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第4章 菖蒲と紫陽花
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夕飯の準備をしている頃、慌ただしく土方らが帰ってきた。
火事自体はすぐに鎮火して事なきを得たが、意外な副産物を新選組にもたらした。
夕食を摂りながら深刻な話が大広間で交わされた。
「現場で不審な長州人を2名捕縛、か。きな臭いな。」
近藤は眉間に深いしわを寄せて呟いた。
先日起きた八月十八日の政変により京の街を追放された長州藩であったが、
復権を試みるべく桂小五郎を始めとした長州の重鎮が京に潜伏し、
政治工作を働いているという情報を監察方の山崎が報告したのである。
「京の街はただでさえ長州贔屓だ。
我々が得ている情報以上に長州の人間が潜伏している可能性は高い。
以後、巡察は木屋町周辺を重点的に行うこと。
それから、監察方は潜伏している長州人の探索に努めろ。」
「承知。」
こういうとき、もっと真面目に歴史を勉強しておくべきだったと後悔するが、それは後の祭りというものだ。
日本史の授業なんていつも教科書に落書きばかりしてまともに聞いていたためしがなかった。
薩長同盟が締結し、明治維新が為されて幕府が消滅するということは辛うじて覚えているけれど、
誰がいつどんなことをしてとか詳しいことは何も知らない。
知っていたならば、皆の役に立てるのに。
「おい、薫。」
土方に名前を呼ばれてようやく我に返った。
「仕事中にぼうっとするな。食事が終わったからさっさと膳を下げろ。」
すみません、と謝ってすぐに局長以下幹部の分の膳を下げる。
いつもであれば食事を終えると同時にお開きになるのに今日だけは違うようだ。
部屋の雰囲気もどこか緊張感が漂っている。
これ以上は深入りしない方が良いだろうと
薫は台所で食器を片付けた後は大広間に戻ることも土方の部屋に戻ることもしなかった。
先日の宴席以来薫の仕事を手伝ってくれる仲間も増えたお陰で
大広間の膳は一度で全て持って帰ることができたし、片付けもものの数分で終わる。
「東雲、後は俺たちでやっておくから、他の仕事して来いよ。」
宴以来毎日のように手伝ってくれる蟻通が食器の片づけに名乗り出てくれた。
「助かる。それじゃあ、井戸水を汲んでくるから何かあったら教えてください。」
薫は一人井戸へ向かった。
火事自体はすぐに鎮火して事なきを得たが、意外な副産物を新選組にもたらした。
夕食を摂りながら深刻な話が大広間で交わされた。
「現場で不審な長州人を2名捕縛、か。きな臭いな。」
近藤は眉間に深いしわを寄せて呟いた。
先日起きた八月十八日の政変により京の街を追放された長州藩であったが、
復権を試みるべく桂小五郎を始めとした長州の重鎮が京に潜伏し、
政治工作を働いているという情報を監察方の山崎が報告したのである。
「京の街はただでさえ長州贔屓だ。
我々が得ている情報以上に長州の人間が潜伏している可能性は高い。
以後、巡察は木屋町周辺を重点的に行うこと。
それから、監察方は潜伏している長州人の探索に努めろ。」
「承知。」
こういうとき、もっと真面目に歴史を勉強しておくべきだったと後悔するが、それは後の祭りというものだ。
日本史の授業なんていつも教科書に落書きばかりしてまともに聞いていたためしがなかった。
薩長同盟が締結し、明治維新が為されて幕府が消滅するということは辛うじて覚えているけれど、
誰がいつどんなことをしてとか詳しいことは何も知らない。
知っていたならば、皆の役に立てるのに。
「おい、薫。」
土方に名前を呼ばれてようやく我に返った。
「仕事中にぼうっとするな。食事が終わったからさっさと膳を下げろ。」
すみません、と謝ってすぐに局長以下幹部の分の膳を下げる。
いつもであれば食事を終えると同時にお開きになるのに今日だけは違うようだ。
部屋の雰囲気もどこか緊張感が漂っている。
これ以上は深入りしない方が良いだろうと
薫は台所で食器を片付けた後は大広間に戻ることも土方の部屋に戻ることもしなかった。
先日の宴席以来薫の仕事を手伝ってくれる仲間も増えたお陰で
大広間の膳は一度で全て持って帰ることができたし、片付けもものの数分で終わる。
「東雲、後は俺たちでやっておくから、他の仕事して来いよ。」
宴以来毎日のように手伝ってくれる蟻通が食器の片づけに名乗り出てくれた。
「助かる。それじゃあ、井戸水を汲んでくるから何かあったら教えてください。」
薫は一人井戸へ向かった。
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