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第三章 ダンジョン
第六十六話 ダンジョン
しおりを挟む久しぶりにダンジョンに来た。ティネケの体調がよくなったこともあり荷物持ちに立候補してきた。
今回は、俺のリハビリやティネケの能力を見るという意味があるので5階層の階層主を倒して帰ってくる予定にしている。
ティネケが参加することを聞きつけて、アンチェとヤンチェとハンフダとハンネスも一緒に行く事になった。大所帯になってしまったがパーティーで考えると丁度いい人数なのかもしれない。
刀を抜くことなく4階層まで楽に潜る事ができた。
「ティネケ。大丈夫か?」
「旦那様。大丈夫です」
「無理しなくていいからな」
「はい。本当に大丈夫です」
何度か聞いたが、無理している様子はない。
ただ、4階層に降りたあたりから、歩く速度が遅くなってきている。
「ハンフダ。そろそろ、一旦休もうと思うのが、この近くにセーフエリアはあるか?」
俺が一人で挑むのならまだまだ行けるしセーフエリアでの休息は必要ない。階層主の手前で休めばすむ話だ。最悪は、木竜で自分を覆う結界もどきを作ってしまえばいい。
「あります。階層主の部屋が近いので、他のパーティーが居るかもしれませんが行ってみますか?」
「そうだな。頼む。そこで休憩してから、階層主に挑んで、5階層を越えて6階層を覗いてから帰る事にしよう」
実際には、ステータス袋があるので荷物持ちは必要なかったのだ、実際の冒険時に何が必要になって、どうしたら疑われないのかを見るのにちょうどよかった。通常では荷物持ちは、最低で2-3人は必要になってくるのだろう。
どこの上位ホームも人数が多くなっていく理由がわかった。
持ち帰る素材の為ではなく、飲み物や食事が大部分を占めている。
そして、先に進めば、新たに補修する為に、同じランクかそれ以上パーティーが必要になる。
長く潜っていると、それだけ持ち帰りたい素材も多くなっていく。それがまたパーティーの行動を圧迫する。
今回、潜ってみて実感した。知識としては持っていたのだが、荷物持ちがここまでパーティーの質を左右するとは思っていなかった。
「なぁアンチェ」
「何でしょう?ご主人さま?」
「だから、ご主人さまは・・・。まぁいい。教えて欲しい事があるけど、誰か知っていたら答えてくれ」
皆がうなずく。
「セーフエリアは、変わらないのか?」
「え?」「「「??」」」
「あっ。そうだな。4階層のセーフエリアはここだろう?この場所は必ずここなのか?」
ヤンチェが手を叩く、そして答えてくれた。
「はい。私たちが潜り始めてからは変わっていません」
「うーん。ここに、店とか出そうとした奴は居ないのか?」
「え?」
「もっと言えば、宿屋のような施設を作ったりしないのか?」
「は?」
「ここに、宿屋があればみんな使うよな?トイレと風呂は無理でもシャワーがあれば使うよな?高めの設定にしても、食事が提供されたら使うよな?」
「そうですね・・・。でも・・・。他のパーティーやホームの為に作って”なにか”得になるのですか?」
ハンネスの疑問は正しいと思う。攻略がやりやすくなってしまうだけで、自分たちにとっては手間だけが増える。
「旦那様。それに、食料や物資を運ぶ手間だけが増えてしまうと思います」
「そうだな。でも、こう考えられないか?」
5階層や10階層くらいまでなら、リヤカーが使えると思っている。
リヤカーに荷物を詰め込んで、一度に大量にセーフエリアまで運んでしまう。帰りは、ここで買い取った素材を運んでもいい。どうせ、荷物持ち単独ではダンジョンに潜る事はむずかしい。それなら、大量の荷物持ちを一度にセーフエリアまで護衛しながら運んでしまえばいい。
その時に、リヤカーを使えばもっと効率的だろう。
深い階層では簡単にはできないだろうから、まずは楽に潜れる階層から始めてもいいと思っている。
「そう言えば、30階層くらいまでは安全マージンを持って潜れると思っていいのか?」
「え?」「は?」「うーん」「えぇーと」
「どうした?」
「旦那様。あまりいいたくないのですが、ランドルのときには、奴隷を使い潰して潜っていました」
あぁそんなことを言っていたな。
大量の奴隷を連れて潜って、使い潰すようにしながら進んでいたのだったな。
それなら、荷物や食料も少なくて済むという外道な考えだな。
「そうなると・・・20階層位か?」
「僕たちが1パーティーで行くとしたら、15階層なら安全です。少し無理をすれば20階層の階層主を倒して戻る事ができます」
「そうだ!あと、それを聞きたい。転移する時に、荷物はどうなる?」
「荷物も一緒に転移できますよ?魔法陣に入っている荷物も転移されますよ?」
「来る時にもか?」
「はい。そうです」
「ならなんで、食料を大量に持ち込まない?攻略が楽に・・・あぁそうか、他のパーティーを信じていないからか?」
「そうです。転移で持っていく事はできますが、ダンジョン内に置いておいたらダンジョンに吸収されるか、他のパーティーに盗まれます」
「荷物持ちに荷物番をさせても盗まれるか殺されてしまうというわけだな」
「はい。他のパーティーが一度ランドルのホームと共同作戦を提案したのですが・・・」
「わかった。あのバカは、ダンジョン内で証拠が残らないからって、そのホームのパーティーを潰したのだな」
「・・・。はい。もともと僕たちが居たホームだったのですが・・・。その時には知らなくて、素材や食材がだめになったと言われて・・・」
「あぁあのクズならやりそうだな。それに、冒険者ギルドが絡んでいたのなら手に負えないだろうな」
「・・・」
「わかった。でも、今ならできると思わないか?」
「わかりません」「・・・。できたらいいのですが・・・」
まずは低階層15階層までは各階層のセーフエリアに管理宿泊施設とシャワーとトイレを用意できるように考えてみよう。
問題になるのは”水”だけど、それは水の加護がある者に頑張ってもらおう。
早速帰って、セバスとダーリオに相談して、グスタフ主動でやってもらおう。
俺たちのホームが全面的に支援する事にする。駆け出しの冒険者や引退した冒険者でも低階層の護衛任務ならできるだろう。
セバスとダーリオは全面的に賛成してくれた。
特にダーリオは、同じようなことを、ランドルに何度も提案していたのだが、ランドルは自分の所以外にもメリットがある事なので、難色を示していたのだ。そしていろいろな理由を付けて実行しなかっただけではなく、ハンフダたちが言っていたように実行しようとしたホームやパーティーを潰していたのだ。
ダーリオが言うには、俺たちのホームが動けば冒険者ギルドは間違いなく賛成してくれるだろうと言っていた。
実行に伴う資金もマナベ商会から出す事にした。簡単に言えば投資だ。この世界で多分初めてとなるダンジョン内への出店する商会となるのだ。
従業員は、元冒険者やスラムの住人から雇うことにした。
ダーリオの提案では簡単な鍛冶ができる施設も作りたいようだが、試験段階では止めておくことにした。
これらのことを、セバスとツアレが資料にまとめてくれたので、冒険者ギルドと商業ギルドにプレゼンを行った。
王都から来た数名と各ギルドの幹部で主だった者たちが勢揃いしている。両方のギルドから合計10名が俺たちのプレゼンを聞いている。
もともとは、グスタフだけに見せたのだが、グスタフが大きな仕事になるので、冒険者ギルド主体で商業ギルドを巻き込んで実行したいと言い出したのだ。
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