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第一部
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スマホの通知の音で目が覚めた。いい匂いがする…
「お、ちょうど出来たぞー」
先生の声で体を起こす。また寝ちゃった…
「さっきからスマホなっててな、起こすか迷ったんだが」
言われてスリープモードを解除すると、ラインがはいってる。その名前に気持ちが暗くなる。
『今日は帰ってくる?』
『健斗がいるから僕の部屋には入らないで』
『友達のところに泊まるの?』
兄さんからのラインがいくつも来てる。先生が器をこちらへ運びながら僕を見た。
「どうした?」
「…いえ、兄さんから今日は帰るのかって…」
「心配されてるんだな」
心配。それはどんな意味での心配なんだろう。兄さんは優しいから、僕が雨の中でどこに行っているのか不安になったのかもしれない。
それとも、雨だからと言い訳して帰ってくるのが嫌なのか。
好意的に解釈して返事を寄こそうかとも思ったけど、まだ向き合う覚悟はなくて見なかったふりをして電源を落とした。
「待たせてしまってすみません」
先生の持って来てくれたご飯はネギや卵の入ったスープの中にそうめんがはいってる。
「ん?ああ食欲なくてもそうめんとかなら食べやすいだろう」
「はい、おいしそう」
先生は僕が投げ出したスマホをちらっと見た。
「返事、しなくていいのか?」
「…い、いいんです」
そう答えてふっと先生が帰らせたいと思っているんだということを思いついた。そもそも先生がここまで僕の面倒を見る義理はない。やっぱり口でなんと言ってくれても迷惑なのは変わらないよな…
「おい、また面倒なこと考えてるだろ。気にしなくていいからしっかり食べろ」
お茶を注いで渡してくれる。先生は大人だ。こんな生徒にまで世話を焼くんだから。
そこで話は終了、というように先生が食べ始めてしまったので、仕方なく僕も箸をつける。
今日は昼もあまり食欲がなかったので菓子パンを少し食べたくらいだった。体は想像よりも食べ物を欲していたようで食べ始めるとすぐにそれに夢中になった。
「はは、お前おいしそうに食べるな」
笑われて恥ずかしくなる。顔が火照っているのを感じたけどやはり美味しくて箸は止まらない。
「おいしいです…」
小さく答えると、先生は嬉しそうに笑ってくれた。
お代わりは流石に無理だったけど、寝て、ご飯も食べて、きちんとした部屋にいて、なんだかすごく満たされた気持ちになる。
食べ終わると、洗い物はさせて欲しいと伝えてキッチンを借りる。しっかりと自炊してる人のキッチンだ。今は使ってる人もいなさそうな自室のキッチンを思い浮かべて少し寂しくなる。
先生はその間にお風呂に入ったようで、洗い物が終わってリビングに戻るとソファに座っていた。
「ありがとな」
そう言って隣に座るように促される。一瞬困ったけど隣に座れば、先生は何気ない感じで僕に話しかけた。
「なぁ、最近の噂について教えてくれないか」
「お、ちょうど出来たぞー」
先生の声で体を起こす。また寝ちゃった…
「さっきからスマホなっててな、起こすか迷ったんだが」
言われてスリープモードを解除すると、ラインがはいってる。その名前に気持ちが暗くなる。
『今日は帰ってくる?』
『健斗がいるから僕の部屋には入らないで』
『友達のところに泊まるの?』
兄さんからのラインがいくつも来てる。先生が器をこちらへ運びながら僕を見た。
「どうした?」
「…いえ、兄さんから今日は帰るのかって…」
「心配されてるんだな」
心配。それはどんな意味での心配なんだろう。兄さんは優しいから、僕が雨の中でどこに行っているのか不安になったのかもしれない。
それとも、雨だからと言い訳して帰ってくるのが嫌なのか。
好意的に解釈して返事を寄こそうかとも思ったけど、まだ向き合う覚悟はなくて見なかったふりをして電源を落とした。
「待たせてしまってすみません」
先生の持って来てくれたご飯はネギや卵の入ったスープの中にそうめんがはいってる。
「ん?ああ食欲なくてもそうめんとかなら食べやすいだろう」
「はい、おいしそう」
先生は僕が投げ出したスマホをちらっと見た。
「返事、しなくていいのか?」
「…い、いいんです」
そう答えてふっと先生が帰らせたいと思っているんだということを思いついた。そもそも先生がここまで僕の面倒を見る義理はない。やっぱり口でなんと言ってくれても迷惑なのは変わらないよな…
「おい、また面倒なこと考えてるだろ。気にしなくていいからしっかり食べろ」
お茶を注いで渡してくれる。先生は大人だ。こんな生徒にまで世話を焼くんだから。
そこで話は終了、というように先生が食べ始めてしまったので、仕方なく僕も箸をつける。
今日は昼もあまり食欲がなかったので菓子パンを少し食べたくらいだった。体は想像よりも食べ物を欲していたようで食べ始めるとすぐにそれに夢中になった。
「はは、お前おいしそうに食べるな」
笑われて恥ずかしくなる。顔が火照っているのを感じたけどやはり美味しくて箸は止まらない。
「おいしいです…」
小さく答えると、先生は嬉しそうに笑ってくれた。
お代わりは流石に無理だったけど、寝て、ご飯も食べて、きちんとした部屋にいて、なんだかすごく満たされた気持ちになる。
食べ終わると、洗い物はさせて欲しいと伝えてキッチンを借りる。しっかりと自炊してる人のキッチンだ。今は使ってる人もいなさそうな自室のキッチンを思い浮かべて少し寂しくなる。
先生はその間にお風呂に入ったようで、洗い物が終わってリビングに戻るとソファに座っていた。
「ありがとな」
そう言って隣に座るように促される。一瞬困ったけど隣に座れば、先生は何気ない感じで僕に話しかけた。
「なぁ、最近の噂について教えてくれないか」
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