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これから
発端
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葉月と分かれ、教室を出ると利津と若葉が走っているのが見えた。
「利津、若葉。2人して廊下走って何してんのよ」
声を掛けると2人して振り返り、駆け寄ってくる。
「美沙希!どこ行ってたんだよ。探したわ」
「無事で良かったですわ。あなたに何かあったら、誰が《姫巫女》様を助けるんですの?」
2人の剣幕に、私を心配して探してくれていた事が伝わってくる。
「ごめん。ちょっと、ね」
顔の前で手を合わせて、ごめんのポーズ。
「全く」
「とにかく良かったですわ。帰りましょう」
呆れ顔の中に安堵を見せる2人。
若葉に促され、校内を出る。門までの間に利津が言う。
「どこか寄っていかない?情報見つけたの」
学校の裏にある喫茶店に入った私達。
おそらく学校の人間はこないだろう。看板がないのでわかりにくいから。以前たまたま見つけたのだ。
「それで、利津。情報ってなんですの?」
「先ず、うちらの事と《姫巫女》様の事、どっち先に聞きたい?」
「姫の事」
すかさず返す私。
「了解。まず《姫巫女》様、実はそうとうなお家柄の姫君みたい。国を背負って立つ程の実力者の。そして、ことの発端は《巫女姫》の嫉妬心みたい。元々2人はすごく仲が良かったとか。それが、年頃になって《巫女姫》は恋をした。結婚を考える程の仲だったんだって」
利津の話に若葉がため息をついて言った。
「なんだか…絵に描いたようなシナリオですわね。三流小説のあらすじのようですわ。先が見えましてよ」
「私も。想像出来ちゃうストーリー」
ちょっと呆れてしまう私。
「まぁ、言いたいこたわかるけど、とりあえず続きね。
そんなかけがえのない彼を《姫巫女》様に紹介したのがキッカケ。会った途端、《巫女姫》の彼は《姫巫女》様に惹かれてしまって、結婚は白紙。《巫女姫》は悲しみと絶望のどん底に」
「やっぱり?」
「想像を越えませんでしたわ」
「まぁまぁ、聞きなさい。苦しみのどん底にいた《巫女姫》はある日出会った男の優しさにすがり、信頼し身を任せて魂まで売ってしまった」
「ちょっと待ってくださいな。魂を売るって…」
想定外の言葉に思わず利津の言葉を遮る若葉。
「そこまで、憎む事ありますの?人の気持ちなんて、どうにもなりませんのに」
「ところが、そう割り切る事は出来なかったのよ」
「美沙希?」
2人が私を見る。
さっきから、利津の話を聞きながら覚えのない映像が頭の中を流れている。これは姫の記憶だろうか。
利津の話の続きを引き取るように自然と言葉が出る。
「《巫女姫》は妊娠していたの。だけど、姫に惹かれている彼が許す筈はない。《巫女姫》はそれでも産もうとしたが、彼と周りの人達によって流産させられてしまった。そして、そのショックで子供が出来ない身体になってしまった…」
「なんだか複雑になってきましたわ」
今度は利津が話し始める。
「それで、さらに悲しみに苦しんでいる《巫女姫》の目に《姫巫女》様は、地位も幸せも何もかも手に入れているように見えた。そして、いつしか憎むようになった。魂を悪霊に売り『石』を揃えて、《姫巫女》様を呪い地位も彼も何もかもを手に入れようとしているって訳」
利津の話が終わっても、頭の中を流れている映像は止まらない。私は続けた。
「けど、理由はそれだけじゃないみたい」
「それだけじゃない?」
「他に何があるんですの?」
難しい顔の2人。
「うん、利津の話を聞きながら、ずっと覚えのない映像が流れてるんだけど…」
「きっと《姫巫女》様の記憶ですわね」
「そうだと思う。姫と《巫女姫》は母親違いの姉妹みたい」
「《姫巫女》様と《巫女姫》が?!」
「母親違いの姉妹だなんて…やり切れませんわ」
「そう。だからこそ余計に姫の事を許せなかったのね。自分は1人だと思っていた。母親の身分が低い。それだけの事で父親の愛情を受ける事も出来ず、孤独だった。だけど、子供の頃はそんな事関係ない。本当の姉妹の様に姫と遊んでいた。だけど、日が経つにつれ、年齢を重ねていくにつれ、その事が重くのしかかってきた。いつしか《巫女姫》の方から姫と距離を置く様になっていった」
「同じ父親を持つ子供なのに、認めてもらえない《巫女姫》の気持ちか…」
切なげな利津。
「だけど、そんな自分の事でも本気で心から愛してくれる人が出来た。私も幸せになれる。そう思ったのに、そんな彼でさえ、姫に奪われてしまったように思った《巫女姫》は、姫がいる限り幸せになれない。そう思うようになってしまった…」
その後の説明はいらなかった。
津薙と三若の記憶だろうか。利津と若葉も話始めた。
「自分と《姫巫女》様をさらに比べるようになった。心から《姫巫女》様を恨む様になり、出会った男が悪霊だとも知らずに身を任せてしまう。そして、姉妹である《姫巫女》様を殺そうとしてるなんて」
「なんとしても止めなくてはなりませんわ。実の姉妹がそんな争いをするなんて。だって、本当でしたらこれは仲の良い姉妹ケンカになる筈だったんですもの」
「あたしも同感。だけど、どうして葉月が《巫女姫》に手を貸そうとしたのかがわかんないけど」
思わず、ギクリとする私。
「あー、それ、ね。実は…これ」
2人に1通の手紙を見せる。
「何よ、これ?」
言いながら、手紙に目を落とす。
「美沙希…これって…」
なんの冗談?そんな顔で手紙を指差す利津。
若葉ってば、手紙を見たまま放心状態。
「そうよ。なんでかわかんないけど、貰っちゃったの。葉月の彼から!」
ヤケクソな私。
「葉月の彼からの告白!美沙希が好き。葉月と別れた」
「利津!声に出さなくてもいいでしょ?1番びっくりしてんのは私よぉ」
嘆き声に変わってしまう。どうしろっていうのよ!
「葉月が《巫女姫》に手を貸した理由がわかりましたわね。同じ悲しみを持つもの同士ですもの」
呆れ顔の若葉。
その後、色々と話して分かれた。
「利津、若葉。2人して廊下走って何してんのよ」
声を掛けると2人して振り返り、駆け寄ってくる。
「美沙希!どこ行ってたんだよ。探したわ」
「無事で良かったですわ。あなたに何かあったら、誰が《姫巫女》様を助けるんですの?」
2人の剣幕に、私を心配して探してくれていた事が伝わってくる。
「ごめん。ちょっと、ね」
顔の前で手を合わせて、ごめんのポーズ。
「全く」
「とにかく良かったですわ。帰りましょう」
呆れ顔の中に安堵を見せる2人。
若葉に促され、校内を出る。門までの間に利津が言う。
「どこか寄っていかない?情報見つけたの」
学校の裏にある喫茶店に入った私達。
おそらく学校の人間はこないだろう。看板がないのでわかりにくいから。以前たまたま見つけたのだ。
「それで、利津。情報ってなんですの?」
「先ず、うちらの事と《姫巫女》様の事、どっち先に聞きたい?」
「姫の事」
すかさず返す私。
「了解。まず《姫巫女》様、実はそうとうなお家柄の姫君みたい。国を背負って立つ程の実力者の。そして、ことの発端は《巫女姫》の嫉妬心みたい。元々2人はすごく仲が良かったとか。それが、年頃になって《巫女姫》は恋をした。結婚を考える程の仲だったんだって」
利津の話に若葉がため息をついて言った。
「なんだか…絵に描いたようなシナリオですわね。三流小説のあらすじのようですわ。先が見えましてよ」
「私も。想像出来ちゃうストーリー」
ちょっと呆れてしまう私。
「まぁ、言いたいこたわかるけど、とりあえず続きね。
そんなかけがえのない彼を《姫巫女》様に紹介したのがキッカケ。会った途端、《巫女姫》の彼は《姫巫女》様に惹かれてしまって、結婚は白紙。《巫女姫》は悲しみと絶望のどん底に」
「やっぱり?」
「想像を越えませんでしたわ」
「まぁまぁ、聞きなさい。苦しみのどん底にいた《巫女姫》はある日出会った男の優しさにすがり、信頼し身を任せて魂まで売ってしまった」
「ちょっと待ってくださいな。魂を売るって…」
想定外の言葉に思わず利津の言葉を遮る若葉。
「そこまで、憎む事ありますの?人の気持ちなんて、どうにもなりませんのに」
「ところが、そう割り切る事は出来なかったのよ」
「美沙希?」
2人が私を見る。
さっきから、利津の話を聞きながら覚えのない映像が頭の中を流れている。これは姫の記憶だろうか。
利津の話の続きを引き取るように自然と言葉が出る。
「《巫女姫》は妊娠していたの。だけど、姫に惹かれている彼が許す筈はない。《巫女姫》はそれでも産もうとしたが、彼と周りの人達によって流産させられてしまった。そして、そのショックで子供が出来ない身体になってしまった…」
「なんだか複雑になってきましたわ」
今度は利津が話し始める。
「それで、さらに悲しみに苦しんでいる《巫女姫》の目に《姫巫女》様は、地位も幸せも何もかも手に入れているように見えた。そして、いつしか憎むようになった。魂を悪霊に売り『石』を揃えて、《姫巫女》様を呪い地位も彼も何もかもを手に入れようとしているって訳」
利津の話が終わっても、頭の中を流れている映像は止まらない。私は続けた。
「けど、理由はそれだけじゃないみたい」
「それだけじゃない?」
「他に何があるんですの?」
難しい顔の2人。
「うん、利津の話を聞きながら、ずっと覚えのない映像が流れてるんだけど…」
「きっと《姫巫女》様の記憶ですわね」
「そうだと思う。姫と《巫女姫》は母親違いの姉妹みたい」
「《姫巫女》様と《巫女姫》が?!」
「母親違いの姉妹だなんて…やり切れませんわ」
「そう。だからこそ余計に姫の事を許せなかったのね。自分は1人だと思っていた。母親の身分が低い。それだけの事で父親の愛情を受ける事も出来ず、孤独だった。だけど、子供の頃はそんな事関係ない。本当の姉妹の様に姫と遊んでいた。だけど、日が経つにつれ、年齢を重ねていくにつれ、その事が重くのしかかってきた。いつしか《巫女姫》の方から姫と距離を置く様になっていった」
「同じ父親を持つ子供なのに、認めてもらえない《巫女姫》の気持ちか…」
切なげな利津。
「だけど、そんな自分の事でも本気で心から愛してくれる人が出来た。私も幸せになれる。そう思ったのに、そんな彼でさえ、姫に奪われてしまったように思った《巫女姫》は、姫がいる限り幸せになれない。そう思うようになってしまった…」
その後の説明はいらなかった。
津薙と三若の記憶だろうか。利津と若葉も話始めた。
「自分と《姫巫女》様をさらに比べるようになった。心から《姫巫女》様を恨む様になり、出会った男が悪霊だとも知らずに身を任せてしまう。そして、姉妹である《姫巫女》様を殺そうとしてるなんて」
「なんとしても止めなくてはなりませんわ。実の姉妹がそんな争いをするなんて。だって、本当でしたらこれは仲の良い姉妹ケンカになる筈だったんですもの」
「あたしも同感。だけど、どうして葉月が《巫女姫》に手を貸そうとしたのかがわかんないけど」
思わず、ギクリとする私。
「あー、それ、ね。実は…これ」
2人に1通の手紙を見せる。
「何よ、これ?」
言いながら、手紙に目を落とす。
「美沙希…これって…」
なんの冗談?そんな顔で手紙を指差す利津。
若葉ってば、手紙を見たまま放心状態。
「そうよ。なんでかわかんないけど、貰っちゃったの。葉月の彼から!」
ヤケクソな私。
「葉月の彼からの告白!美沙希が好き。葉月と別れた」
「利津!声に出さなくてもいいでしょ?1番びっくりしてんのは私よぉ」
嘆き声に変わってしまう。どうしろっていうのよ!
「葉月が《巫女姫》に手を貸した理由がわかりましたわね。同じ悲しみを持つもの同士ですもの」
呆れ顔の若葉。
その後、色々と話して分かれた。
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