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 翌日、俺は軽い足取りでスクールへ向かった。
 決行されるのは今日からのはずだ。俺は上がってしまいそうになる口角をなんとか元の位置に戻した。

「ケインーーー!!」
 誰かが後ろから俺を呼んでいるのが聞こえた。振り返ると、ジョニーが手を振りながら笑顔で走り寄って来ていた。
「ジョ、ジョニーっ…」
 俺は一瞬動揺したが、待つのも尺だったのでジョニーに向かって手をあげたあとそのまま前に向き直り再び歩き出した。
「ケインーー!待ってくれよ一緒にいこうーー!」
 さすがに二回も呼ばれた俺は諦めて、ジョニーが着くのをひとまず待つことにした。
 やれやれと思いながら再度振り向くと、ジョニーの後ろ奥からトラックがこちらに向かってくるのが見えた。
 ちょっと待て、あのトラックの動きおかしいぞ。明らかにジョニーを狙ってまっすぐ突っ込んできないか。……は!まさか、俺の依頼によるものなのか?あのトラックは。
 そんな異変に気付くこともなくやつは爽やかな笑顔で俺の方へ走ってくる。ということはおのずとトラックも俺に突っ込んでくる。これは非常にまずい。
 俺はなんとかしてジョニーと自分を遠ざけようとした。
「ジョ、ジョニー…!!おまえこっちに来るな!!」
「えー!?なんてーー!?ケイン声が小さくて聞こえないよーー!」
 ジョニーは後ろから来ているトラックに全くといいほど気付いていない。
「来るなってーーーー!!!」
 俺はすかさず近くのアパートの階段に駆け上がった。
 ジョニーも俺を追いかけて階段を上ってきた。
 階段上から道路を見下ろすとトラックはギリギリのところでUターンして去って行った。
「はあはあ…。ケイン!いったいどうしたんだい?」
 俺はとっさに誤魔化した。
「い、いや…その…。蜂がいたから逃げたんだ」
「え?まさか、僕を蜂から守るために…?」
「いやその…」
「君は…なんていいやつなんだっ!!!」

 俺は思い出した。依頼書の「巻き込みOK」の欄にチェックを入れてしまったことを。
 それは、依頼主である俺も巻き込まれる可能性があるということだ。

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