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第2章

【6話】信じられたこと

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 軽音部がいつも利用している視聴覚室。それに隣接する準備室を告白の場所として選んだ。
 

 準備室は狭かった。普通教室の3分の1にも満たない大きさだった。それがよかったのだ。広いところだと落ち着かないし、逃げたくなってしまうと思ったから。


 



 桜の足音が聞こえた。今日はどこのバンドも隣を使っていないから、あたりは静まり返っていた。桜が足音を立てるたびに心拍数は上がっていった。緊張も高まっていった。でもその緊張は、絶望を内包していなかった


 桜がドアを開けて入ってきた。


「悪い、遅くなった」


 桜はそれだけ言って、黙った。
 何の用だ、と聞くことさえしなかった。


「話したいことがある」


 そう言って俺は桜をここに呼び出した。だから桜は俺から話し始めるのを待っているのだ。
 

 桜は……優しいな。






「桜、好きだよ」


 何の前置きもすることなく、俺はこう言った。


 



 告白のセリフは色々考えた。切り出すセリフでありがちなのは「今から伝えることは冗談じゃないからね」とか「男に告白されたらどう思う」とかだ。
 だが、それを言うのは相手を信じていない証拠ではないか。好きと言ったら相手は冗談だと思うんじゃないか。好きと言ったら相手はそれに嫌悪感を抱くんじゃないか。そういう不信が相手に対してあるからこそ、ああいったセリフがまず放たれるのだ。
 

 これらのセリフは確かに趣深いものであろう。特に物語なんかでこういったセリフを使うと告白のシーンに一気に厚みが増す。
 だが俺は、友達を信じると決めた。――信じて裏切られたなら? そんな質問は野暮だ。裏切られないと信じるのだ。






「……そっか、ありがとう。嬉しいよ」


 桜は静かにそういった。
 ほら、信じて正解だったじゃないか。


 思わず泣きそうになる。でも泣かない。涙で救えるのは自分だけだ、と誰かが言っていた。


「桜」
「うん?」
「謝りたいことがある」


 もはや何も怖くなかった。
 桜ならば何を言っても受け止めてくれる――というのは俺の傲慢である。実際、俺は桜にひどいことをしたのだ。許される保証はどこにもない。普通の人なら許すことは難しいだろう。だが、その傲慢は真実であると確信していた。
 桜を、信じていた。
 





 何もかも話した。





「……俺はひどい奴だ。友達を傷つけてまで自分の利益を追求した。なんとでも罵ってくれ」


 俺が言い終わると、桜は俺の肩に手を置いた。
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