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第一部
休んで(3)
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side:英人
落ち着かない様にもぞもぞと動いていたアキがようやく眠った様でほっと息をつく。先ほどまでのやり取りを通話越しに聞いていた2人とのチャットのやり取りを眺める。アキの自傷まがいの行為に、2人とも動揺しているのが文字だけでもみてとれた。
『すこし、兄の方の様子も見てみてから動くしかないかな…』
山田の言葉に肯定を返す。正直アキから状況を聞き出すのはかなり本人の精神的にも危ういだろう。とはいえ元のほうもかなり不安定だ。ショックなどですぐに体調に変化が生まれるタイプだから。
この状態で話を聞き出せそうな奴が1人しか思いつかなくて顔をしかめる。健斗、とアキが言うたびにその態度に違和感を覚えていたからだ。まるで怯えているような視線の動きは、ただの元彼に対する態度ではない、と思う。
生徒は平等に見るべきだとは頭では理解している。だから、これはあくまで自分の勝手な感情だ。
『アキくんは寝た?』
『さっきようやく。あまり寝たくなさそうだったけどな』
『そっかー…体調あんまり戻らなかったら実家療養、って……今の調子じゃそういうわけにもねぇ』
『そりゃやれはするけど真奈美の話からすれば落ち着いて療養なんてできそうな気はしないよな』
大丈夫、が口癖になってるくらいだ。家にいても心が休まるどころかなにかしらのプレッシャーがあるのだろう。
それからもすこし話すが情報の少ない今は中々作戦と呼べる様なものも立てられず、とにかく一時預かりという形を押し通すこととした。兄のほうには、先に健斗に話して健斗経由で伝えた方がショックも和らぐのではないかと結論づける。
2人に礼を言ってパソコンを落とすと、ソファから微かに声が聞こえた。
「…ん…にいさ…」
近づいて覗き込むと、眉をぎゅっと顰めて眠っているアキの顔が目に入る。綺麗系というにふさわしい顔をしたアキは寝ていればあどけない顔になるようだと日中に知ったが、この表情はあまりにも苦しげだった。
「に、さん……大丈夫……」
「おい、夢の中でも大丈夫が口癖かよ」
ポツリと突っ込めば、アキはそれに反応したかの様にさらに眉をしかめた。かるく頭を撫でてからアキの体を抱き上げる。コツさえ分かっていれば男子高生の体だってそんなに持ち上げるのも難しくはない。
風呂場で見えた体にはきちんと筋肉は付いていたものの、不健康に痩せた跡が見えた。既に筋肉は以前よりも無くなってしまっているかもしれない。
それでも自傷の痕がないことにすこし安心したのは事実だ。今ないということが、これから先も彼が自傷行為をしないという事だとは限らないが。
なによりフラッシュバックなどはいっぱいいっぱいの時よりも少しだけ辺りを見渡すことができる様になった時に襲ってくることも多い。生活に必死の時よりも、考える時間が生まれるから。
ベッドにアキを寝かせて毛布をかけるとアキはそれにすり寄った。その仕草を見て可愛い、と思ったのはなぜだろう。
それから暫く様子を見ていたが眉間のしわは消えないもののそこまでうなされる様子もないので寝室を後にする。今日は俺がソファで眠ろう。
明日早く起きて飯作らないとな、そんな呑気なことを考えながら自分もまたゆっくりと眠りについた。
落ち着かない様にもぞもぞと動いていたアキがようやく眠った様でほっと息をつく。先ほどまでのやり取りを通話越しに聞いていた2人とのチャットのやり取りを眺める。アキの自傷まがいの行為に、2人とも動揺しているのが文字だけでもみてとれた。
『すこし、兄の方の様子も見てみてから動くしかないかな…』
山田の言葉に肯定を返す。正直アキから状況を聞き出すのはかなり本人の精神的にも危ういだろう。とはいえ元のほうもかなり不安定だ。ショックなどですぐに体調に変化が生まれるタイプだから。
この状態で話を聞き出せそうな奴が1人しか思いつかなくて顔をしかめる。健斗、とアキが言うたびにその態度に違和感を覚えていたからだ。まるで怯えているような視線の動きは、ただの元彼に対する態度ではない、と思う。
生徒は平等に見るべきだとは頭では理解している。だから、これはあくまで自分の勝手な感情だ。
『アキくんは寝た?』
『さっきようやく。あまり寝たくなさそうだったけどな』
『そっかー…体調あんまり戻らなかったら実家療養、って……今の調子じゃそういうわけにもねぇ』
『そりゃやれはするけど真奈美の話からすれば落ち着いて療養なんてできそうな気はしないよな』
大丈夫、が口癖になってるくらいだ。家にいても心が休まるどころかなにかしらのプレッシャーがあるのだろう。
それからもすこし話すが情報の少ない今は中々作戦と呼べる様なものも立てられず、とにかく一時預かりという形を押し通すこととした。兄のほうには、先に健斗に話して健斗経由で伝えた方がショックも和らぐのではないかと結論づける。
2人に礼を言ってパソコンを落とすと、ソファから微かに声が聞こえた。
「…ん…にいさ…」
近づいて覗き込むと、眉をぎゅっと顰めて眠っているアキの顔が目に入る。綺麗系というにふさわしい顔をしたアキは寝ていればあどけない顔になるようだと日中に知ったが、この表情はあまりにも苦しげだった。
「に、さん……大丈夫……」
「おい、夢の中でも大丈夫が口癖かよ」
ポツリと突っ込めば、アキはそれに反応したかの様にさらに眉をしかめた。かるく頭を撫でてからアキの体を抱き上げる。コツさえ分かっていれば男子高生の体だってそんなに持ち上げるのも難しくはない。
風呂場で見えた体にはきちんと筋肉は付いていたものの、不健康に痩せた跡が見えた。既に筋肉は以前よりも無くなってしまっているかもしれない。
それでも自傷の痕がないことにすこし安心したのは事実だ。今ないということが、これから先も彼が自傷行為をしないという事だとは限らないが。
なによりフラッシュバックなどはいっぱいいっぱいの時よりも少しだけ辺りを見渡すことができる様になった時に襲ってくることも多い。生活に必死の時よりも、考える時間が生まれるから。
ベッドにアキを寝かせて毛布をかけるとアキはそれにすり寄った。その仕草を見て可愛い、と思ったのはなぜだろう。
それから暫く様子を見ていたが眉間のしわは消えないもののそこまでうなされる様子もないので寝室を後にする。今日は俺がソファで眠ろう。
明日早く起きて飯作らないとな、そんな呑気なことを考えながら自分もまたゆっくりと眠りについた。
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