まだかなぁ

護茶丸夫

文字の大きさ
上 下
1 / 1

ごはんまだかな

しおりを挟む
 おうちのドアが開かなくなった。
 お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもお姉ちゃん達もいない。
 おうちのなかには入っちゃダメって、お母さんが何度も言ってたから入らないよ。

 僕はいい子だからね。
 お母さん、お腹が空いたよ。

 灰色の知らないヤツが、最近ずっとおうちの周りを回ってるんだ。
 何度も「あっちいけ」って言うんだけど、ヤツも「あっちいけ」って言うんだ。
 ケンカも何度もしたけど、勝てない。
 お母さんがときどき助けてくれたけど、今はいないから、ヤツが来たら逃げないと。
 いやだけど、僕はおうちから離れないといけないんだ。
 体中が痛くて、逃げるのが大変だ。

 お母さんとお姉ちゃん達が帰ってきたら、ごはんだ。

 黒のおじちゃんと、ブチのおばちゃんは死んじゃったから、ちょっと寂しい。
 黒のおじちゃんは毛づくろいしてくれるし、怖いのが来たら「あっちいけ」って追い払った。
 ブチのおばちゃんはあまり動かなくて、近寄ると怒る。
 でも、ごはんは一緒に食べた。
 ときどき僕のごはんより、おいしいの分けてくれた。
 お母さんにごはんもらう前に、茶色いお兄ちゃんと一緒だったけど、お兄ちゃんいなくなった。

 僕はいい子だから、ごはんちゃんと待つよ。
 でも、お腹が空いたよ。

 怖くて泣いてたら、お母さんがごはんくれた。
 お姉ちゃん達も「いいこね」って、いっぱいなでてくれた。
 お父さんも見回りに行く前は「おはよう」って言ってくれた。
 帰って来た時も「ただいま」って言って、時々なでてくれた。
 お兄ちゃんは時々こっそり、いつもより美味しいごはんくれた。

 上のおうちの、おばさんとおじさんがごはんくれる。
 でも、あのおうちの茶色いのに追いかけられて怖いから、好きじゃない。
 ときどき、白黒のすごく大きいのが出てくるから怖い。

 お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもお姉ちゃん達も「くるま」でいなくなる。
 いつも大きな音でいっぱいいろんなの持って、「くるま」に入れるんだ。
 でも知ってるんだ。
 夜になったら「くるま」で帰ってくるんだ。
 でも、夜になっても「くるま」がこない。

 お腹空いたな。

 まだこないのかな。
 もういっぱい夜になったのに、「くるま」も、お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもお姉ちゃん達もこない。
 おうちもずっと暗い。
 お母さんは暗いのが嫌いなの、僕知ってるよ。
 だから、昼間も待ってるんだ。
 でも、ヤツがきたら怖いから、キョロキョロしていっぱい気を付けてるんだ。

 嫌いなおうちのおばちゃんがごはんくれる時に、ヤツがきたんだ。
 おばちゃんがヤツにもごはんくれた。
 その時は、ヤツは痛くしてこなかったからよかった。
 でもそれからは、おばちゃんのところで食べる時も、怖くてキョロキョロするんだ。

 体中痛いけど、右足が一番痛い。
 ヤツが、ぎゅって噛んだんだ。
 ときどき来る大きいのは噛まないけど、怖いから「あっちいけ」って言うよ。
 知らんぷりされるのが悔しいけど、大きいから怖い。

 お腹空いたよ。

 ジャンプした所の、おうちのおじさんは怖い。
 いつも僕やヤツが来たら、大きな声と怖い顔で追いかけてくる。
 でも、おうちのドアに近いからジャンプして通るよ。
 「くるま」がきたら、高い所からすぐわかるんだ。

 ごはんまだかな。
 お腹空いたよ。

 おうちに誰もいない。
 僕はちゃんと外でまってる。いい子だからね。
 ドアの前で待っていたいけど、ヤツが怖いから隠れて待ってるんだ。

 早くこないかな。
 お腹空いたな。

 僕の名前早くよんでよ。
 それで、ごはんだよーって。
 僕はいい子だから、待ってるから。
 お腹空いたよ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

吾輩はピゲである

モノリノヒト
エッセイ・ノンフィクション
 令和4年2月14日の朝、ピゲと呼ばれている猫は目覚める。  いつも通りの時間、いつも通りの自分。 いつも通り生活の中、やがて気付くのだ。 自分のテリトリーである家の雰囲気がいつもと異なる事に。  これは、とある一般家庭における、猫視点の物語。  忘れたくない一日。  そして──こうあって欲しいと思う願いの物語。 *小説家になろう様にも投稿しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

投稿する皆様へ

小川悟
エッセイ・ノンフィクション
『webコンテンツ大賞への参加』というタイトルで始めましたが、 小説をする場合に、少しだけ評価の上がる方法を紹介します。 個人的な独断の部分も多いですが、参考にして頂ければ幸いです。 私は元々読み専でしたが、2021年6月中旬ごろから小説の投稿を始めました。 気になった事や、わからない事を自分で調べたことなどを書いています。 便利な情報や、間違った情報がありましたら、感想でお知らせください。

オタクの金欠

あかさ
エッセイ・ノンフィクション
オタクの金欠の人の為の本

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための10の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

18歳、ソープ嬢始めました。

柳澤 美月
エッセイ・ノンフィクション
完全実話。 ソープ嬢になった私の話です。

【船乗り占い師の恋愛航海】

フーテン船乗り@船上の占い師
エッセイ・ノンフィクション
――人生は航海であり、目的地を見つけるには占いという羅針盤が必要だ。

処理中です...