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カボチャグラタン
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「みんな出来たよー」
そう言って神崎さんはミトンをつけた手でカボチャが乗ったお皿を持ち、それを奏汰ら3人の方へ持っていく。
「はい、どうぞ。その名はスイートパンプキン」
そう言って神崎さんはるなちゃんたちの居る調理台にスイートパンプキンを置き、自分もるなちゃんの横に立つ。
「上手に出来たねー!」
「ありが......と......食べてみても......いい......?」
静華さんに顔を向けお礼を言った後、顔をスイートパンプキンの方へと向け、早速食べてもいいかをみんなに聞くるなちゃん。だんだんとお昼の時間が近づいてきているからか周りには栄養士さんら、病院食を作るのに携わってくれている人たちが集まってきているのも気にせず、るなちゃんはスイートパンプキンを見つめていた。
「食べていいよー、初料理召し上がれ」
そう言いながら神崎さんはるなちゃんにフォークを渡し、るなちゃんはスイートパンプキンへ手を伸ばす。
「......」
スイートパンプキンに届くと思ったその手はるなちゃんの意思によって止められた。
私だけ......食べてもいいのかな、先に......でも、手......伸ばしちゃったし......どうしよう──
「るなちゃん雪希子《ゆきこ》さん、私も食べていい!?」
「あっ......」
「ん? どうしたの」
るなちゃんの漏れた言葉に反応し、静華さんはるなちゃんを見つめながら何かを訴えるように優しく声をかけた。
「いや......何でも......」
私の思ってること......北条さんにバレてた......?
顔に出てたのかな......でもあれは完全に分かってる様子だった、顔に出るだけのちょっとした異変程度で分かるの......?
「一緒に食べ......よ......」
「ありがとー! ほら、奏汰くんも」
「いや僕は......」
奏汰は遠慮し車椅子を引こうとするが、後ろには静華さんが先回りしていた。
「一緒に......食べよ?」
「ほらほら、るなちゃんも言ってる事だし」
「分かったよ、食べさせてもらうね」
「......うん!」
話に一段落ついたところで完全に空気になっていた神崎さんがみんなにフォークを配り、いただきますの合図を出す。
「それじゃあ、いただきます」
「「「いただきます」」」
そう言った後、各自好きなスイートパンプキンを取って口に運んだ。
「うん......うん......」
食べたことないから分かんないかも......美味しい......のかなぁ? ......私は結構好きかも。
「るなちゃん、美味しいよ」
「あっ......ありがと......奏汰......」
奏汰が急に言い出し、驚きつつも少し照れる様子をみせたるなちゃん。傍から見ればそれは恋する乙女、人一倍可愛くなった女の子なのだ。
「うん! 美味しい!」
私にもさっきみたいな可愛い声と表情でお礼言われてみたいなー......いや、奏汰くんの特権か。
「ありが......とね......静華さん......」
あっ──めちゃくちゃ可愛いわ! 少し照れてるところも目線逸らして言ってるところも最高! ......ってあれ? 目の前にいるのって天使?
「何してるんですか?」
「なに......してる......の......?」
そう2人から同時に言われた静華さんは、るなちゃんに向かって手を合わせていた。
「静華さんの怪しい動きはさておき──」
「怪しくない!」
静華さんは神崎さんの話を遮り少し笑いながら否定した。
「美味しいよるなちゃん」
「えっあっ......北条......さん......あぁ......ありがと......神崎さん......」
戸惑いながらも神崎さんに感謝を伝えたるなちゃん。
「あっそうだ雪希子《ゆきこ》さん、今何時ぐらいか分かる? 時計付けてくるの忘れちゃってさ」
「今11時になったところだ」
「じゃあそろそろかな? 奏汰くんのお母さん」
あっそうだ、今日ママが来てくれるんだ、楽しくて普通に忘れてた。
「それじゃあ部屋に戻りますか?」
「そうだね、そうしよっか」
静華さんがそう言って車椅子を動かそうとしたその時、少し照れた様子のるなちゃんが声をかけた。
「奏汰......またね......」
「うん、また!」
そう奏汰は答え、2人は調理場を後にした。
「さっ、るなちゃん」
「......ん?」
「作ろっか、るなちゃんの言ってたカボチャグラタン」
......っ! 気を引き締めないと......
「うん......教えて......!」
るなちゃんがカボチャグラタンの作り方を神崎さんから教えてもらっている間、奏汰と静華さんは奏汰のお母さんと久しぶりに話していた。
そう言って神崎さんはミトンをつけた手でカボチャが乗ったお皿を持ち、それを奏汰ら3人の方へ持っていく。
「はい、どうぞ。その名はスイートパンプキン」
そう言って神崎さんはるなちゃんたちの居る調理台にスイートパンプキンを置き、自分もるなちゃんの横に立つ。
「上手に出来たねー!」
「ありが......と......食べてみても......いい......?」
静華さんに顔を向けお礼を言った後、顔をスイートパンプキンの方へと向け、早速食べてもいいかをみんなに聞くるなちゃん。だんだんとお昼の時間が近づいてきているからか周りには栄養士さんら、病院食を作るのに携わってくれている人たちが集まってきているのも気にせず、るなちゃんはスイートパンプキンを見つめていた。
「食べていいよー、初料理召し上がれ」
そう言いながら神崎さんはるなちゃんにフォークを渡し、るなちゃんはスイートパンプキンへ手を伸ばす。
「......」
スイートパンプキンに届くと思ったその手はるなちゃんの意思によって止められた。
私だけ......食べてもいいのかな、先に......でも、手......伸ばしちゃったし......どうしよう──
「るなちゃん雪希子《ゆきこ》さん、私も食べていい!?」
「あっ......」
「ん? どうしたの」
るなちゃんの漏れた言葉に反応し、静華さんはるなちゃんを見つめながら何かを訴えるように優しく声をかけた。
「いや......何でも......」
私の思ってること......北条さんにバレてた......?
顔に出てたのかな......でもあれは完全に分かってる様子だった、顔に出るだけのちょっとした異変程度で分かるの......?
「一緒に食べ......よ......」
「ありがとー! ほら、奏汰くんも」
「いや僕は......」
奏汰は遠慮し車椅子を引こうとするが、後ろには静華さんが先回りしていた。
「一緒に......食べよ?」
「ほらほら、るなちゃんも言ってる事だし」
「分かったよ、食べさせてもらうね」
「......うん!」
話に一段落ついたところで完全に空気になっていた神崎さんがみんなにフォークを配り、いただきますの合図を出す。
「それじゃあ、いただきます」
「「「いただきます」」」
そう言った後、各自好きなスイートパンプキンを取って口に運んだ。
「うん......うん......」
食べたことないから分かんないかも......美味しい......のかなぁ? ......私は結構好きかも。
「るなちゃん、美味しいよ」
「あっ......ありがと......奏汰......」
奏汰が急に言い出し、驚きつつも少し照れる様子をみせたるなちゃん。傍から見ればそれは恋する乙女、人一倍可愛くなった女の子なのだ。
「うん! 美味しい!」
私にもさっきみたいな可愛い声と表情でお礼言われてみたいなー......いや、奏汰くんの特権か。
「ありが......とね......静華さん......」
あっ──めちゃくちゃ可愛いわ! 少し照れてるところも目線逸らして言ってるところも最高! ......ってあれ? 目の前にいるのって天使?
「何してるんですか?」
「なに......してる......の......?」
そう2人から同時に言われた静華さんは、るなちゃんに向かって手を合わせていた。
「静華さんの怪しい動きはさておき──」
「怪しくない!」
静華さんは神崎さんの話を遮り少し笑いながら否定した。
「美味しいよるなちゃん」
「えっあっ......北条......さん......あぁ......ありがと......神崎さん......」
戸惑いながらも神崎さんに感謝を伝えたるなちゃん。
「あっそうだ雪希子《ゆきこ》さん、今何時ぐらいか分かる? 時計付けてくるの忘れちゃってさ」
「今11時になったところだ」
「じゃあそろそろかな? 奏汰くんのお母さん」
あっそうだ、今日ママが来てくれるんだ、楽しくて普通に忘れてた。
「それじゃあ部屋に戻りますか?」
「そうだね、そうしよっか」
静華さんがそう言って車椅子を動かそうとしたその時、少し照れた様子のるなちゃんが声をかけた。
「奏汰......またね......」
「うん、また!」
そう奏汰は答え、2人は調理場を後にした。
「さっ、るなちゃん」
「......ん?」
「作ろっか、るなちゃんの言ってたカボチャグラタン」
......っ! 気を引き締めないと......
「うん......教えて......!」
るなちゃんがカボチャグラタンの作り方を神崎さんから教えてもらっている間、奏汰と静華さんは奏汰のお母さんと久しぶりに話していた。
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