チェスター君の王都巡り

護茶丸夫

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おっさん二人とチェスター君 4

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 新しい挑戦をすることに決めたチェスターは、意気揚々と食堂に戻ってきた。
 この短時間に何か良い事でもあったのか?考えた大人達。嬉しければそのうち話し出すだろうと意識を本に戻した。
 だが、小さな挑戦者はすぐに挫折を味わう事に。
 題名に読めない文字がある。

「……あのね、これわかんない。なんとかは、てん生者であるって、書いてあるのは、わかるよ?」

 おずおずと、声を出し、しょんぼりと俯いて上目遣いでチラチラと二人を見ながら話す。
 先ほどお兄ちゃんだからと答えたのに、いきなり読めない。からかったおっさん二人に完全敗北は認めない言い回しだ。
 やっぱりかとばかりに声を出さす苦笑するスタンリーと、なあんだ読めないのはこれだけかと感心するモーリス。

 「これは『わがはい』と読む。私は俺はとか、自分の事を指す言葉だ」
 「他は読めるなら、大丈夫そうだな。分からなくなったら、また聞けばいい」

モーリスが表情を変えず、真面目に答える。笑顔で頷きながらスタンリーは続きを読む様に後押しする。

 「うん!ありがとう!わからなかったらおねがい!」

 今度は意地悪言われなかった!とばかりに、ぱあっと笑顔になりお礼とお願いを伝える。
 おっさん達は真面目な顔をして頷き、そっと本に目を戻す。さっきはまだ小さな子供相手に、やり過ぎた感がとても心苦しい。何度も同じ文章を目で追ってしまう。早く次の読めない言葉を伝えて欲しい。そんな大人の心境には気が付くわけもなく、再度挑戦に意気込むチェスター。

 題名が難しいだけで、意外となんとなーく読める。細かい所は気にせずどんどん読み進めてみよう、挑戦だ!

( ……うーん。こっちもなんだか、かなしい、こわい?さっきと同じ暗いところがこわいみたいなかんじかな?この人はまわりに言葉がわかる人がいない?まだあかちゃんだからかな)

「チェスター様、お茶お待たせしました。ご本は難しいですか?」

 厨房にいた女中さんが、お茶を入れたカップをそっとチェスターの目の前に置きつつ、優しく尋ねてきた。

「うーん。むずかしい?かな?ちょっとね、かなしいのとこわいのがいっしょな本」
「悲しくて怖い本ですか。楽しいお話はのってないんですか?」
「まだとちゅうだから、わからない。たのしいお話もあるかも!」

 本とにらめっこしていたチェスターは、良い事を聞いたとばかりに笑顔になった。
 本を閉じ、入れて貰ったお茶をそっとふーふーしながら飲む。

「楽しいお話があるといいですね。とても難しいお顔でしたよ」
「そうなの?まじめによんでたよ」

 「こんな顔でしたよ」と、難しい顔の真似をして見せた女中さんに、思わず自分の眉間と口元を触り、元に戻れっとばかりにペタペタと叩きだした。

「うふふ。お茶を飲んだら、元に戻ってましたよ。大丈夫ですよ」
「うん。こわいかおはこわいから、なおってよかった!」

 女中さんに、にぱっと笑いかけ、ほっとしたように再びカップを手に取る。
 ふふふと思わず笑ってしまった女中さんと、様子を見ていたおっさん達。どちらもチェスターの満足そうな顔につられてほのぼのしていた。

「皆様、もうすぐ食事ですよ」
女中さんが厨房からの伝言を、思い出したように三人に伝える。
 
「それじゃあ、本は一度部屋に持っていこうか。坊ちゃんは本どうします?二冊とも読みますか?読まない方は本棚に戻してきますよ」

 スタンリーは、女中さんが持ってきてくれたお茶をゆっくり飲みながら訊ねた。モーリスはぐいっとお茶を飲み切り、さっさと本を持って部屋に向かう。
 チェスターはどちらも最初しか読んでいないし、本の分からなかった場所を聞きたかったので、どちらも部屋に持っていくと答え、お茶の残りを飲む。

「おっきい本ね、わからないところがあったから、あとでおしえて?」
「いいですよ。夕食の後にここが片付いたら、続きを読みましょうか。その時、に分からなかった所を教えてください」
「うん」

 二人は本を持って立ち上がり、女中さんにお茶のお礼と片づけを頼み合同部屋へ戻った。




Q お外に行けるのはいつになるの?
A 次回、行けたら嬉しいですね(汗
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