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三〇、魔界
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修太朗の意識が段々と覚醒してきた。
「昨日は完全に新右衛門さん……いや、自分だから新右衛門か、になってたもんな」
そう言い訳がましく呟くと、
「あんなに激しく愛してくれたのに、薄情ですのね」
と、恨みがましい目でユリが修太朗を見た。
「そうは言っても、何かまだ抵抗があるんだ」
「でも、昨日は、あんなことやこんなことも……」
「…………」
「具体的に申しあげた方がよろしいでしょうか?」
「いや、やめてください。さすがにそれは恥ずかしいというか……」
「ふふふ。わかりました。かわいい修太朗さん」
そう言うと、ユリは修太朗の頬を軽くついばんだ。
二人で起き上がると身支度を整え、食事をとった。
いつものように火打石を打つと、修太朗に口づけをして、またいつものように、美しく結われた日本髪を優雅に品よく下げて、
「いってらっしゃいませ」
と、見送ってくれた。
風蓮のもとに着くと、見透かされたかのように、
「どうやら思い出されたようですね」
と、声をかけられた。
少々顔を赤くしながら修太朗は、
「はい、全部ではありませんが、少し新右衛門としての記憶が戻っています」
と、答えた。
風蓮は何か感じ入ったように、
「では、お見せいただけますか?」
と、修太朗に神気を用いることを求めた。
それから修太朗は、手のひらの上でつむじ風を起こし、また火柱を立て、さらには雷まで起こしてみせた。
「どうやら完全に神気の用い方は思い出されたようですね。そうなると次は転移と亜空間収納を覚えてから、霊性を高めていく過程になりますね」
と、告げた。
それからの修太朗は、風蓮が驚くほどの速さで転移を覚え、あっという間に亜空間収納まで覚えてしまった。
「優秀ですね。では、霊性を高めて神力を上げていきましょうか」
そう言う風蓮に、
「以前師匠と小鬼を倒しに行っていたとき、小鬼を倒すたびに霊性が少しずつ上がったように思い、まるでゲームの経験値稼ぎのように思えたのですが」
と、質問をした。
「なるほど、地球にあるゲームですか。確かに近しいものはあります。しかし、虐殺などの殺生で霊性は上がりません。神としての神力を上げるために必要な霊性はまた違うのです。もちろん悪神などを倒すことは霊性を高めることに繋がりますが、それは世界、いや全宇宙の健全な状況を作り出すために役立つものである必要があります。言い換えれば、敵を倒すことなく、霊性を高めることも可能となります」
「敵を倒さない……」
「はい。それは簡単に見えて非常に難しいことです。ですから、今は修太朗さんの言われるゲーム方式で霊性を高めましょう」
「それは敵をひたすらに倒すということでしょうか?」
「そうなります。これからある世界に行ってもらいます。その世界は、くだらない魔の物が身の程知らずにも好き勝手にしております。そこでどれだけ敵を倒しても全て修太朗さんの経験値とやらになるので、単純かつおすすめとなっております」
「わかりました。それではどうすればよろしいでしょうか」
「今から修太朗さんを、とある星のアクスという人間の街に送ります。そうすれば自然に魔界へと辿りつくでしょう」
「アクスですね。了承致しました」
そう言う修太朗に、現地で使うお金と食料品を渡すと、風蓮は両手を軽く二度叩き、修太朗を送り出した。
消えゆく修太朗に、
「まずはひとつ世界を救ってください。それから最後に修羅の星です」
と、声を掛けた。
「昨日は完全に新右衛門さん……いや、自分だから新右衛門か、になってたもんな」
そう言い訳がましく呟くと、
「あんなに激しく愛してくれたのに、薄情ですのね」
と、恨みがましい目でユリが修太朗を見た。
「そうは言っても、何かまだ抵抗があるんだ」
「でも、昨日は、あんなことやこんなことも……」
「…………」
「具体的に申しあげた方がよろしいでしょうか?」
「いや、やめてください。さすがにそれは恥ずかしいというか……」
「ふふふ。わかりました。かわいい修太朗さん」
そう言うと、ユリは修太朗の頬を軽くついばんだ。
二人で起き上がると身支度を整え、食事をとった。
いつものように火打石を打つと、修太朗に口づけをして、またいつものように、美しく結われた日本髪を優雅に品よく下げて、
「いってらっしゃいませ」
と、見送ってくれた。
風蓮のもとに着くと、見透かされたかのように、
「どうやら思い出されたようですね」
と、声をかけられた。
少々顔を赤くしながら修太朗は、
「はい、全部ではありませんが、少し新右衛門としての記憶が戻っています」
と、答えた。
風蓮は何か感じ入ったように、
「では、お見せいただけますか?」
と、修太朗に神気を用いることを求めた。
それから修太朗は、手のひらの上でつむじ風を起こし、また火柱を立て、さらには雷まで起こしてみせた。
「どうやら完全に神気の用い方は思い出されたようですね。そうなると次は転移と亜空間収納を覚えてから、霊性を高めていく過程になりますね」
と、告げた。
それからの修太朗は、風蓮が驚くほどの速さで転移を覚え、あっという間に亜空間収納まで覚えてしまった。
「優秀ですね。では、霊性を高めて神力を上げていきましょうか」
そう言う風蓮に、
「以前師匠と小鬼を倒しに行っていたとき、小鬼を倒すたびに霊性が少しずつ上がったように思い、まるでゲームの経験値稼ぎのように思えたのですが」
と、質問をした。
「なるほど、地球にあるゲームですか。確かに近しいものはあります。しかし、虐殺などの殺生で霊性は上がりません。神としての神力を上げるために必要な霊性はまた違うのです。もちろん悪神などを倒すことは霊性を高めることに繋がりますが、それは世界、いや全宇宙の健全な状況を作り出すために役立つものである必要があります。言い換えれば、敵を倒すことなく、霊性を高めることも可能となります」
「敵を倒さない……」
「はい。それは簡単に見えて非常に難しいことです。ですから、今は修太朗さんの言われるゲーム方式で霊性を高めましょう」
「それは敵をひたすらに倒すということでしょうか?」
「そうなります。これからある世界に行ってもらいます。その世界は、くだらない魔の物が身の程知らずにも好き勝手にしております。そこでどれだけ敵を倒しても全て修太朗さんの経験値とやらになるので、単純かつおすすめとなっております」
「わかりました。それではどうすればよろしいでしょうか」
「今から修太朗さんを、とある星のアクスという人間の街に送ります。そうすれば自然に魔界へと辿りつくでしょう」
「アクスですね。了承致しました」
そう言う修太朗に、現地で使うお金と食料品を渡すと、風蓮は両手を軽く二度叩き、修太朗を送り出した。
消えゆく修太朗に、
「まずはひとつ世界を救ってください。それから最後に修羅の星です」
と、声を掛けた。
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