異世界でもプログラム

北きつね

文字の大きさ
上 下
80 / 179
第三章 ダンジョン

第七十四話 攻略??

しおりを挟む

 そして、扉には、何やら文字が書かれている。

「はぁ????なんで?」

 扉には、”なぞなぞ”が、”日本語”で書かれていた。

『樽を3つ持っている人の履物はなに?』

 本当に、”なぞなぞ”だ。それも、日本語で書かれている。
 ダンジョンに日本語が書かれているのもわからないけど、”なぞなぞ”が書かれているのも意味がわからない。

 答えの入力は、下の入力パッドにするようだ。
 答えは、”さんだる”だと思うけど、”ひらがな”なのか、”カタカナ”なのか、一回だけなのか、複数回なのか、それもわからない。

 駄目なら駄目でその時に考えればいいか・・・。

 入力パッドに、”さんだる”と”ひらがな”で入力した。

”正解”

 そんな文字が、表示される。

”次の問題”

 に続いて、合計で5問の”なぞなぞ”に答えた。
 徐々に難しくなっていくが、”日本語”を知っていれば、答えられる。

”全問正解”

 終わったようだ。
 扉のロックが外れる音がする。ノブは無い。

 ドアを押してみるが、動きそうもない。

 もしかして・・・。引き戸か?
 よこにずらすようにする。ドアがスライドする。この世界で初めて引き戸をみた気がする。
 そもそも、”日本語”が読めなければ、先には進めない。

 引き戸を開けると、奥に続く一本道がある。
 通路の左右に扉があるが、押しても引いても横に動かしても開かない。鍵穴もないから、開けるにはトリガーが必要なのだろう。通路を、まっすぐに進む。
 魔物の気配はしないし、俺が歩く音しか聞こえない。

 どのくらい歩いたのだろう?
 後ろを振り向けば、同じ様なドアが並んでいる通路が続いている。
 前方にも同じようになっているように思える。攻撃を受けた感じはしない。

 ドアに印を付けて歩いてみるが、同じ場所を繰り返しているわけではなさそうだ。同じ時間をかけて戻るのは、何かが違う。このまま、歩いてみる。魔物の気配はしないから、大丈夫なのだろう。

 それから、身体強化の魔法や様々な魔法を試しながら歩く。
 引き返そうと考えてから、1時間程度歩いたと思う。急に扉が表れた。どうやら終着点らしい。

 扉には、ノブが着いている。
 古い雑居ビルの事務所とかに使っているような、鉄のドアのようにも見える。

 ノブに手をかけるが、怪しい感じはしない。
 力を込める。鍵は掛けられていないようだ。

 ドアの形状を確認する。押すと開くようだ。
 すぐに逃げられる体制になって、ドアを押す。

 光が目に入る。懐かしい光だ。

 光に目がなれてくると、周りの風景が解ってくる。

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ???????」

/* ---
 アルノルトが最下層を目指して進んでいる。
 その頃、ウーレンフートでは・・・
--- */

「アルは、まだ来ないのか?」

「ユリウス様。領都に戻らないと、クヌート先生やイーヴァさんたちが困っています」

「・・・」

「ユリウス様。アルノルト様は、ダンジョンを攻略されてます。簡単に帰ってくるとは思えません」

「クリス!」

「領都で、私たちだけができることを・・・。アルノルト様のためです」

「・・・。わかった。クリス。アルのついていく者の選定を頼む」

「終わっております」

「そうか・・・」

 クリスは、ユリウスがダンジョンの転移場所を見に行っている最中に、アルバンを呼び出して、アルノルトについていくように指示を出す。本人もそのつもりだったので、問題はなかった。もうひとりの人選もそれほど難しくはなかった。
 情報部に所属している、猫族のカルラをアルノルトにつける。アルバンと同い年で丁度いいだろうと判断されたのだ。

 ギルベルトは、ウーレンフートに戻ってくると、グスタフに連絡をして、素材の買い取りを依頼した。
 全てを、マナベ商会に入金した。アルノルトとの望みとは違うが、ホームの運営を、ダーリオとヘルマンとセバスたちに任せて、自分は金庫番をやると宣言した。上層部や古参の者たちも賛同したので、運営にはなんの問題も発生しなかった。
 ウーレンフートに、ギルベルトの商会を移動させて、マナベ商会と敵対するようにした。ホームや商会の上層部は二つの商会とホームに繋がりを認めているが、街や下の者たちには知らせていない。そのために、競争が実際に行われているように見えている。

「ユリウス。クリス。ウーレンフートは任せてくれ、それから、アルバンとカルラの身分は、俺の方で作っておく」

「お願いします。ギルベルト様。私たちが、領都に戻りましたら、ディアナをこちらに向かわせます」

「わかった。俺も準備をしておく」

「ギル。アルの安否がわかったら、連絡をくれ」

「あぁ領都に連絡を入れる」

「頼む」

「ユリウス。クリス。明日の朝に出るのか?」

「いや・・・」

「・・・。ギルベルト様。ユリウス様は、すぐに出るおつもりのようです」

「そうか・・・。護衛を出す。結局、誰も襲いに来なかったから、まだどこかに潜んでいるかもしれないからな」

「はい。お願いします」「いら」「駄目だ!ユリウスは、自分の身分を考えろ!あれだけ、偉そうにアルに言ったのだぞ!お前が生き残らないでどうする!」

「・・・。悪かった」

「それに、クリスの安全は、ユリウスが守るべきことじゃないのか?」

「そうだ」

 話し合いの結果、アンチェ/ヤンチェ/ハンフダ/ハンネスが護衛で、領都まで移動することになった。支払いは、領都の予算から捻出する。

「それにしても・・・」

「そうだな」

 ユリウスとギルベルトは、ダンジョンに潜っているアルノルトを思い浮かべる。
 戦いでは、頭一つ、飛び抜けていると思っていたが、実際に戦っているところを見ると、頭一つではない。

 ギルベルトは、自分は商人だからと言い訳をしていたが、アルノルトの戦い方は、そんな言い訳が恥ずかしいと思えてしまうほどだ。勝てないとは思っていた、でも、差を実感してしまったのだ。せっかく、ダンジョンがある街にいるのだから、ザシャが来たら一緒に鍛錬に行こうと考えていた。

 打ちのめされたのは、ユリウスの方だ。
 実践や経験で、アルノルトが勝っている。その程度の差だと思っていたが、アルノルトの戦い方は、自分の考えが甘かったと思い知らされた。そして、些細な差だと思っていたものが、違ったと解ってしまったのだ。本来なら、ユリウスはアルノルトと同じような強さは必要がない。ユリウスは、英雄と呼ばれるような人物たちを見抜いて使う立場なのだ。クリスは、しっかりと自分の立ち位置をわきまえている。そのために、諜報活動に力を入れ始めているのだ。実際に、クリスが父親から引き継いだ諜報部隊は、下級貴族には網を広げられているのだが、同等の力を持つ上級貴族や他国には諜報の網を広げられていない。今、ライムバッハ辺境伯が残した網の再編と強化を行っているのだが、一定の効果が出始めるまで、最低でも2年は必要だと考えている。密偵となると、何年も前から溶け込んでいなければならない。
 ユリウスは、自分の立場は解っているが、アルノルトへの対抗意識が抜けきらなくて、ウーレンフートに逗まっていたのだ。どこか、まだアルノルトがすぐに戻ってきて、領都に一緒に戻ると言い出すのではないかと考えていたのだ。

 帰ると決まったら、すぐにでも動き出したい気持ちになっている。
 朝になってから出立したほうがいいのは、ユリウスも解っている。しかし、朝になればダンジョンを見に行って、アルノルトが帰ってこないか確認したくなってしまう。自分で解っている。

「クリス!護衛が決まったのなら、出立するぞ!」

「はい。はい。ギルベルト様。何かありましたらご連絡ください」

「わかった」

 護衛の4人は、領都まで護衛してから、ザシャを護衛してウーレンフートに戻ってくる。

 ギルベルトは、慌ただしく出立するユリウスとクリスを見送った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

処理中です...