28 / 73
二八、神力
しおりを挟む
修太朗の新たな師匠となってくれたのは風蓮であった。
風蓮は自らを風そのものであると告げ、風神とは空間を支配するものだと教えた。
「修太朗さん、空間を支配するということはどういうことかわかりますか?」
「……空間を支配?」
修太朗が疑問に思うと、
「例えば、こんなことができます」
そう言い、目の前から忽然と消え去った。
背後に気配を感じて振り向くと、そこに風蓮は姿勢よく立っていた。
「……転移ですか?」
と、聞くと、
「正解です」
あっさりと答えが返ってきた。
「私は生まれながらの風神です。凡そ想像の及ぶ限り宇宙の果てでも一瞬で空間を支配し、移動することができます。天狗が修太朗さんの背後に移動したのも転移でしたね」
「また、こんなこともできます」
そう言うと、何もない空間からおにぎりを取り出した。
「まずはお食べなさい」
と、旨そうに食べだしたので、修太朗もご相伴にあずかることにした。
「このおにぎりは、私の作り出した別の空間に保存されたものです。空間を支配することができると、このように別の空間を作り出して利用することができます」
「……現実味がなさ過ぎて付いていけません」
そう修太朗が言うと、
「他にも色々ありますが、この二つは修行次第で現人神となった修太朗さんは使えるようになりますよ。それに、地球の常識を基準に現実味がないということなら、もう空を飛んだり、龍や天狗と戦ったりしてはいませんか?」
風蓮は唇に笑みを浮かべて修太朗に語り掛けた。
「もちろん、風を使った攻撃や防御もできるようになります」
しかし、と風蓮はくぎを刺した。
「どれだけの能力が使えるかどうかはその神が持つ神力で決まります」
「神力ですか?」
「私やしづか殿のように生まれながらに神として存在するものは、その司るものについては、ほぼ無限の神力を持ち合わせています。しづか殿なら『死について』、私なら『風について』は無限に使用することができます」
修太朗は無限に使用できると聞いて絶句してしまった。そんな修太朗に構わず風蓮は話を続けた。
「しかし、自らが司ることのない事柄については無限というわけには参りません」
そう言うと、風蓮の手から火が立ち上った。
「火の神ならいくらでもこの火を維持し、それこそ星を消し去るほどの火を起こすこともできますが、私にはそこまでできません。それに、小さな小動物程度なら何とか即死させることもできますが、しづか殿なら、古代龍や神に至ったものでも即死させるでしょう」
「それって、しづかさんは最強ではないのですか?」
「相手が生命体ならしづか殿は最強でしょうね。しかし、命を持たないものにはどうでしょうか。煩悩の化身マーラは煩悩が一塊に集まってできた存在です。煩悩に生命はありません。それに非常に狡猾で姿を見せませんし、残念なことにすぐに煩悩を集めて力を落としながらも何度でも復活します」
ここに来て、煩悩の化身マーラが非常に厄介であることに気づいた。
ありとあらゆる世界において、煩悩がなくなることは絶対にない。その煩悩が集まるとマーラが誕生するとなると、一体のマーラを消滅させたとしても、すぐにマーラは復活するだろう。それこそ全宇宙から生命体が死に絶えない限りマーラを完全に消滅させるのは不可能である。
「ですが、力を弱めることは出来ます。小さな煩悩の塊がマーラとなったらすぐに潰すのです。大きくならないうちに潰さないといけません」
「いいですか修太朗さん。この大宇宙にはそれこそ星の数に匹敵するほどの神が存在し、司るものも様々です。中には全く同じことを司る神もいます」
風蓮の説明によると、例えば風蓮の能力である風のみを司る神もいれば、空間のみを司る神もいるとのことだった。修太朗のような現人神は特に何かを司るものではないが、神力を用いて様々な現象を巻き起こすことができるそうである。
「私は、修太朗さんに神力を用いて事象を発現させる方法と、神力を強くする方法を師匠として教えたいと思います」
それから色々と修行をした。まずは思った事象を発現させないと話にならないとのことで、小さな風を起こせるように練習を重ねた。師匠によれば事象を起こすには完全にその事象が起きることを信じ切ることと、想像力が大事であるとのことだった。しかし、地球人としての常識が変に邪魔をしているのか、なかなか風は起きなかった。
修太朗が焦りを覚えたころ風蓮は、
「ふむ。今日はこの辺にしておきましょうか。出来ればひなた殿はしづか殿に預けて、ユリ殿と存分に語らってください。そうすれば、明日には簡単に発現すると思いますよ」
風蓮が意味ありげに言うと、その日の修業は終わりとなった。
風蓮は自らを風そのものであると告げ、風神とは空間を支配するものだと教えた。
「修太朗さん、空間を支配するということはどういうことかわかりますか?」
「……空間を支配?」
修太朗が疑問に思うと、
「例えば、こんなことができます」
そう言い、目の前から忽然と消え去った。
背後に気配を感じて振り向くと、そこに風蓮は姿勢よく立っていた。
「……転移ですか?」
と、聞くと、
「正解です」
あっさりと答えが返ってきた。
「私は生まれながらの風神です。凡そ想像の及ぶ限り宇宙の果てでも一瞬で空間を支配し、移動することができます。天狗が修太朗さんの背後に移動したのも転移でしたね」
「また、こんなこともできます」
そう言うと、何もない空間からおにぎりを取り出した。
「まずはお食べなさい」
と、旨そうに食べだしたので、修太朗もご相伴にあずかることにした。
「このおにぎりは、私の作り出した別の空間に保存されたものです。空間を支配することができると、このように別の空間を作り出して利用することができます」
「……現実味がなさ過ぎて付いていけません」
そう修太朗が言うと、
「他にも色々ありますが、この二つは修行次第で現人神となった修太朗さんは使えるようになりますよ。それに、地球の常識を基準に現実味がないということなら、もう空を飛んだり、龍や天狗と戦ったりしてはいませんか?」
風蓮は唇に笑みを浮かべて修太朗に語り掛けた。
「もちろん、風を使った攻撃や防御もできるようになります」
しかし、と風蓮はくぎを刺した。
「どれだけの能力が使えるかどうかはその神が持つ神力で決まります」
「神力ですか?」
「私やしづか殿のように生まれながらに神として存在するものは、その司るものについては、ほぼ無限の神力を持ち合わせています。しづか殿なら『死について』、私なら『風について』は無限に使用することができます」
修太朗は無限に使用できると聞いて絶句してしまった。そんな修太朗に構わず風蓮は話を続けた。
「しかし、自らが司ることのない事柄については無限というわけには参りません」
そう言うと、風蓮の手から火が立ち上った。
「火の神ならいくらでもこの火を維持し、それこそ星を消し去るほどの火を起こすこともできますが、私にはそこまでできません。それに、小さな小動物程度なら何とか即死させることもできますが、しづか殿なら、古代龍や神に至ったものでも即死させるでしょう」
「それって、しづかさんは最強ではないのですか?」
「相手が生命体ならしづか殿は最強でしょうね。しかし、命を持たないものにはどうでしょうか。煩悩の化身マーラは煩悩が一塊に集まってできた存在です。煩悩に生命はありません。それに非常に狡猾で姿を見せませんし、残念なことにすぐに煩悩を集めて力を落としながらも何度でも復活します」
ここに来て、煩悩の化身マーラが非常に厄介であることに気づいた。
ありとあらゆる世界において、煩悩がなくなることは絶対にない。その煩悩が集まるとマーラが誕生するとなると、一体のマーラを消滅させたとしても、すぐにマーラは復活するだろう。それこそ全宇宙から生命体が死に絶えない限りマーラを完全に消滅させるのは不可能である。
「ですが、力を弱めることは出来ます。小さな煩悩の塊がマーラとなったらすぐに潰すのです。大きくならないうちに潰さないといけません」
「いいですか修太朗さん。この大宇宙にはそれこそ星の数に匹敵するほどの神が存在し、司るものも様々です。中には全く同じことを司る神もいます」
風蓮の説明によると、例えば風蓮の能力である風のみを司る神もいれば、空間のみを司る神もいるとのことだった。修太朗のような現人神は特に何かを司るものではないが、神力を用いて様々な現象を巻き起こすことができるそうである。
「私は、修太朗さんに神力を用いて事象を発現させる方法と、神力を強くする方法を師匠として教えたいと思います」
それから色々と修行をした。まずは思った事象を発現させないと話にならないとのことで、小さな風を起こせるように練習を重ねた。師匠によれば事象を起こすには完全にその事象が起きることを信じ切ることと、想像力が大事であるとのことだった。しかし、地球人としての常識が変に邪魔をしているのか、なかなか風は起きなかった。
修太朗が焦りを覚えたころ風蓮は、
「ふむ。今日はこの辺にしておきましょうか。出来ればひなた殿はしづか殿に預けて、ユリ殿と存分に語らってください。そうすれば、明日には簡単に発現すると思いますよ」
風蓮が意味ありげに言うと、その日の修業は終わりとなった。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。


クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる