ。そして、博士の見解では、自分が現役で使っていた機種や機材や家電が”産まれている”らしい。博士と俺では、一回りか一回り半くらい世代が違うと思われる。だが、俺も80年代中盤からパソコンを触っていたので、わかる機材が多いのは嬉しい。
博士の見解が正しければ、次に”産まれてくる”のは、俺が使っていた機種や欲しかった物になってくるはずだ。
博士の見解が続いている。ダンジョンに潜っている冒険者たちの知識や思いからダンジョンが成長して、宝になるような物が生み出される。その為に、この世界にあるポーションや武器や防具が宝箱の中身になっている。
家電やパソコンが宝箱に入ってこない理由は、よく解っていないようだが、魔道具は”下層”に行かないと産出しないので、魔素を大量に必要としたり、素材がこの世界にないものだったり、動作が怪しい物は最下層に溜まり続けるのではないかと予想されていた。
四枚目は、博士の見解が書かれている。俺も気になるが、気にしてもしょうがないと思えてしまう部分がある。
五枚目は、博士が今まで調べたことが中心になっている。
博士が、話せる言語が、COBOLかPascal言語か簡単なC言語なので、パソコン系の開発には適していなかった。そのために、ネットワークプログラムなどを苦手としていて、スタンドアロンで動く物しか確認出来ていないと書かれている。
自然界に影響を及ぼす部分は、詠唱を記述して出力すればいいようだ。魔法を、プログラミングできるのは”ほぼ”間違いないようだ。
開発言語には、魔法を扱う為のライブラリが存在するようだ。これは、あとで確認してみればわかることだ。
六枚目は、C言語で作ったプログラムを魔法として使う方法が書かれていたが、魔核にバイナリを複写すれば使えるようになる。今までもやっている方法だ。間違っては居なかったようだ。他にも、インストールする媒体によって動きが変わってくる場合があるようなので、テストする時には媒体にも気を使う必要がある。動きを伴う魔道具の開発方法も書かれている。それほど難しくはない。媒体を魔素で開発環境に繋げれば、インタフェースがセットアップされるようになるようだ。魔素で開発環境につながらないような媒体は魔道具の材料には出来ないと考えているようだ。
これは、要検討だ。
「そうか、だから、ダンジョンに魔素でパソコンを繋げればインタフェースが実装されて、監視や調整が出来るのだな」
声に出してしまったが、間違いではないだろう。
インターフェースが実装されれば、ダンジョンの監視くらいはスタンドアロンで動くのだろう。
七枚目は、また博士のことが書かれている。
博士が生きていた時代は、300年以上前のようだ。歴史の授業で習った内容と合わせても、間違いは無いだろう。
そして、AIも同時に作られている。魔核が損傷していると、記憶は3日程度しか持たなくなるので、AIは博士が”死”を悟ってAIの前から姿を消してから、同じ3日間を繰り返しているのだと書かれていた。ゲームの魔王城に囚われたNPCだ。同じ日常を繰り返している。
だから、博士は技術者がやってきて、AIを同じ日常から開放して欲しかったのだ。
AIの性格付けは、博士が日本人だったころの部下で最後に一緒に仕事をした人物だと書かれている。そして、AIの内部構造の解説が書かれている。複数の魔核をつなぎ合わせているので、メンテナンスを行う時の注意なども書かれている。
どうするのがいいのか迷う。
開発もしたい。俺の力になるのは、間違い無いだろう。
AIを解き放ってやりたい。
七枚目の最後に、”倉橋”と日本語で署名されていた。
「”倉橋さん?”」
俺の前世?で仕事を一緒にした人だ。
病院系のシステムの火消しをしている時に、過労死した上司だ。
「ハハハ・・・。まさかな。アイ!」
”読み終わりましたか?”
「あぁ・・・。博士から、お前を頼まれた」
”そうですか。貴方が、本当のマスターなのですね”
「?」
”俺を、治せる者が現れるまで、ダンジョンで待つように命令されていた。そして、俺を連れ出せる者が、俺のマスターだと教えられた”
今までと違う機械音的な言葉になる。
記憶や知識ではなく、もっと奥底で命令されていたことなのだろう。
「博士は?」
”わからない”
「アイはどうしたい?」
”マスターになってほしい。そうすれば、俺は俺になれる”
「わかった。俺と一緒に来てくれ、でも、俺が進むのは修羅の道だぞ?」
”マスターの望む道が俺の進む道だ”
「俺の話は、いずれ教えるでも大丈夫か?」
”大丈夫だ。マスターは、マスターだ”
「わかった。暫く、この場所で作業をしたいが、問題はないか?」
”大丈夫だ。博士の私室には立ち入らないで欲しい”
「大丈夫だ。通路に有った部屋は使えるのか?」
”ロックは、解除されているはずだ”
「ありがとう。それから、地上に戻るにはどうしたらいい?次に地上からくる時にも、ダンジョンの中を進まなければならないのか?」
”転移の魔法が使えないのか?”
「使えない」
”使えると便利だぞ。確か、博士が書いた・・・”
「アイ。それは、後でいい。まずは、地上に戻る方法と、地上からくる方法を知りたい。俺以外を連れてくることは出来るのか?」
”どこかに・・・。あった。転移の腕輪だ。これを使えば、1階層に戻れる。腕輪をしていれば、管制室の入り口に戻ってこられる。この部屋には、攻略者しか入られない。マスターと俺だけだ。腕輪は5つあるから、マスター以外4人までなら管制室の入り口まで一緒に来られる”
「転移は、好きな場所に出来るのか?」
”階層の入り口になら移動できる”
「それなら、鍛錬に使えるな」
AIから転移の腕輪を受け取る。
AIを連れ出すのは確定だが、AIの”解放”を先にしなければならない。どの程度の時間が必要かわからないから、俺の従者を務める者たちに事情を説明する方が先だろう。地上に戻って、アルバンたちと合流してから、戻ってきて、AIを”解放”する。
”解放”の方法は、後で考えればいいし、機材のセッティングも後で考えればいい。
まずは、この場所で生活出来るのか?
解除された部屋を先に確認して、必要になりそうな物を持ってこよう。
最低1ヶ月。それから、延長するのなら、その時に考えればいい。
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