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五四、作戦
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五四、作戦
風蓮は目の前で簡単な図を書いた。
「この中央にある大きな星はマーラが主神の惑星マリシャスです。そして、この星には月が五つあります。それらの月は五芒星を描くように存在しております。それぞれの月にはマーラの眷族が存在していて常に警戒をしております」
しづかが問う。
「そうすると、月を経由するとマーラに察知されるのだな」
「そうなります。しかし、惑星マリシャスには星全体に強力な転移阻害の結界が張られているため、私でも月経由でないと転移できません」
「風蓮殿でも無理だというなら、修太朗では……」
「不可能です」
「この月に転移するにしても、おそらく大神三人が神力を注がないと彼らを転移させることはできないでしょう」
「だとすると……どうするか」
「唯一の方法は極点に降り立つことです」
「それは北極点と南極点のことか」
「はい。そのどちらかですね。極点は星の生命力が放出される場所です。そこなら転移阻害は弱まりますから、この惑星マリシャスの隣の星から降り立てるかと思います。そして、ユキさんの魂を閉じ込めている牢獄は南極点にあると思われます」
そこで修太朗が、
「なら南極点に転移させてください」
と、頼むと、
「そこには、おそらくマーラの本体があります。警戒が厳重すぎて不可能です。転移中に発見されると、転移後の最も無防備な時に攻撃されるでしょう」
「では、どうすれば……」
「……攪乱だな」
と、紫苑がいう。
「攪乱?」
「……この月のいくつかに我々が乗り込めばいい。そちらに注意を引き付けている間に、修太朗は隣の星から北極点に転移すれば……」
「なるほど、それなら修太朗さんは惑星マリシャスに入れますね。ただ、マーラは警戒するでしょうが」
修太朗はそこで気になることを質問する。
「仮に、マーラにばれたとして、ユキの魂が害される可能性はあるのですか?」
と、それに対して風蓮と紫苑は、
「隠される可能性はあっても、害することはできない」
と、いうものであった。修太朗が理由を聞くと風蓮は、
「肉体を持ったまま現人神に至った魂は強大な力を持っています。その強大な魂を煩悩で汚染して吸収することがマーラの目的です。しかし、ユキさんの魂は汚染されず輝き続けているはずです。彼ら悪神の類は、肉体は傷つけることができても、輝きを持った魂を傷つけることができません。ですから、結界を張った牢獄に閉じ込めて絶望させて煩悩に染まるのを待つしかありません」
「……絶望させる」
「はい。絶望させようとするでしょう。しかし、ここに残滓としてユリさんがおられます。もし、本体のユキさんの魂が絶望して煩悩に染まれば、ユリさんに影響が出ます。だから、大丈夫だと思いますよ」
「……なら、真正面からのりこみますよ」
そう、修太朗は告げた。
「真正面から……?」
そう言って、風蓮は絶句した。
「どこかの月にいるマーラの眷族を斬り捨ててから、惑星マリシャスにさえ下り立てば、後は隠れず真正面から叩きに行きます」
その時、修太朗達の脳に直接語りかける声があった。
「水臭いだろ、修太朗」
そう言うと、風蓮の館の前に銀獅子が鳳凰と九頭竜を伴い現れた。
「少しは手伝わせろや、マーラを倒せと言われたらつらいかもしれんが、攪乱くらいなら任せろって」
その声に被せるように、豪焔と清碧も銀獅子と同じことを言った。
「ふむ。なら、一気にやるのが良いか」
と、しづかが切り出した。
「一の月に我が出向こう。二の月に風蓮殿、三の月に紫苑殿、四の月に銀獅子と鳳凰、九頭竜、五の月に豪焔と清碧。修太朗達は風蓮殿に同行して二の月から転移させてもらえばよかろうて」
それを聞いた風蓮は修太朗の顔を見る。その顔が不退転の決意に満ちていることを確認すると、大きく息を吐き、
「わかりました。皆様ご協力をお願いします」
と、頭を下げたのである。
修太朗達が乗り込むことになったのは理由があった。
前回の襲撃から数十日間、ほぼ毎日といってよいほどマーラは攻め込んできたのである。風蓮によれば、ひなたを害してユキの魂に絶望を与え吸収するためであり、また、ひなたが育って力をこれ以上つけないようにするためでもあるとのことであった。
だが、劣化版とはいえ、すでにマーラは修太朗の敵ではなかった。煩悩を斬り裂く修太朗の刀は冴えわたり、襲い来るマーラは全て黒夜叉の錆となった。逆にマーラを消滅させ続けていたことで、修太朗の神力は膨れ上がり、大神達に匹敵するまでに成長を遂げていた。急激に力をつけた修太朗は、マーラの襲撃が止んだこの時に惑星マリシャスに乗り込むことを望んだのである。また、しづかたち大神も今しかないだろうと結論を出したのだ。そして、ここに来て修太朗は、ようやくユキの魂を取り戻せる機会を得たのであった。
風蓮は目の前で簡単な図を書いた。
「この中央にある大きな星はマーラが主神の惑星マリシャスです。そして、この星には月が五つあります。それらの月は五芒星を描くように存在しております。それぞれの月にはマーラの眷族が存在していて常に警戒をしております」
しづかが問う。
「そうすると、月を経由するとマーラに察知されるのだな」
「そうなります。しかし、惑星マリシャスには星全体に強力な転移阻害の結界が張られているため、私でも月経由でないと転移できません」
「風蓮殿でも無理だというなら、修太朗では……」
「不可能です」
「この月に転移するにしても、おそらく大神三人が神力を注がないと彼らを転移させることはできないでしょう」
「だとすると……どうするか」
「唯一の方法は極点に降り立つことです」
「それは北極点と南極点のことか」
「はい。そのどちらかですね。極点は星の生命力が放出される場所です。そこなら転移阻害は弱まりますから、この惑星マリシャスの隣の星から降り立てるかと思います。そして、ユキさんの魂を閉じ込めている牢獄は南極点にあると思われます」
そこで修太朗が、
「なら南極点に転移させてください」
と、頼むと、
「そこには、おそらくマーラの本体があります。警戒が厳重すぎて不可能です。転移中に発見されると、転移後の最も無防備な時に攻撃されるでしょう」
「では、どうすれば……」
「……攪乱だな」
と、紫苑がいう。
「攪乱?」
「……この月のいくつかに我々が乗り込めばいい。そちらに注意を引き付けている間に、修太朗は隣の星から北極点に転移すれば……」
「なるほど、それなら修太朗さんは惑星マリシャスに入れますね。ただ、マーラは警戒するでしょうが」
修太朗はそこで気になることを質問する。
「仮に、マーラにばれたとして、ユキの魂が害される可能性はあるのですか?」
と、それに対して風蓮と紫苑は、
「隠される可能性はあっても、害することはできない」
と、いうものであった。修太朗が理由を聞くと風蓮は、
「肉体を持ったまま現人神に至った魂は強大な力を持っています。その強大な魂を煩悩で汚染して吸収することがマーラの目的です。しかし、ユキさんの魂は汚染されず輝き続けているはずです。彼ら悪神の類は、肉体は傷つけることができても、輝きを持った魂を傷つけることができません。ですから、結界を張った牢獄に閉じ込めて絶望させて煩悩に染まるのを待つしかありません」
「……絶望させる」
「はい。絶望させようとするでしょう。しかし、ここに残滓としてユリさんがおられます。もし、本体のユキさんの魂が絶望して煩悩に染まれば、ユリさんに影響が出ます。だから、大丈夫だと思いますよ」
「……なら、真正面からのりこみますよ」
そう、修太朗は告げた。
「真正面から……?」
そう言って、風蓮は絶句した。
「どこかの月にいるマーラの眷族を斬り捨ててから、惑星マリシャスにさえ下り立てば、後は隠れず真正面から叩きに行きます」
その時、修太朗達の脳に直接語りかける声があった。
「水臭いだろ、修太朗」
そう言うと、風蓮の館の前に銀獅子が鳳凰と九頭竜を伴い現れた。
「少しは手伝わせろや、マーラを倒せと言われたらつらいかもしれんが、攪乱くらいなら任せろって」
その声に被せるように、豪焔と清碧も銀獅子と同じことを言った。
「ふむ。なら、一気にやるのが良いか」
と、しづかが切り出した。
「一の月に我が出向こう。二の月に風蓮殿、三の月に紫苑殿、四の月に銀獅子と鳳凰、九頭竜、五の月に豪焔と清碧。修太朗達は風蓮殿に同行して二の月から転移させてもらえばよかろうて」
それを聞いた風蓮は修太朗の顔を見る。その顔が不退転の決意に満ちていることを確認すると、大きく息を吐き、
「わかりました。皆様ご協力をお願いします」
と、頭を下げたのである。
修太朗達が乗り込むことになったのは理由があった。
前回の襲撃から数十日間、ほぼ毎日といってよいほどマーラは攻め込んできたのである。風蓮によれば、ひなたを害してユキの魂に絶望を与え吸収するためであり、また、ひなたが育って力をこれ以上つけないようにするためでもあるとのことであった。
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