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5,血縁
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その後、ギルドの職員に回復魔法をかけられたクレインはばつが悪そうにしていたが、シア達を最上階のグランドマスタールームに通した。
聞けば、カールとクレインは学生時代からの親友同士で、剣技に優れた「閃光のカール」と、徒手空拳に優れた「豪腕のクレイン」として、一緒にパーティーを組んでいた仲間だったそうだ。だが、三〇年前に殺されそうになるとカールは人間不信に陥り、パーティーを抜けてどこかに消え去ったのだという。
「お父さんは何故殺されそうになったのでしょうか?」
「……。ペルサスだからな。ロシアン帝国の刺客に狙われたのだ」
クレインは拳を握りしめながら、そう言った。
「……ペルサス?」
「カールのフルネームは知っているか?」
「えーと、カール……」
「カール・ガイウス・ペルサス、奴はペルサス王の弟だった」
「王様の弟?」
「そうだ、カールは兄が王太子になると、王権争いに巻き込まれるのを嫌がってこの大陸に留学に来たのだ。その学校に俺もいたのでな。それで知り合った」
シアがクレインのその話に驚いていると、コールマン伯爵が口をはさんだ。
「先ほど、シア君がカールさんに似ているようなことを言っておられましたが……」
「あぁ、そっくりそのまま若い時のカールだよ。心底驚いた」
「……その黒い髪、カールさんに似た顔立ちは……」
「伯爵の思っている通り、シアはおそらくペルサス王族の血を引いているな。それもかなり濃いはずだ」
シアは少々混乱しながらどういうことなのかと聞くと、
「これはカールの手紙に書いてあった。シアの母親はおそらくペルサス王国の王族だろうと。もしそうならカールにとってシアは甥かもしれないし、そうでなくても何らかの形で血のつながりがあるだろう」
それを聞いたシアは涙を浮かべていた。
「そうか、父さんと血がつながっているかもしれないんだ……」
そのシアをコールマン伯爵とクレインは複雑な表情で眺めながら、同時に同じことを口にした。
「……暗殺?」
「ああ、暗殺だ。ロシアン帝国はペルサス王国の、いやペルサス王家の血筋を心底恐れている」
「……血筋?」
「そう血筋だ。ペルサス王国の王族は圧倒的な武力を持つと言われている。なぁシア。お前人よりも強くないか?」
そう言われてシアは困ってしまった。これまで一緒にいたのは古代龍のマリアナとフェンリルの小太郎だけだったのだ。だが、コールマン伯爵が言う。
「シア君、君はワイバーン三頭を瞬殺したよね。ワイバーンは本来国を守る騎士団と、魔導士団が協力して、ようやく一頭倒せるかどうかなんだよ」
「ああ、伯爵の言う通りだ。ワイバーンを単独で瞬殺出来る冒険者なら文句なしのS級だな」
「S級……?」
「冒険者には強さや貢献度によってランクがあるのだ」
そう言うと、クレインは冒険者のランクを説明してくれた。冒険者は強さやギルドへの貢献度でランクが設定されていて、一番下がFランクとなり、そこから、E,D、C、B、A、Sの順番に上がっていくのだそうだ。そして、S級の中でも特に強さが飛びぬけている者はSS級となり、SSS級は歴史的な功績を残したものがもらえるらしい。
「今SSS級なのは、俺とカール……はいないな。あとはハイエルフのお婆だけだな。SS級も一人もいないな。S級で10人くらいかな」
「そうですね。S級冒険者になると一人で国一つを滅ぼせますからね」
「え、国を滅ぼす???」
「それぐらいA級とS級は隔絶しているのだ。そのS級以上の強さを持っていることが異常なことはわかってくれるか」
「でも、ワイバーンぐらいで……」
「ぐらいって、お前な……」
「でも亜空間収納に数百体のワイバーンがいますよ」
それを聞いたクレインとコールマン伯爵は絶句した。
「……数百体のワイバーン?」
「……亜空間収納?」
「シア、いいかよく聞け。亜空間収納を使えるのはさっき言ったSSS級のお婆だけだ」
「でも、父さんも使っていましたよ」
「……」
「母さんが一緒に暮らし出してから古代龍の秘儀を父さんに教えたそうです」
そこまで聞いてクレインはカールの頼みを話し出した。
「カールの頼みはまずシアに全財産を継がせること。それから俺に後見人になってくれといってきた。あとな、学校に通って友人を作らせてやって欲しいとも言ってきた」
「……父さんがそんなことを」
「カールは本当にシアを息子の様に思っていたのだ。手紙を見ればわかる。カールの全財産は五兆エニを下らない。それだけでもう何もしなくても一生遊んで暮らせるぞ」
「五兆エニってどれくらいですか?」
「……見当もつかないな。そうだな、大体パン一個が百エニくらいだな。宿屋が一泊素泊りで五千エニぐらいか。飯付きなら大体一万エニから二万エニくらいだな。あとは一般的な定食屋だと一食あたり千エニくらいかな……」
コールマン伯爵がクレインに聞いた。
「なぜそんなに資産があるのですか?」
「ほとんどがペルサス復興のために奴の兄、ペルサス王が与えた資金だな」
「ペルサス復興のために?」
「あぁ、ロシアン帝国との戦況が悪くなると、奴の兄は世界中にペルサス市民を逃がしてからロシアン帝国に財宝が渡らないようにしたのだ。いつかロシアン帝国を打倒したときに国を作るための資金として弟に金を預けたのだ。その金をシアに継がせて欲しいと言ってきた」
「……俺に?」
「あぁ、手を出してみろ」
そうクレインに言われてシアが手を出すと、クレインが一つの腕輪を奥の金庫から大事そうに持ってきた。その腕輪をシアの腕にはめると吸い付くようにはまった。
「その腕輪を触って金を出してみろ」
そう言われて触ってみると何やら頭の中に数字が浮かんでくる。とりあえず百エニ出そうと考えると銅貨一枚が手の上に現れた。
「それでいい。その腕輪はハイエルフのお婆特製の腕輪だ。お前にしか使えん」
「次は後見人だな。これは問題ない。俺がなってやるよ」
「私も裏書しましょう」
「コールマン伯爵が?」
「はい。私の父がカール様に何度も命を助けてもらったそうです。子供の頃から何度も聞いていました。息子さんの後見人となることで少しは恩返ししたいのです」
「……なら、あとは学校だな」
「学校……?」
「王都の学校は貴族も平民も関係ないのだ、俺とカールも通っていたのだよ。来週入試があるはずだ。詳しいことは後から話してやるよ」
「では、まずは王宮で身分証明書を作りましょうか」
「あぁ、だがその前に付き合ってくれ」
クレインはそう言うと、シアを地下の訓練場に連れて行った。
聞けば、カールとクレインは学生時代からの親友同士で、剣技に優れた「閃光のカール」と、徒手空拳に優れた「豪腕のクレイン」として、一緒にパーティーを組んでいた仲間だったそうだ。だが、三〇年前に殺されそうになるとカールは人間不信に陥り、パーティーを抜けてどこかに消え去ったのだという。
「お父さんは何故殺されそうになったのでしょうか?」
「……。ペルサスだからな。ロシアン帝国の刺客に狙われたのだ」
クレインは拳を握りしめながら、そう言った。
「……ペルサス?」
「カールのフルネームは知っているか?」
「えーと、カール……」
「カール・ガイウス・ペルサス、奴はペルサス王の弟だった」
「王様の弟?」
「そうだ、カールは兄が王太子になると、王権争いに巻き込まれるのを嫌がってこの大陸に留学に来たのだ。その学校に俺もいたのでな。それで知り合った」
シアがクレインのその話に驚いていると、コールマン伯爵が口をはさんだ。
「先ほど、シア君がカールさんに似ているようなことを言っておられましたが……」
「あぁ、そっくりそのまま若い時のカールだよ。心底驚いた」
「……その黒い髪、カールさんに似た顔立ちは……」
「伯爵の思っている通り、シアはおそらくペルサス王族の血を引いているな。それもかなり濃いはずだ」
シアは少々混乱しながらどういうことなのかと聞くと、
「これはカールの手紙に書いてあった。シアの母親はおそらくペルサス王国の王族だろうと。もしそうならカールにとってシアは甥かもしれないし、そうでなくても何らかの形で血のつながりがあるだろう」
それを聞いたシアは涙を浮かべていた。
「そうか、父さんと血がつながっているかもしれないんだ……」
そのシアをコールマン伯爵とクレインは複雑な表情で眺めながら、同時に同じことを口にした。
「……暗殺?」
「ああ、暗殺だ。ロシアン帝国はペルサス王国の、いやペルサス王家の血筋を心底恐れている」
「……血筋?」
「そう血筋だ。ペルサス王国の王族は圧倒的な武力を持つと言われている。なぁシア。お前人よりも強くないか?」
そう言われてシアは困ってしまった。これまで一緒にいたのは古代龍のマリアナとフェンリルの小太郎だけだったのだ。だが、コールマン伯爵が言う。
「シア君、君はワイバーン三頭を瞬殺したよね。ワイバーンは本来国を守る騎士団と、魔導士団が協力して、ようやく一頭倒せるかどうかなんだよ」
「ああ、伯爵の言う通りだ。ワイバーンを単独で瞬殺出来る冒険者なら文句なしのS級だな」
「S級……?」
「冒険者には強さや貢献度によってランクがあるのだ」
そう言うと、クレインは冒険者のランクを説明してくれた。冒険者は強さやギルドへの貢献度でランクが設定されていて、一番下がFランクとなり、そこから、E,D、C、B、A、Sの順番に上がっていくのだそうだ。そして、S級の中でも特に強さが飛びぬけている者はSS級となり、SSS級は歴史的な功績を残したものがもらえるらしい。
「今SSS級なのは、俺とカール……はいないな。あとはハイエルフのお婆だけだな。SS級も一人もいないな。S級で10人くらいかな」
「そうですね。S級冒険者になると一人で国一つを滅ぼせますからね」
「え、国を滅ぼす???」
「それぐらいA級とS級は隔絶しているのだ。そのS級以上の強さを持っていることが異常なことはわかってくれるか」
「でも、ワイバーンぐらいで……」
「ぐらいって、お前な……」
「でも亜空間収納に数百体のワイバーンがいますよ」
それを聞いたクレインとコールマン伯爵は絶句した。
「……数百体のワイバーン?」
「……亜空間収納?」
「シア、いいかよく聞け。亜空間収納を使えるのはさっき言ったSSS級のお婆だけだ」
「でも、父さんも使っていましたよ」
「……」
「母さんが一緒に暮らし出してから古代龍の秘儀を父さんに教えたそうです」
そこまで聞いてクレインはカールの頼みを話し出した。
「カールの頼みはまずシアに全財産を継がせること。それから俺に後見人になってくれといってきた。あとな、学校に通って友人を作らせてやって欲しいとも言ってきた」
「……父さんがそんなことを」
「カールは本当にシアを息子の様に思っていたのだ。手紙を見ればわかる。カールの全財産は五兆エニを下らない。それだけでもう何もしなくても一生遊んで暮らせるぞ」
「五兆エニってどれくらいですか?」
「……見当もつかないな。そうだな、大体パン一個が百エニくらいだな。宿屋が一泊素泊りで五千エニぐらいか。飯付きなら大体一万エニから二万エニくらいだな。あとは一般的な定食屋だと一食あたり千エニくらいかな……」
コールマン伯爵がクレインに聞いた。
「なぜそんなに資産があるのですか?」
「ほとんどがペルサス復興のために奴の兄、ペルサス王が与えた資金だな」
「ペルサス復興のために?」
「あぁ、ロシアン帝国との戦況が悪くなると、奴の兄は世界中にペルサス市民を逃がしてからロシアン帝国に財宝が渡らないようにしたのだ。いつかロシアン帝国を打倒したときに国を作るための資金として弟に金を預けたのだ。その金をシアに継がせて欲しいと言ってきた」
「……俺に?」
「あぁ、手を出してみろ」
そうクレインに言われてシアが手を出すと、クレインが一つの腕輪を奥の金庫から大事そうに持ってきた。その腕輪をシアの腕にはめると吸い付くようにはまった。
「その腕輪を触って金を出してみろ」
そう言われて触ってみると何やら頭の中に数字が浮かんでくる。とりあえず百エニ出そうと考えると銅貨一枚が手の上に現れた。
「それでいい。その腕輪はハイエルフのお婆特製の腕輪だ。お前にしか使えん」
「次は後見人だな。これは問題ない。俺がなってやるよ」
「私も裏書しましょう」
「コールマン伯爵が?」
「はい。私の父がカール様に何度も命を助けてもらったそうです。子供の頃から何度も聞いていました。息子さんの後見人となることで少しは恩返ししたいのです」
「……なら、あとは学校だな」
「学校……?」
「王都の学校は貴族も平民も関係ないのだ、俺とカールも通っていたのだよ。来週入試があるはずだ。詳しいことは後から話してやるよ」
「では、まずは王宮で身分証明書を作りましょうか」
「あぁ、だがその前に付き合ってくれ」
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