維新竹取物語〜土方歳三とかぐや姫の物語〜

柳井梁

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第4章 菖蒲と紫陽花

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尊王攘夷派の者たちに島原で情報が漏れていることが俄かに噂になっているようです。

引き続き情報収集に努めます。





土方は薫からの手紙を握りつぶし、深くため息をついた。


「ばれたか。」

傍にいる山崎は眉間にしわを寄せた。

「過激派の頭とも言える宮部が京に入ったことがわかっただけでももっけもん。
薫はそろそろ潮時ちゃいますか。」

言いにくいんどすが、と山崎は渋るようにして話をつづけた。。

「東雲はん、松村っちゅう浪士とええ仲みたいで。」

松村、か。

土方はその名を反芻する。


昨日の茶店で会っていた男。

他の男の腕に抱かれていた、薫。

思い出すだけで、心の中を掻きむしりたくなる衝動に駆られる。


「薫を連れ戻せ。」



あいつが長州の手に渡るくらいなら…。


己の知らない感情が渦巻いている、と土方は思った。

土方はそれ以上薫のことを考えるのをやめた。


山崎は土方へ所要の報告を済ませたその足で、薫のいる置屋へ引き返した。

当然、薫を連れ帰るためである。


副長は、薫を必要としている。


山崎は土方自身よりも土方のことを知り抜いていた。

土方は生来冷酷な人間ではない。

むしろ、周囲に慕われる明るい人間だと山崎は考えていた。

それを鬼の仮面で覆い隠し、自らを奮い立たせていたのである。


そんな彼を慰めることができるのは東雲お前だけだ。


山崎は祈るように島原まで駆けた。

しかし、薫は既に外出して不在であった。

恐らくは、松村のところだろう。

以前姿を見かけた柏屋という茶店にも行ってみたが行方は知れなかった。


山崎は珍しく舌打ちをし、焦燥感を露わにした。


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