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3,父の名
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はじめて海の上を飛ぶシアと小太郎はマリアナと別れた寂しさを癒すかのようにはしゃいでいた。小太郎が海の上すれすれを走るように飛びぬける。水面を跳ねる魚をシアが掴むと次々と亜空間収納に入れていく。シアが使う亜空間収納は古代龍マリアナ直伝で、その容量は大陸が軽く入るほど大きく、中では時間も進まない。生物だけは入れられなかったが、シアは捕まえた魚を一瞬で締めてから、どんどん放り込んでいった。そのため新鮮な魚が大量に蓄積されていった。
「ねぇ、小太郎。そろそろ陸が見えてきたね」
「そうだね~、あそこに降りようか~、人もいっぱいいるからね~」
「そうだね。沢山の人がいるね」
シアと小太郎は吞気にそんな会話をしていたが、海辺では臨戦態勢がとられていた。
最古にして最強の存在である古代龍の強大な気配を察知し、港町フィーネの警備隊が最大の警戒態勢を敷いていたの である。古代龍の巨大な気配が沖の島に降り立ったことを確認してから決死の覚悟で緊張を高めていた兵士たちは、やがて古代龍の気配が立ち去ったことにより安堵していた。
だが、続いてその島から飛び出したのは神狼フェンリルであった。決して人になつくことは無く、気高い神の使いの体高は五メートルに達する。自在に空を駆け抜け、その爪の一振りで龍を両断し、その強靭な顎で大岩を砕き、その足を踏み込めば大地に亀裂を走らせる。人類にとっては古代龍と並ぶ最大の災害であった。
目の前に迫りくるフェンリル。
その気高き白銀の毛並みが発する強大な圧力は、決死の覚悟で国を守ろうとする誇り高き兵士の足を地面に縫い付け、一歩も動かさないばかりか言葉を発することすらさせなかった。
やがてその瞬間は訪れる。
兵士たちの眼前にフェンリルがその威容をさらしたのだ。
シアが小太郎から飛び降りる。
目の前にいる人々は硬直したように動かない。
(えーと、人にあったら元気よく名前を言って挨拶しろって父さんが言っていたな)
「えーと、初めまして。シアといいます。お父さんの友人でクレインという冒険者の人に会いに来ました。それと隣にいるのが俺の家族で小太郎です。よろしくお願いします」
そうシアが言うと、小太郎も手を軽く上げて挨拶をした。
その様子に呆気にとられていた兵士たちであったが一人の兵士が震えながら前に出てシアに話しかけた。
「わ、私はこの港町フィーネの防衛隊長をしているピーターだ。そ、そのフェンリルは安全なのか?」
(小太郎が安全かって? 大きいから怖いのかな)
「えーと、小太郎、みんな大きいのが怖いみたいだから小さくなってもらっていい?」
「うん。わかったよ~」
そう小太郎が返事をすると、小太郎は一気に体高1メートル位に体を小さくした。
その様子を見て少し気を取り直したのか、兵士たちの緊張感が弱まった。
「そ、その君は人を探しているのだよね?」
「はい。お父さんの友人で冒険者のクレインさんを探しています」
「冒険者のクレイン……、クレインという名前は結構あるからな。どのクレインだろう……」
ピーターが考えていると、シアがカールのタグを見せた。
すると、ピーターの顔色がみるみるうちに蒼白になっていく。
「き、君はどこでこのタグを……?」
「それは父さんのタグだって、母さんが言っていました」
ピーターが後方に伝令を走らせると、すぐに、最後方の騎馬部隊が近づいてきた。白馬で統一され、白一色の鎧に身を固めた一団が兵士たちの前に出ると、一人の偉丈夫が下馬して歩いてきた。
その偉丈夫はピーターの持つタグを読み上げた。
「SSS級冒険者、カール・ガイウス・ペルサス」
それを聞いた兵士たちは一斉にどよめきをあげ、偉丈夫はシアの前に来ると尋ねた。
「君は、カール・ガイウス・ペルサスの息子……なんだね?」
「はい。父さんはカールっていいます。母さんはマリアナです」
やがて、少し目を瞑ると、
「私の知る限りだと、SSS級冒険者のカール・ガイウス・ペルサスはかなり高齢だったはずだが……」
「はい。父さんは2年前に亡くなりました……。そして遺言でこの大陸に行ってクレインという冒険者に会えと言っていました」
そう言うと、シアはクレインから来た手紙を見せた。すると、
「ふう。君の行き先がわかったよ。私はこの港町フィーネの領主をしているコールマン伯爵だ。さて、君たちは今から私の大切なお客様になる。ついてきてくれるかな?」
そのままシアと小太郎は、用意された馬車に乗り込むと、白馬の一団に先導されてコールマン伯爵の屋敷へと入っていった。
コールマン伯爵の屋敷は白亜の御殿という言葉がしっくりくる大きさであった。馬車3台が楽に通れる広さの門をくぐり抜けて石畳の上を進むと、その両脇にはよく手入れされた緑の絨毯が広がり、色とりどりの花が咲き誇っていた。車窓から眺めるその光景は白亜の屋敷と相まって、シアと小太郎を包み込み、一枚の絵の中にいるかのような錯覚すら覚えさせたほどであった。
馬車が車寄せにつくと使用人達が集まり伯爵に挨拶をした。
シアと小太郎が下りると、執事らしき人が近づき、恭しい仕草でシアと小太郎を案内してくれた。シアが礼を言うと一礼してから、
「お食事の時間になったらお呼びいたします」
と告げて、立ち去って行った。
シアと小太郎が案内されたのは実に大きな部屋であった。天蓋つきのベッドだけでも8つはあり、室内には風呂も設けられていた。シアと小太郎がその大きな部屋に据え付けられた数々の絵画や美術品を興味深く観察し部屋中を探検していると、先程の執事が食堂に案内をしてくれた。
食堂につくと、コールマン伯爵の向かい側に座るように案内された。小太郎のために新たに作ったであろう食事台まで用意されていた。
コールマン伯爵は隣の美しい女性を妻のシンディだと紹介し、その横で小太郎を興味深く見ている女の子を娘のメリーだと紹介してくれた。
シアと小太郎はそれまでに食べたことがない様々な料理を美味しく食べ進んでいた。美しく色とりどりの野菜に果物、柔らかく溶けるような肉、食後の甘いお菓子には歓声を上げそうになった。
食事を終えたシアと小太郎にコールマン伯爵は、
「では、シア君。色々と教えてもらってもいいかな?」
と質問を始めたのであった。
「ねぇ、小太郎。そろそろ陸が見えてきたね」
「そうだね~、あそこに降りようか~、人もいっぱいいるからね~」
「そうだね。沢山の人がいるね」
シアと小太郎は吞気にそんな会話をしていたが、海辺では臨戦態勢がとられていた。
最古にして最強の存在である古代龍の強大な気配を察知し、港町フィーネの警備隊が最大の警戒態勢を敷いていたの である。古代龍の巨大な気配が沖の島に降り立ったことを確認してから決死の覚悟で緊張を高めていた兵士たちは、やがて古代龍の気配が立ち去ったことにより安堵していた。
だが、続いてその島から飛び出したのは神狼フェンリルであった。決して人になつくことは無く、気高い神の使いの体高は五メートルに達する。自在に空を駆け抜け、その爪の一振りで龍を両断し、その強靭な顎で大岩を砕き、その足を踏み込めば大地に亀裂を走らせる。人類にとっては古代龍と並ぶ最大の災害であった。
目の前に迫りくるフェンリル。
その気高き白銀の毛並みが発する強大な圧力は、決死の覚悟で国を守ろうとする誇り高き兵士の足を地面に縫い付け、一歩も動かさないばかりか言葉を発することすらさせなかった。
やがてその瞬間は訪れる。
兵士たちの眼前にフェンリルがその威容をさらしたのだ。
シアが小太郎から飛び降りる。
目の前にいる人々は硬直したように動かない。
(えーと、人にあったら元気よく名前を言って挨拶しろって父さんが言っていたな)
「えーと、初めまして。シアといいます。お父さんの友人でクレインという冒険者の人に会いに来ました。それと隣にいるのが俺の家族で小太郎です。よろしくお願いします」
そうシアが言うと、小太郎も手を軽く上げて挨拶をした。
その様子に呆気にとられていた兵士たちであったが一人の兵士が震えながら前に出てシアに話しかけた。
「わ、私はこの港町フィーネの防衛隊長をしているピーターだ。そ、そのフェンリルは安全なのか?」
(小太郎が安全かって? 大きいから怖いのかな)
「えーと、小太郎、みんな大きいのが怖いみたいだから小さくなってもらっていい?」
「うん。わかったよ~」
そう小太郎が返事をすると、小太郎は一気に体高1メートル位に体を小さくした。
その様子を見て少し気を取り直したのか、兵士たちの緊張感が弱まった。
「そ、その君は人を探しているのだよね?」
「はい。お父さんの友人で冒険者のクレインさんを探しています」
「冒険者のクレイン……、クレインという名前は結構あるからな。どのクレインだろう……」
ピーターが考えていると、シアがカールのタグを見せた。
すると、ピーターの顔色がみるみるうちに蒼白になっていく。
「き、君はどこでこのタグを……?」
「それは父さんのタグだって、母さんが言っていました」
ピーターが後方に伝令を走らせると、すぐに、最後方の騎馬部隊が近づいてきた。白馬で統一され、白一色の鎧に身を固めた一団が兵士たちの前に出ると、一人の偉丈夫が下馬して歩いてきた。
その偉丈夫はピーターの持つタグを読み上げた。
「SSS級冒険者、カール・ガイウス・ペルサス」
それを聞いた兵士たちは一斉にどよめきをあげ、偉丈夫はシアの前に来ると尋ねた。
「君は、カール・ガイウス・ペルサスの息子……なんだね?」
「はい。父さんはカールっていいます。母さんはマリアナです」
やがて、少し目を瞑ると、
「私の知る限りだと、SSS級冒険者のカール・ガイウス・ペルサスはかなり高齢だったはずだが……」
「はい。父さんは2年前に亡くなりました……。そして遺言でこの大陸に行ってクレインという冒険者に会えと言っていました」
そう言うと、シアはクレインから来た手紙を見せた。すると、
「ふう。君の行き先がわかったよ。私はこの港町フィーネの領主をしているコールマン伯爵だ。さて、君たちは今から私の大切なお客様になる。ついてきてくれるかな?」
そのままシアと小太郎は、用意された馬車に乗り込むと、白馬の一団に先導されてコールマン伯爵の屋敷へと入っていった。
コールマン伯爵の屋敷は白亜の御殿という言葉がしっくりくる大きさであった。馬車3台が楽に通れる広さの門をくぐり抜けて石畳の上を進むと、その両脇にはよく手入れされた緑の絨毯が広がり、色とりどりの花が咲き誇っていた。車窓から眺めるその光景は白亜の屋敷と相まって、シアと小太郎を包み込み、一枚の絵の中にいるかのような錯覚すら覚えさせたほどであった。
馬車が車寄せにつくと使用人達が集まり伯爵に挨拶をした。
シアと小太郎が下りると、執事らしき人が近づき、恭しい仕草でシアと小太郎を案内してくれた。シアが礼を言うと一礼してから、
「お食事の時間になったらお呼びいたします」
と告げて、立ち去って行った。
シアと小太郎が案内されたのは実に大きな部屋であった。天蓋つきのベッドだけでも8つはあり、室内には風呂も設けられていた。シアと小太郎がその大きな部屋に据え付けられた数々の絵画や美術品を興味深く観察し部屋中を探検していると、先程の執事が食堂に案内をしてくれた。
食堂につくと、コールマン伯爵の向かい側に座るように案内された。小太郎のために新たに作ったであろう食事台まで用意されていた。
コールマン伯爵は隣の美しい女性を妻のシンディだと紹介し、その横で小太郎を興味深く見ている女の子を娘のメリーだと紹介してくれた。
シアと小太郎はそれまでに食べたことがない様々な料理を美味しく食べ進んでいた。美しく色とりどりの野菜に果物、柔らかく溶けるような肉、食後の甘いお菓子には歓声を上げそうになった。
食事を終えたシアと小太郎にコールマン伯爵は、
「では、シア君。色々と教えてもらってもいいかな?」
と質問を始めたのであった。
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