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四〇、再会
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さて、家族旅行が過保護に仕組まれたものであるとも知らず、二人は羞恥心に打ち震えていた。
「修太朗さん……酷いです……あんなに……」
「いや、だからな、飲ませたのはユリだろ……」
二人で若干喧嘩をしながらも、素早く出発の準備を整えた。
「えーと、どうしたらいいのだろう」
「とりあえず、風蓮様のところに行きましょう」
と、二人は気を取り直してひなたを『過保護車』に乗せて風蓮の元へ向かった。
風蓮の元に到着すると、一人の少年がいた。華奢な体に長い手足、膝下よりも長く伸びた滑らかな長髪。一見すると女性にも見えるその顔は細く長い眉に切れ長の目が特徴的であった。その細身の体に胸襟の開いた羽織を纏った姿は優美ですらあった。
その少年は一歩前に出ると、
「……紫苑」
と、だけ短く挨拶をした。
風蓮が言うには雷神紫苑は言葉数が少なく無口であるが、風蓮の親友とのことであった。修太朗とユリが挨拶を済ませると、軽く手を挙げて、
「……頼む」
と、口にした。その瞬間に修太朗とユリ、そしてひなたを乗せた『過保護車』はハネス魔国の入口に立っていた。
「どうなっているのだろうね」
「わかりませんが、ここはどこでしょうか?」
「おそらく、ハネス魔国の入口だと思うよ」
「では、王様は魔王グレン様ですね」
「ああ、顔を見に行ってみようか」
そう言うと、二人は門番に声をかけて魔王グレンの館へと赴いたのである。
魔王グレンの館に到着すると、修太朗は大声で魔王グレンを呼んだ。
すると、魔王グレンがその大きな体で修太朗に突進してきて、
「随分久しぶりだな、二年ぶりだな」
というと、がっしりとした手で修太朗の肩を叩いた。
「二年?」
そう修太朗が疑問に思うと、
「星によって様々ではありますが、黄泉と下界では時間の流れが違います」
と、修太朗に耳打ちしてくれた。
魔王グレンは隣にいるユリを見て
「誰だ?」
と聞いて来た。ユリはすかさず、
「妻です」
と、誇らしげに答えると、『過保護車』の中のひなたを前に出した。
魔王グレンはひなたを見ると、修太朗に向かって、
「魔族特製の秘薬のおかげだな」
と、言って修太朗の背中を何度も叩いた。
ユリが顔を赤らめながら、
「あれは効きすぎです……」
と、小さく呟くと、
「どれだけ飲んだのだ」
と聞かれたので、一錠を使ったというと、魔王グレンは呆れたように、あの薬は一升の酒に一錠を溶かして、その酒をお猪口に少し注ぐのが適量だと言い始めたので、今度は修太朗が先に言えと魔王グレンの頭を叩いた。
そうやって旧交を暖めていると、突然甲高い鐘の音が響き渡った。
「ちっ、また来やがった」
そう言う魔王グレンに向かって、修太朗がどうしたのかと問うと、
「一年ほど前から北の森のワイバーンたちが餌を求めてこちらに来るようになってな、ヤンゴート王国の魔導士たちと協力して撃退しているのだが、数が多くて退治しきれていないのだ」
と、指さすと、そこには数百匹のワイバーンが空を飛んでいた。
「修太朗さん」
「おう」
と、短いやり取りの間に修太朗は空に飛びあがるとワイバーンを屠り始めた。
だが、修太朗が撃退している群れとは別の方角からワイバーンが街へと降り立ち、魔王グレンに向かって飛んできた。魔王グレンが咄嗟にユリとひなたをかばおうと前に出ると、その脇から白く煌めく細い光線が奔る。
ユリが斬り捨てたワイバーンが小さな蜥蜴に変わっているのを見て、驚く魔王グレンと逃げ惑う街の人々を横目に、ユリは迷わずにワイバーンの群れに突っ込むと、
「一の舞『円舞』」
と、呟いた。
ユリを取り囲むワイバーンたちが一斉に蜥蜴に変わるのを見て、魔王グレンは顎が外れそうなくらいに驚いていた。
「なぁ夫婦でその強さっておかしいだろ?」
と、全てのワイバーンを撃退した後に修太朗に言うと、修太朗は無言で含み笑いをした後、北の森とはどういうところかを魔王グレンに聞いた。
魔王グレンが言うには、今いるこの大陸は三角形に近い形をしており、東にヤンゴート王国、西にハネス魔国があり、両国の北側には広大な森林地帯があって、北の森と言っているそうだった。その北の森には森人と言われる種族が隠れ里を作って住んでおり、時おりハネス魔国と物資の取引に来るほかは全く交流がないとのことだった。
そして、
「北の森のあたりの雲が変な色になっていると報告があった」
と、告げると悔しそうにした。
「修太朗さん……酷いです……あんなに……」
「いや、だからな、飲ませたのはユリだろ……」
二人で若干喧嘩をしながらも、素早く出発の準備を整えた。
「えーと、どうしたらいいのだろう」
「とりあえず、風蓮様のところに行きましょう」
と、二人は気を取り直してひなたを『過保護車』に乗せて風蓮の元へ向かった。
風蓮の元に到着すると、一人の少年がいた。華奢な体に長い手足、膝下よりも長く伸びた滑らかな長髪。一見すると女性にも見えるその顔は細く長い眉に切れ長の目が特徴的であった。その細身の体に胸襟の開いた羽織を纏った姿は優美ですらあった。
その少年は一歩前に出ると、
「……紫苑」
と、だけ短く挨拶をした。
風蓮が言うには雷神紫苑は言葉数が少なく無口であるが、風蓮の親友とのことであった。修太朗とユリが挨拶を済ませると、軽く手を挙げて、
「……頼む」
と、口にした。その瞬間に修太朗とユリ、そしてひなたを乗せた『過保護車』はハネス魔国の入口に立っていた。
「どうなっているのだろうね」
「わかりませんが、ここはどこでしょうか?」
「おそらく、ハネス魔国の入口だと思うよ」
「では、王様は魔王グレン様ですね」
「ああ、顔を見に行ってみようか」
そう言うと、二人は門番に声をかけて魔王グレンの館へと赴いたのである。
魔王グレンの館に到着すると、修太朗は大声で魔王グレンを呼んだ。
すると、魔王グレンがその大きな体で修太朗に突進してきて、
「随分久しぶりだな、二年ぶりだな」
というと、がっしりとした手で修太朗の肩を叩いた。
「二年?」
そう修太朗が疑問に思うと、
「星によって様々ではありますが、黄泉と下界では時間の流れが違います」
と、修太朗に耳打ちしてくれた。
魔王グレンは隣にいるユリを見て
「誰だ?」
と聞いて来た。ユリはすかさず、
「妻です」
と、誇らしげに答えると、『過保護車』の中のひなたを前に出した。
魔王グレンはひなたを見ると、修太朗に向かって、
「魔族特製の秘薬のおかげだな」
と、言って修太朗の背中を何度も叩いた。
ユリが顔を赤らめながら、
「あれは効きすぎです……」
と、小さく呟くと、
「どれだけ飲んだのだ」
と聞かれたので、一錠を使ったというと、魔王グレンは呆れたように、あの薬は一升の酒に一錠を溶かして、その酒をお猪口に少し注ぐのが適量だと言い始めたので、今度は修太朗が先に言えと魔王グレンの頭を叩いた。
そうやって旧交を暖めていると、突然甲高い鐘の音が響き渡った。
「ちっ、また来やがった」
そう言う魔王グレンに向かって、修太朗がどうしたのかと問うと、
「一年ほど前から北の森のワイバーンたちが餌を求めてこちらに来るようになってな、ヤンゴート王国の魔導士たちと協力して撃退しているのだが、数が多くて退治しきれていないのだ」
と、指さすと、そこには数百匹のワイバーンが空を飛んでいた。
「修太朗さん」
「おう」
と、短いやり取りの間に修太朗は空に飛びあがるとワイバーンを屠り始めた。
だが、修太朗が撃退している群れとは別の方角からワイバーンが街へと降り立ち、魔王グレンに向かって飛んできた。魔王グレンが咄嗟にユリとひなたをかばおうと前に出ると、その脇から白く煌めく細い光線が奔る。
ユリが斬り捨てたワイバーンが小さな蜥蜴に変わっているのを見て、驚く魔王グレンと逃げ惑う街の人々を横目に、ユリは迷わずにワイバーンの群れに突っ込むと、
「一の舞『円舞』」
と、呟いた。
ユリを取り囲むワイバーンたちが一斉に蜥蜴に変わるのを見て、魔王グレンは顎が外れそうなくらいに驚いていた。
「なぁ夫婦でその強さっておかしいだろ?」
と、全てのワイバーンを撃退した後に修太朗に言うと、修太朗は無言で含み笑いをした後、北の森とはどういうところかを魔王グレンに聞いた。
魔王グレンが言うには、今いるこの大陸は三角形に近い形をしており、東にヤンゴート王国、西にハネス魔国があり、両国の北側には広大な森林地帯があって、北の森と言っているそうだった。その北の森には森人と言われる種族が隠れ里を作って住んでおり、時おりハネス魔国と物資の取引に来るほかは全く交流がないとのことだった。
そして、
「北の森のあたりの雲が変な色になっていると報告があった」
と、告げると悔しそうにした。
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