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第三章 ダンジョン
第七十二話 最下層
しおりを挟む30階層の階層主を倒して、ユリウスとクリスとギルと別れた。
これからは、一人での戦いになる。
気を引き締めて、階段を降りる。
後ろで光っていた、魔法陣の光が消えた。3人が地上に戻ったのだろう。
「・・・」
階段を降りると、そこは草原になっていた。
草原はセーフエリアが存在しない。一人で単独踏破は骨が折れる。
「聞いていた話と違う。31階層は、まだ洞窟のはずだ。変異したのか?」
独り言になってしまっているが、不安な気持ちは誤魔化せない。
立っていても何もならない。
進んでみるか・・・。
---
出てくる魔物は、十分、対処が可能だ。
魔法を使わなくても、余裕を持って倒せる。素材は、何が使えるのかわからないから、全部確保していく。
そのために、魔力を大量に注ぎ込んだマジックポーチを作成した。
容量は無制限にはならなかったが、クリスから渡された袋を全部使えばかなりの量が持てるだろう。袋も、200枚くらいは有ったはずだ。
広大な階層ではないが、階段を探すのが大変だ。
眷属でも居れば話は違うだろうけど、魔法で作った龍たちでは階段を探すのに使えない。
余り時間をかけたくないな。
襲ってくる魔物を倒しながら、探索の範囲を広げていく、情報で脳が沸騰しそうだ。
あった!
場所をマーキングする。
探索を解除すれば、脳が落ち着いてくるのが解る。
別の方法を考えないと駄目だな。魔物に襲われなかったから良かったけど、襲われていたら、やばかった。この階層なら大丈夫だろうけど、これより下の階層では対処が難しくなる可能性がある。
これじゃぁ駄目だ。
もっと効率よく下層に降りていかなければ、奴に届かない。
マーキングした階段に向かう。襲ってくる魔物を倒しながらの移動だ。
探索で見つけた階段は、下層に降りる階段で間違っていなかった。
32階層も同じような草原だ。
今度は、探索の魔法に指向性を持たせるようにしてみる。全方位に広げるのは処理が追いつかない。それなら、探索範囲を狭めればいい。
見つかった物や魔物を除外していく、例外が長くなってしまうがしょうがない。魔法を開発するためのエディタが欲しい。間違わないで詠唱していくのが大変になってきた。セットしておけば、追加するだけで終わるけど、魔核が無駄になってしまう。
32階層は、指向性をもたせた探索がうまくできた。
まだ脳への負担はあるが、31階層での探索よりは楽になった。必要な魔力も少ない。多用は、無理だけど、階段を探せる状況にはなってきた。
33階層も同じだが、そろそろ疲れが溜まってきた。どのくらい魔物を倒したのかわからない。
階段は安全地帯と思っていいだろうが、木龍で入り口を閉鎖する。ここまで降りてきた奴が居たら、攻撃されてしまう可能性もあるが、ホームの情報では大丈夫だと判断されている。俺の周りも、木龍に命令して身体を覆ってもらう。空間を作ってもらえば、身体を晒しながら寝るよりはいいだろう。
34階層。35階層と徐々に探索ペースが落ちている。
草原がまだ続いている。途中で休む必要はまだ無いのだが、抜本的な変革が必要になりそうだ。
35階層では、階段ではなく階層主が居るだろう建物が見つかった。
探索も一度では探せなくなってきている。場所を移動しながら探索を行う必要があり、効率が悪い。指向性を持った探索を行っているが、360度の探索では効率が悪かった。
35階層の階層主が居るだろう建物には、セーフエリアが設定されていた。
しっかりと休んでから、階層主に当たろう。魔法の整理もしたいし、要らない荷物は捨てていきたい。
久しぶりに熟睡をして、準備を行う。朝なのか、昼なのか、夜なのか、感覚がない。
準備を行ってから、階層主に挑む。
出てきたのは、所謂キマイラだ。一体だからと言って油断をしていい魔物ではない。
刀を抜いて、尻尾を切り落とす。厄介なのは、尻尾の攻撃だけだ。後は、素早い獣を相手にするのと変わらない。
キマイラが光の粒子になって消えるまで30分の時間が必要だった。
魔法を使えば、もう少しだけ早く倒せたかもしれないが、魔法は封印して戦った。
36階層からは、スタンダードなダンジョンに戻った。
ただ、徘徊している魔物がアンデット系だけになっている。
動きは鈍いが、倒すには核になっている魔核を砕かなければならない。しかし、魔核を砕いてしまうと、アンデットにはドロップアイテムといえる物は存在しない。
したがって、素材にならないのだ。スケルトンは、剣や防具を持っているが、錆びついていたり、折れていたり、素材としての価値は低い。骨も素材には違いはないが、上位種でも無い限り、獣の骨のほうがいい素材になる。
そして、いやらしいことに数が多い。
洞窟型になっているので、弓矢での攻撃はないので、各個撃破に近いかたちでの戦闘が行えるので、戦闘は楽だ。
36階層、37階層、38階層、39階層、40階層と、徐々に強くはなるが、通路が狭いから、複数を相手にする必要がない。セーフエリアも点在しているので、攻略は草原ステージに比べると楽だ。モンスターハウスも有ったが、魔法で作った龍で一掃した。モンスターハウス以外は、刀で対処した。
40階層の階層主は、アンデットの大群だ。上位種や変異種が居る。エルダースケルトンがボスのようだ。魔法が通じない相手だ。魔法で倒せる者を倒してから、ボスクラスに対応する。魔法しか効かないアンデットも存在していた。
エルダースケルトンは、剣技のスキルを持っているようだ。
すでに、30分もお互いに決定打がない状態で、打ち合っている。魔法は、キャンセルされたり、打ち消されたり、当たっても軽微なダメージしか与えられていない。
カウラなら、敏捷性をアップして戦う。カウラに出来るのなら、俺にも出来る。カウラに、情けないところを見せたくない。
魔力を練り上げる。足だけではバランスが崩れる。腰や背中にも魔力を浸透させる。
体感を魔力で強化するイメージだ。
”敏捷性強化”
”思考加速”
二つの魔法を発動する。
1.5倍くらいの速度になった。スローモーションとまではいかないが、十分だ。魔力が持つ限り、このまま戦い続ける。その間に倒せなければ、俺の負けだ。やり直しはない。ゲームではないからロードなんて存在しない。
5分後。俺の前で、エルダースケルトンが光の粒子となった。
魔法を解除する。魔力の残量を考えれば、1-2分で切れただろう。ギリギリの戦いだった。
41階層に向かう部屋に行くと、二つの魔法陣があった。
中央に、1と書かれている魔法陣は1階層に戻るのだろう。もうひとつは41と書かれている。
セーフエリアのようなので、休憩する。
魔力の回復を行う必要がある。それに、疲れた。カウラの戦い方を思い出して、俺は命を救われた。誰が否定しても、俺はカウラのおかげだと考えている。
魔力の回復と気力の回復を確認してから、41と書かれた魔法陣に乗る。
41階層から45階層は、一本道が続いている。
正面からくる魔物を倒していけばいいだけだ。ただ、かなりの距離がある。横からや上からや後ろからや下からの攻撃がない。罠もないので、精神的には、玉ねぎの皮を剥いているような印象を受ける。繰り返しているのではないかと思って戻ってみたが、ただ魔物が出ない通路を歩いただけだった。
45階層には階層主は居なかった。
正確には、居たのかもしれないがわからなかった。セーフエリアに46階層に向かう階段が存在していた。
46階層からも同じようになっていた。違うのは、通路の一部が広くなって、そこに今までの階層主がランダムで出現してくるようになっている。
直前にセーフエリアがあるので、階層主との連戦にはならないが、一人で戦うには面倒な状況になっている。
50階層は、今までと違って、階段を降りたら、すぐにセーフエリアが現れた。
「ここが最下層か?」
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