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三五、無限回廊
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魔王グレンの頼みを了承した後、グランに案内されて一軒の宿屋に泊まった。朝起きて外に出ると、グランがすでに待ち構えていて、昨日の広場に来るように告げた。修太朗が広場に向かうと、魔王グレンもいてまた豪快な食事を勧めてきた。
修太朗が朝食にしては重たい食事をしていると、修太朗の目の前に人々が食料品や薬草などを持ち寄って置いていった。やがて荷物を満載した荷車をひいた兵士たちが現れると、荷車の開いた場所にねじ込むようにそれらを積み込んでいった。
魔王グレンが荷車をひく兵士たちを指さすと、彼らは輜重部隊として食料品などを修太朗の後ろから運ぶ決死の部隊だと紹介した。その時、
「お父さん、行っちゃダメなのです。グラム様も負けたのです。嫌なのです」
そう言って、一人の幼女が兵士に抱き着いた。抱き着かれた兵士は涙ぐみながら、
「お父さんが行かないとみんなを魔物から守れないんだよ。みんな死んだら駄目だからね。ちゃんとお父さんは帰って来るからね。お母さんと良い子でお留守番しておいてね」
諭すようにそう言っていたが、やがてその幼女は火が付いたように泣き出してしまった。周りの人たちが幼女を引き離そうとするが、なかなか離れない。すると、修太朗はその幼女を抱き上げると、
「大丈夫。おじさんが一人で行ってくるからな」
そう言って、魔王グレンに向き直り、
「輜重部隊は必要ない。一人で十分だ」
と、告げる。魔王グレンが一〇階層までは二十日はかかるというと、食料品だけ受け取ると言って、食料品を亜空間収納に放り込んだ。
修太朗はグランの案内で無限回廊の入口に向かうと、見送りに来た者達に軽く手を挙げて散歩にでも行くような足取りで入口をくぐった。
「ふぅ、ゲーム方式かもしれないが、この世界の人たちにとっては現実だからな。軽い気持ちじゃ駄目だ」
修太朗は気合いを入れなおすと、先に進むことにした。
だが、ある意味ゲーム方式そのものであった。敵の数は多いものの、ほとんどが雑魚ばかりで、修太朗が黒夜叉を振る必要すらなかった。
神気を用いた技だけで敵を倒し、修太朗は一〇階層まであっという間に辿りついていた。
「ここがボス部屋ってわけだ」
そう言うと、修太朗は迷いなく扉を開けた。
そこには数十匹のゴブリンと中央に修太朗の倍くらいの背丈をした青色の大鬼が鉄棒を持って立っていた。
「小鬼と大鬼か……」
修太朗が気合いを入れ、黒夜叉を構えて技を出すと、あっけなく魔物たちは消滅してしまった。あまりの呆気なさに修太朗はため息をつくと、奥の部屋に向かう。そこには下層に続く階段があり、その階段の横に大きな水晶があった。
「これが帰還の水晶か」
修太朗はそう呟くと、水晶に触れた。
一回層の入口にいた兵士たちが先ほど見送ったばかりの修太朗が現れたのを見て驚く。その兵士たちに修太朗は、
「魔王グレンに一〇階層までは攻略したから心配するな」
と、伝言を残すと、再度突入していった。
そこからひたすらに階層を下っていった。時には暴風が吹き荒れ、灼熱のマグマが噴出し、悪質な罠が発動して、部屋一面に魔物だらけだったこともあった。ボス部屋の主もキメラだったり、龍だったり、死霊使いだったり様々であった。だが、修太朗はそれらの存在を消し続けて時おり食事をする他は無心で突き進み、数日で地下一〇〇〇階にまで辿りついてしまった。
「さて、どこまで続くことやら」
そう言いながら、修太朗は一〇〇〇階のボス部屋の扉を開けた。
その部屋は今までとは趣きが異なっていた。中央には修太朗が眉をひそめるようなおどろおどろしい黒紫の瘴気をまとった球状の物体が鎮座しており、その横で黒いフードを被った一人の男がその瘴気をひたすらに吸い込んでいた。
「最後にしようか」
そう言って、修太朗が黒夜叉を振りぬくと、一瞬の揺らぎの後にその男は消え去り、別の場所へと移動していた。
あらためて修太朗が黒夜叉を構えて、神気を纏わせる。弓なりに構えて、
「一の太刀『扇』」
そう呟くと、神気を纏わせた剣気が男を直撃した。
男は修太朗の攻撃を受けて消滅したが、中央の水晶から瘴気が集まるとまた男を形作っていった。
その顔には修太朗も見覚えがあった。
「お前はヤンゴート王国の宰相タリン……」
修太朗の声を聞き、タリンがニヤリと笑った。
修太朗が朝食にしては重たい食事をしていると、修太朗の目の前に人々が食料品や薬草などを持ち寄って置いていった。やがて荷物を満載した荷車をひいた兵士たちが現れると、荷車の開いた場所にねじ込むようにそれらを積み込んでいった。
魔王グレンが荷車をひく兵士たちを指さすと、彼らは輜重部隊として食料品などを修太朗の後ろから運ぶ決死の部隊だと紹介した。その時、
「お父さん、行っちゃダメなのです。グラム様も負けたのです。嫌なのです」
そう言って、一人の幼女が兵士に抱き着いた。抱き着かれた兵士は涙ぐみながら、
「お父さんが行かないとみんなを魔物から守れないんだよ。みんな死んだら駄目だからね。ちゃんとお父さんは帰って来るからね。お母さんと良い子でお留守番しておいてね」
諭すようにそう言っていたが、やがてその幼女は火が付いたように泣き出してしまった。周りの人たちが幼女を引き離そうとするが、なかなか離れない。すると、修太朗はその幼女を抱き上げると、
「大丈夫。おじさんが一人で行ってくるからな」
そう言って、魔王グレンに向き直り、
「輜重部隊は必要ない。一人で十分だ」
と、告げる。魔王グレンが一〇階層までは二十日はかかるというと、食料品だけ受け取ると言って、食料品を亜空間収納に放り込んだ。
修太朗はグランの案内で無限回廊の入口に向かうと、見送りに来た者達に軽く手を挙げて散歩にでも行くような足取りで入口をくぐった。
「ふぅ、ゲーム方式かもしれないが、この世界の人たちにとっては現実だからな。軽い気持ちじゃ駄目だ」
修太朗は気合いを入れなおすと、先に進むことにした。
だが、ある意味ゲーム方式そのものであった。敵の数は多いものの、ほとんどが雑魚ばかりで、修太朗が黒夜叉を振る必要すらなかった。
神気を用いた技だけで敵を倒し、修太朗は一〇階層まであっという間に辿りついていた。
「ここがボス部屋ってわけだ」
そう言うと、修太朗は迷いなく扉を開けた。
そこには数十匹のゴブリンと中央に修太朗の倍くらいの背丈をした青色の大鬼が鉄棒を持って立っていた。
「小鬼と大鬼か……」
修太朗が気合いを入れ、黒夜叉を構えて技を出すと、あっけなく魔物たちは消滅してしまった。あまりの呆気なさに修太朗はため息をつくと、奥の部屋に向かう。そこには下層に続く階段があり、その階段の横に大きな水晶があった。
「これが帰還の水晶か」
修太朗はそう呟くと、水晶に触れた。
一回層の入口にいた兵士たちが先ほど見送ったばかりの修太朗が現れたのを見て驚く。その兵士たちに修太朗は、
「魔王グレンに一〇階層までは攻略したから心配するな」
と、伝言を残すと、再度突入していった。
そこからひたすらに階層を下っていった。時には暴風が吹き荒れ、灼熱のマグマが噴出し、悪質な罠が発動して、部屋一面に魔物だらけだったこともあった。ボス部屋の主もキメラだったり、龍だったり、死霊使いだったり様々であった。だが、修太朗はそれらの存在を消し続けて時おり食事をする他は無心で突き進み、数日で地下一〇〇〇階にまで辿りついてしまった。
「さて、どこまで続くことやら」
そう言いながら、修太朗は一〇〇〇階のボス部屋の扉を開けた。
その部屋は今までとは趣きが異なっていた。中央には修太朗が眉をひそめるようなおどろおどろしい黒紫の瘴気をまとった球状の物体が鎮座しており、その横で黒いフードを被った一人の男がその瘴気をひたすらに吸い込んでいた。
「最後にしようか」
そう言って、修太朗が黒夜叉を振りぬくと、一瞬の揺らぎの後にその男は消え去り、別の場所へと移動していた。
あらためて修太朗が黒夜叉を構えて、神気を纏わせる。弓なりに構えて、
「一の太刀『扇』」
そう呟くと、神気を纏わせた剣気が男を直撃した。
男は修太朗の攻撃を受けて消滅したが、中央の水晶から瘴気が集まるとまた男を形作っていった。
その顔には修太朗も見覚えがあった。
「お前はヤンゴート王国の宰相タリン……」
修太朗の声を聞き、タリンがニヤリと笑った。
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