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74,祝福
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その日マリアナの家でイルマ、アーサー、アラガン、ノイマン、エマの五人は人生最大の緊張を強いられていた。マリアナがファインアースの主神ルナテラスを呼んだのである。
「アラガンさん、その鎖を見せていただいても良いですか?」
「………………」
「アラガンさん?」
「は、はいっ、こ、これです」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。皆さんのおかげで私もずいぶん楽になりました」
「やはり世界樹と冥界の件はルナテラスの力を落としておったか」
「マリアナ、バーバリアン王国が穢れていたことも関係がありますね」
「ふむ。なら浄化を急がねばならんか」
「世界樹の雫を手に入れたとのお話ですから、それほど時間はかからないでしょう」
「ルナテラス様、お母さま紅茶をお持ちしました」
「おお、ルーナすまんな。最近ルーナが入れてくれる紅茶が絶品なのだ」
「あら、ルーナさんありがとうございます。いい香りですね」
「はい。故郷のオースティンで作っている茶葉をお母さまの好みにブレンドしました。私はマリアナスペシャルと名付けている紅茶です」
「マリアナが羨ましいわね。ルーナさん。今度はルナテラススペシャルを作って頂けるかしら」
「お任せください。ルナテラス様の好みを教えてくださいね」
その光景をイルマと脳筋組は信じられない面持ちで見ていた。いつの間にかルーナが図太くなっていたのだ。しばらくシアも交えて四人で談笑する光景を眺めていたが、やがて時間が来たのかルナテラスは帰って行った。
「ふむ。やはり神界の素材であったな。だが、既にこのファインアースに持ち込まれている以上、素材を使用することには問題ないと言っておったな」
「この星で穢れているところを見つけたら浄化して欲しいと言っていたね」
「このファインアースはルナテラス自身のようなものなのだ。自分の体が汚れていれば不快であるし、傷つけられれば痛みを伴う。シアよ、協力してやってくれんか」
「わかったよ。どうすればいいかな……?」
「無理に何かをすることはない。ただ神界の素材を持ち込む者が相手だ。十分に用心をするようにな」
その後、シア達はマリアナの背に乗って転移門のある小島に降り立つと、そこから転移門を利用して港町フィーネへ帰って行った。その日の夜はそのまま港町フィーネの宿屋に宿泊することとなり、緊張から解放されたイルマと脳筋組は早々に夢の世界へ旅立ってしまった。
だが、特に緊張もせずに過ごしたシアはなかなか眠れなかった。そこで少し潮風にでもあたろうと小太郎と散歩してみることにしたのであった。宿を出てすぐそばの海辺に向かう。夜空に満月が浮かび、海が月明りをうねらせる。磯の香りが鼻腔を満たし、潮風が肌に絡みつく。規則正しい波音が星の鼓動のようにも思えた。
「シア君もここにきたんだ?」
「ルーナも眠れないの?」
「うん。エマとイルマ先生が部屋に到着した瞬間に倒れるように寝ちゃって……」
「俺もそうだね。起きていたのは小太郎だけだった」
「小太郎は起きていたんだよ~ ねえシア、あの丘に誰かいるよ~」
「シア君、あれは幸せの鐘がある丘ね」
「うん。行ってみようか」
二人はいつものように手をつなぎ、寄り添うように歩く小太郎と一緒に「港が見える丘」に行ってみた。海辺では絡みつくように思えた潮風も丘の上では重さを消して頬を心地よく撫でる。うねっていた海の月も丸みを帯び、波音は遥か彼方に消えてゆく。天から降り注ぐ優しい月明りを一身に受けて鐘の前に少女がひとり佇んでいた。
半透明の白一色のドレスに身を包んだ少女はシア達を見つけると嬉しそうに柔らかく手招きをした。あと数歩で手が届く距離まで来た時、その少女は月明りを背景にゆったりとした動きで踊りはじめた。空中を舞うかのような優美な動き。白いドレスの裾を煌めかせる満月の輝き。遥か彼方に微かに響く波の音はシアとルーナを眠りに誘うかのように魅了していた。
どれほどの時間が過ぎただろう。シアとルーナは至福のひと時を互いに寄り添いながら過ごしていた。ルーナの体を優しく包み込むシアの長く太い腕。逞しく発達したシアの胸に寄りかかるようにルーナは頭を預け、シアの鼓動と波の音が奏でる不思議な旋律を聞き続けていた。腕の中に収まる折れそうな細い腰。体に伝わる柔らかな温もり。ほのかに漂うルーナの香りがシアの心を溶かしていく。シアはルーナに頬擦りをするようにゆっくりと吐息を下にずらしていった。ルーナが応えるように体を預けて寄りかかると二人の鼓動は暫くの間ひとつに混ざり合ったのである。
シアとルーナが息を離して目線を少女に向けた時、その少女は微笑みながら二人の周りを舞い踊ると高らかに鐘を鳴らした。消えゆく少女は聞こえない声で「あなたたちに天使の祝福を……」と確かに言うと月明りを浴びる鐘と一つになった。
「あの少女は……天使なのかな?」
「わからないけど、祝福してくれたね」
「祝福のブローチを受け取る時に花嫁さんが言ったの。『祝福を受け継いでください』って。私が感じているこの幸せを、この先この星に生まれてくる人達に受け継がせてあげたいの。だからルーナはシアの妻として戦う。そうすることが後世の人々に祝福を受け継がせることになると信じているから」
「……ルーナ」
「小太郎も戦うのだ~ エマには黙っておくね~」
小太郎の一言に笑いあいながら二人は宿屋へ戻っていった。
シア達はまた静かな学園生活に戻っていった。砂漠の流れ者たちに世界樹の雫を預けてバーバリアン王国の水源地を浄化してもらうことにする。ノイマンとアラガンは神界の素材を分析して加工方法を研究し、アーサーとエマは南部の街メタリンでさらに修行を重ねてその剣と槍の腕を磨き続けた。シアとルーナ、小太郎は何度もマリアナとルナテラスに合い、今度どうするのかを相談していた。そうこうするうちにやがて時は過ぎる。シア達が学園生活に終止符を打つ時がやって来たのであった。
最初に学園の入学式で使用した式場。木造の暖かい作りの建物はシア達に対する大人たちの暖かさを現しているように感じられた。右も左もわからないシアに付き添ってくれたコールマン伯爵とクレイン、ルーナとエマの保護者としてシアに出逢ったヨハネス子爵とバーデン男爵。さらにアラガンの父イワノフ、ノイマンの父で数学者のフェルマー、入学式に参加出来なかったアレクサンドロス王までもが卒業式には駆けつけていたのであった。さらに、シアの卒業式にはファインアースの守護龍マリアナも自由の指輪を身につけて参列することが出来たのだ。
壇上のイルマが嗚咽を堪えながら祝辞を述べる。そして最優秀生徒の名前を呼んだ。
「ノイマン・シュタイン、シア・ペルサス、アーサー・フライブルク、ルーナ・オースティン、アラガン・ドワイト、エマ・ランドリーの六名全員を、このフリージア学園校長イルマ・スプリングスの名において主席であると認定いたします」
イルマが前代未聞の発表をすると、場内が一瞬静まり返り、すぐに騒然としだした。そこにイルマが続けて話をする。
「この六名は既に世界的な実績を挙げております。まだ年若く学園の生徒でありながら、私たちは彼らの献身的な貢献のもとに平和を謳歌することが出来ています。彼らに優劣をつける必要はありません。彼ら全てが人類にとっては英雄なのですから。彼ら若き英雄たちに盛大な祝福を。そしてこのファインアースの未来に祝福を」
イルマがそう告げると、卒業生たちは一斉に制服の上着を宙に放り投げた。
盛大な拍手が彼らを包み込む。
成長した我が子たちを頼もしく眺めながら、誰もが英雄たちの門出を祝った。
「アラガンさん、その鎖を見せていただいても良いですか?」
「………………」
「アラガンさん?」
「は、はいっ、こ、これです」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。皆さんのおかげで私もずいぶん楽になりました」
「やはり世界樹と冥界の件はルナテラスの力を落としておったか」
「マリアナ、バーバリアン王国が穢れていたことも関係がありますね」
「ふむ。なら浄化を急がねばならんか」
「世界樹の雫を手に入れたとのお話ですから、それほど時間はかからないでしょう」
「ルナテラス様、お母さま紅茶をお持ちしました」
「おお、ルーナすまんな。最近ルーナが入れてくれる紅茶が絶品なのだ」
「あら、ルーナさんありがとうございます。いい香りですね」
「はい。故郷のオースティンで作っている茶葉をお母さまの好みにブレンドしました。私はマリアナスペシャルと名付けている紅茶です」
「マリアナが羨ましいわね。ルーナさん。今度はルナテラススペシャルを作って頂けるかしら」
「お任せください。ルナテラス様の好みを教えてくださいね」
その光景をイルマと脳筋組は信じられない面持ちで見ていた。いつの間にかルーナが図太くなっていたのだ。しばらくシアも交えて四人で談笑する光景を眺めていたが、やがて時間が来たのかルナテラスは帰って行った。
「ふむ。やはり神界の素材であったな。だが、既にこのファインアースに持ち込まれている以上、素材を使用することには問題ないと言っておったな」
「この星で穢れているところを見つけたら浄化して欲しいと言っていたね」
「このファインアースはルナテラス自身のようなものなのだ。自分の体が汚れていれば不快であるし、傷つけられれば痛みを伴う。シアよ、協力してやってくれんか」
「わかったよ。どうすればいいかな……?」
「無理に何かをすることはない。ただ神界の素材を持ち込む者が相手だ。十分に用心をするようにな」
その後、シア達はマリアナの背に乗って転移門のある小島に降り立つと、そこから転移門を利用して港町フィーネへ帰って行った。その日の夜はそのまま港町フィーネの宿屋に宿泊することとなり、緊張から解放されたイルマと脳筋組は早々に夢の世界へ旅立ってしまった。
だが、特に緊張もせずに過ごしたシアはなかなか眠れなかった。そこで少し潮風にでもあたろうと小太郎と散歩してみることにしたのであった。宿を出てすぐそばの海辺に向かう。夜空に満月が浮かび、海が月明りをうねらせる。磯の香りが鼻腔を満たし、潮風が肌に絡みつく。規則正しい波音が星の鼓動のようにも思えた。
「シア君もここにきたんだ?」
「ルーナも眠れないの?」
「うん。エマとイルマ先生が部屋に到着した瞬間に倒れるように寝ちゃって……」
「俺もそうだね。起きていたのは小太郎だけだった」
「小太郎は起きていたんだよ~ ねえシア、あの丘に誰かいるよ~」
「シア君、あれは幸せの鐘がある丘ね」
「うん。行ってみようか」
二人はいつものように手をつなぎ、寄り添うように歩く小太郎と一緒に「港が見える丘」に行ってみた。海辺では絡みつくように思えた潮風も丘の上では重さを消して頬を心地よく撫でる。うねっていた海の月も丸みを帯び、波音は遥か彼方に消えてゆく。天から降り注ぐ優しい月明りを一身に受けて鐘の前に少女がひとり佇んでいた。
半透明の白一色のドレスに身を包んだ少女はシア達を見つけると嬉しそうに柔らかく手招きをした。あと数歩で手が届く距離まで来た時、その少女は月明りを背景にゆったりとした動きで踊りはじめた。空中を舞うかのような優美な動き。白いドレスの裾を煌めかせる満月の輝き。遥か彼方に微かに響く波の音はシアとルーナを眠りに誘うかのように魅了していた。
どれほどの時間が過ぎただろう。シアとルーナは至福のひと時を互いに寄り添いながら過ごしていた。ルーナの体を優しく包み込むシアの長く太い腕。逞しく発達したシアの胸に寄りかかるようにルーナは頭を預け、シアの鼓動と波の音が奏でる不思議な旋律を聞き続けていた。腕の中に収まる折れそうな細い腰。体に伝わる柔らかな温もり。ほのかに漂うルーナの香りがシアの心を溶かしていく。シアはルーナに頬擦りをするようにゆっくりと吐息を下にずらしていった。ルーナが応えるように体を預けて寄りかかると二人の鼓動は暫くの間ひとつに混ざり合ったのである。
シアとルーナが息を離して目線を少女に向けた時、その少女は微笑みながら二人の周りを舞い踊ると高らかに鐘を鳴らした。消えゆく少女は聞こえない声で「あなたたちに天使の祝福を……」と確かに言うと月明りを浴びる鐘と一つになった。
「あの少女は……天使なのかな?」
「わからないけど、祝福してくれたね」
「祝福のブローチを受け取る時に花嫁さんが言ったの。『祝福を受け継いでください』って。私が感じているこの幸せを、この先この星に生まれてくる人達に受け継がせてあげたいの。だからルーナはシアの妻として戦う。そうすることが後世の人々に祝福を受け継がせることになると信じているから」
「……ルーナ」
「小太郎も戦うのだ~ エマには黙っておくね~」
小太郎の一言に笑いあいながら二人は宿屋へ戻っていった。
シア達はまた静かな学園生活に戻っていった。砂漠の流れ者たちに世界樹の雫を預けてバーバリアン王国の水源地を浄化してもらうことにする。ノイマンとアラガンは神界の素材を分析して加工方法を研究し、アーサーとエマは南部の街メタリンでさらに修行を重ねてその剣と槍の腕を磨き続けた。シアとルーナ、小太郎は何度もマリアナとルナテラスに合い、今度どうするのかを相談していた。そうこうするうちにやがて時は過ぎる。シア達が学園生活に終止符を打つ時がやって来たのであった。
最初に学園の入学式で使用した式場。木造の暖かい作りの建物はシア達に対する大人たちの暖かさを現しているように感じられた。右も左もわからないシアに付き添ってくれたコールマン伯爵とクレイン、ルーナとエマの保護者としてシアに出逢ったヨハネス子爵とバーデン男爵。さらにアラガンの父イワノフ、ノイマンの父で数学者のフェルマー、入学式に参加出来なかったアレクサンドロス王までもが卒業式には駆けつけていたのであった。さらに、シアの卒業式にはファインアースの守護龍マリアナも自由の指輪を身につけて参列することが出来たのだ。
壇上のイルマが嗚咽を堪えながら祝辞を述べる。そして最優秀生徒の名前を呼んだ。
「ノイマン・シュタイン、シア・ペルサス、アーサー・フライブルク、ルーナ・オースティン、アラガン・ドワイト、エマ・ランドリーの六名全員を、このフリージア学園校長イルマ・スプリングスの名において主席であると認定いたします」
イルマが前代未聞の発表をすると、場内が一瞬静まり返り、すぐに騒然としだした。そこにイルマが続けて話をする。
「この六名は既に世界的な実績を挙げております。まだ年若く学園の生徒でありながら、私たちは彼らの献身的な貢献のもとに平和を謳歌することが出来ています。彼らに優劣をつける必要はありません。彼ら全てが人類にとっては英雄なのですから。彼ら若き英雄たちに盛大な祝福を。そしてこのファインアースの未来に祝福を」
イルマがそう告げると、卒業生たちは一斉に制服の上着を宙に放り投げた。
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