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夜空の追想 俺×僕

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夜空の追想




何億光年先でも、愛してる。


こいつは本当に救いようが無いくらいに馬鹿だ。

光年は時ではなく距離である。

最近は小学生だって知っている。

その定理など、あいつの前では無意味なのだ。

そもそも光年とは一年に光がすすむ距離。

即ち約9兆4600億キロメートル。

宇宙の広さから言って、億光年先なんてありえない。

破綻した愛の言葉に呆れながらため息をつく。


「光年がときじゃねえの、知ってっか?」


嘲笑を込めて俺は吐きだす。

冷たすぎる気もしないでもないが、愛してるなんて薄ら寒い台詞を吐くのが悪い。


俺の言葉を聞いてから、彼は眼を白黒させながら答える。


「当たり前でしょ、光年は距離だよ」


まるで質問した俺の方が馬鹿だとでも言いたげな瞳に、怒りを覚える。


「あぁ、そうかよ」


呆れやら疲れやらの感情をため息と共に吐きだす。

冷淡な声だ、と我ながらに思う。


「もし、君が星になったとして。僕はその星を愛する自信があるよ」


この馬鹿の脳中は大宇宙か。

どう考えたら俺が星になる想定が出来るのか。

それともそれは、俺が死んだ時を指すのか。


「俺は星になりたくねぇよ」


死んでたまるか、という意味も込めて零す。

彼の頭に疑問符が浮かんでいる。

分かるわけには無いだろうさ、お前には。


「星ってさ、孤独だろう?」


此処から見れば隣同士でも、実際は何光年も離れていて。

太陽の光を受けて光る月とは違い、自ら燃える一瞬の光。

今此処から見えている星だって、本当は何年も前に燃え尽きてるかもしれないのだ。

そんなの、悲しいだろう。


「じゃあさ、僕が星になるよ。そうすれば僕をいつも見ていてくれるだろう?」


子供のように澄んだ瞳で語る。

俺はそれに笑いながら答える。


「ばーか。そしたら俺が寂しいだろうがよ」


星を見るたびにお前を思い出してしまうなら。

何光年も先のお前に恋焦がれてしまうなら。

俺の心は切なさと愛しさで焼けてしまうだろう。

それこそあの星々達の方に。


お前への思いは、輝き続けるだろう。

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