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七〇、決戦
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シリウスと王碧が慌てたように修太朗のもとへやってきた。
「修太朗、あの絵の意味がわかったぞ」
興奮するシリウスと王碧をなだめながら修太朗は皆を集めて話を聞くことにした。
「あの絵は月食を意味しているんだ」
「そうだ、月食だ」
「……落ち着けって」
「落ち着けるか、今日だぞ、今日」
口から唾を飛ばしながらシリウスと王碧がわめく。それを聞いていたカミュも何かに気が付いたように、
「修太朗さん、確かに今日ですね」
と、言い始めた。
シリウスと王碧よりも落ち着いていたカミュが説明を始めた。カミュによれば、この星の周囲をめぐる月は等間隔などではなく、若干ずれていて、しかも公転する速度がかなり違うために互いの位置を入れ替えることも度々起きるのだという。そして、数百年に一度月が全く出ない現象が起きると言う。
「月が全く出ない日……」
「それは地上のどの位置にいるかで変わるのだが、今日はあの砂漠から月を眺めていれば月食がおきるはずだ。昔の人間はその日を呪いの日だと言って家に引きこもっていたのだ」
「噓だと思えば一旦宇宙に行って見てみろ」
そこまで言われて修太朗達は、宇宙空間に転移してみることにした。すると、
「……確かに四つの月が一か所に集まりそうになっているな。そして、動きの早い月が同じ軌道をたどれば……」」
「うむ。とすれば、あの位置からだと砂漠では……」
「……全ての月が消える」
その状況を確認した修太朗達は急いで砂漠の杖のある場所に転移をして、天空の月を一心に眺めていた。すると、
「月が徐々に消えはじめたな」
「おそらく数分程度続くはずだ」
やがて夜空を照らしていたはずの月がその影を消した。惑星ノアの砂漠を闇が包み込むと、杖がその存在を誇示するようにうっすらと光り出した。修太朗が杖に手を伸ばすと何の抵抗もなく杖が抜け、殯の勾玉が輝きはじめる。全員が注視する中、殯の勾玉から強烈な波動が発生すると修太朗が握っていた杖が震え、その波動を南側に一直線に飛ばした。数秒ほど続いたであろうか。シリウスが興奮した面持ちで語りだす。
「南極が……南極が、支配下に入った」
それを聞いて修太朗達は、一気に南極大陸へと転移をした。辺り一面を覆う強烈な瘴気。それを感じた雷神紫苑が爆発的な光の神気を放出して一気に浄化していく。やがてうっすらと冷気を感じさせる神秘的な夜空が覗きだすと周囲をマーラの眷族に囲まれているのが見えてくる。徐々に明るくなる視界が、ひび割れた氷の大地の上を埋め尽くすマーラの眷族たちをとらえだした。紫苑が言う。
「……まだ完全に浄化するには時間がかかる。数分間守ってくれ」
それを聞いた風蓮が紫苑の傍に行き、
「任せろ、安心して全力で浄化をしなさい」
と、言いながらその体を緑の神気で覆い、あたりを油断なく見回すと、臨戦態勢に入った。そこで全員にしづかが言う。
「さて、まずは露払いをしてやろう」
しづかの体に「死」の神気が纏わりつく。しづかはシリウスを見てから王碧を見た。
すると、
「任せておけ」
と、王碧が口にした瞬間に南極大陸の周囲全ての海が一気に隆起し、海の壁が形成される。また、同時に風蓮も転移で眷族たちが逃げられないように南極大陸を亜空間で覆い囲んだ。
「南極は元々死の大地。ここに居るのはマーラの眷族のみ。しづか殿遠慮なさらず」
その言葉を聞いた瞬間にしづかの体から発せられた圧倒的な「死」が南極大陸を包み込む。すると、マーラの眷族のうち、生命を持つものはすべて消え去り、数百万はいたはずの天狗や大天狗に大鬼達といった眷族たちがその生を散らしていた。
「残るは生命を持たない煩悩の化身のみだな」
しづかがあたりを見ながらそう口にした。
その言葉の通り、周囲を囲んでいるのは数百体のマーラにその子供である悪鬼が数千体のみであった。分が悪いと悟ったのか、周囲を囲んでいた悪鬼達は修太朗達の前方に集まりだした。そこに、鳳凰が煩悩を焼き尽くす炎を吐きながら襲い掛かり、九頭竜が煩悩を浄化する雨を降らせていく。あたり一面が水蒸気で覆われたところを銀獅子がラーを連れて縦横無尽に駆け回り悪鬼どもを弾き飛ばす。無名一刀斎もその剣閃を煌めかせながら舞うように悪鬼を斬り続ける。その光景をみた修太朗は背負っている『過保護車』の中のひなたに声を掛けた。
「ママを一緒に取り返そうな」
ユリとも目を合わせて互いに頷くと、修太朗は一気に突進してユリと共に悪鬼たちを蹂躙し始めたのであった。
「修太朗、あの絵の意味がわかったぞ」
興奮するシリウスと王碧をなだめながら修太朗は皆を集めて話を聞くことにした。
「あの絵は月食を意味しているんだ」
「そうだ、月食だ」
「……落ち着けって」
「落ち着けるか、今日だぞ、今日」
口から唾を飛ばしながらシリウスと王碧がわめく。それを聞いていたカミュも何かに気が付いたように、
「修太朗さん、確かに今日ですね」
と、言い始めた。
シリウスと王碧よりも落ち着いていたカミュが説明を始めた。カミュによれば、この星の周囲をめぐる月は等間隔などではなく、若干ずれていて、しかも公転する速度がかなり違うために互いの位置を入れ替えることも度々起きるのだという。そして、数百年に一度月が全く出ない現象が起きると言う。
「月が全く出ない日……」
「それは地上のどの位置にいるかで変わるのだが、今日はあの砂漠から月を眺めていれば月食がおきるはずだ。昔の人間はその日を呪いの日だと言って家に引きこもっていたのだ」
「噓だと思えば一旦宇宙に行って見てみろ」
そこまで言われて修太朗達は、宇宙空間に転移してみることにした。すると、
「……確かに四つの月が一か所に集まりそうになっているな。そして、動きの早い月が同じ軌道をたどれば……」」
「うむ。とすれば、あの位置からだと砂漠では……」
「……全ての月が消える」
その状況を確認した修太朗達は急いで砂漠の杖のある場所に転移をして、天空の月を一心に眺めていた。すると、
「月が徐々に消えはじめたな」
「おそらく数分程度続くはずだ」
やがて夜空を照らしていたはずの月がその影を消した。惑星ノアの砂漠を闇が包み込むと、杖がその存在を誇示するようにうっすらと光り出した。修太朗が杖に手を伸ばすと何の抵抗もなく杖が抜け、殯の勾玉が輝きはじめる。全員が注視する中、殯の勾玉から強烈な波動が発生すると修太朗が握っていた杖が震え、その波動を南側に一直線に飛ばした。数秒ほど続いたであろうか。シリウスが興奮した面持ちで語りだす。
「南極が……南極が、支配下に入った」
それを聞いて修太朗達は、一気に南極大陸へと転移をした。辺り一面を覆う強烈な瘴気。それを感じた雷神紫苑が爆発的な光の神気を放出して一気に浄化していく。やがてうっすらと冷気を感じさせる神秘的な夜空が覗きだすと周囲をマーラの眷族に囲まれているのが見えてくる。徐々に明るくなる視界が、ひび割れた氷の大地の上を埋め尽くすマーラの眷族たちをとらえだした。紫苑が言う。
「……まだ完全に浄化するには時間がかかる。数分間守ってくれ」
それを聞いた風蓮が紫苑の傍に行き、
「任せろ、安心して全力で浄化をしなさい」
と、言いながらその体を緑の神気で覆い、あたりを油断なく見回すと、臨戦態勢に入った。そこで全員にしづかが言う。
「さて、まずは露払いをしてやろう」
しづかの体に「死」の神気が纏わりつく。しづかはシリウスを見てから王碧を見た。
すると、
「任せておけ」
と、王碧が口にした瞬間に南極大陸の周囲全ての海が一気に隆起し、海の壁が形成される。また、同時に風蓮も転移で眷族たちが逃げられないように南極大陸を亜空間で覆い囲んだ。
「南極は元々死の大地。ここに居るのはマーラの眷族のみ。しづか殿遠慮なさらず」
その言葉を聞いた瞬間にしづかの体から発せられた圧倒的な「死」が南極大陸を包み込む。すると、マーラの眷族のうち、生命を持つものはすべて消え去り、数百万はいたはずの天狗や大天狗に大鬼達といった眷族たちがその生を散らしていた。
「残るは生命を持たない煩悩の化身のみだな」
しづかがあたりを見ながらそう口にした。
その言葉の通り、周囲を囲んでいるのは数百体のマーラにその子供である悪鬼が数千体のみであった。分が悪いと悟ったのか、周囲を囲んでいた悪鬼達は修太朗達の前方に集まりだした。そこに、鳳凰が煩悩を焼き尽くす炎を吐きながら襲い掛かり、九頭竜が煩悩を浄化する雨を降らせていく。あたり一面が水蒸気で覆われたところを銀獅子がラーを連れて縦横無尽に駆け回り悪鬼どもを弾き飛ばす。無名一刀斎もその剣閃を煌めかせながら舞うように悪鬼を斬り続ける。その光景をみた修太朗は背負っている『過保護車』の中のひなたに声を掛けた。
「ママを一緒に取り返そうな」
ユリとも目を合わせて互いに頷くと、修太朗は一気に突進してユリと共に悪鬼たちを蹂躙し始めたのであった。
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