32 / 179
第一章 少年期
第三十話 ラウラとカウラ
しおりを挟む「下ろせって言ってるだろ」
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる