つよくてもろい君たちへ

そうな

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第一部

否定

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side:アキ

「あっ」


 小さく呟いて、衝撃に備えて目を瞑る。でも、それはいつまでもこなかった。

 うっすらと目を開けると、慌てた顔をした先生が目の前にいて、腕で抱きかかえられるようになっていた。また、助けられたのか。

「お前な!そんなフラフラな状態、走ったら倒れるに決まってんだろ!」

 怒鳴るように言われて体が自然と硬直してしまう。それに気づいたのか先生はまたため息をついて僕を椅子に座らせた。
 

「部屋に帰りたくないのか」
 そう聞かれて思わずうつむく。
「お前自分が体調悪いってわかってるよな」
「でも…大丈夫です」
「なにが?大丈夫じゃないだろ」

 真っ向からこうも大丈夫じゃないと言われると頭が真っ白になる。本当に、僕は大丈夫なのに。そう言いたくてもまた否定されるのかと思うと口籠ってしまう。
 それを見て、どう思ったのか先生は僕の頭を撫でた。
「なあ、帰りたくないならなんとかしてやるから無理はしないでくれよ」

 なんとか?

 引っかかったその言葉に顔を上げると、先生は困ったような笑顔を浮かべていた。
「体調も悪そうだし、養護教諭の部屋で要観察ってことにしてやるよ」
「…べつに…」
「大丈夫とかそれ以上言ったら本気で怒るぞ?お前前より相当やつれてる」
 それは自覚してたからなにも言えない。うまく食事ができなくて、有紀が心配する昼ごはんくらいしかまともに食べてない。あとはお腹が空いたら食べるか、食べても戻してしまうようになった。
「でも、迷惑じゃ」
「は?ここでお前放置して保護責任違反とかでクビになる方が困るわ」
 それももっともだ。先生の仕事だし。

 でもどうしたらいいかわからなくてまた視線を彷徨わせていると、段々と視界がぼやけてくる。そういえば、昨日の夜は暑くてあまり寝てなかったっけ。今夜は雨が降ったし涼しいだろうか?
 回らなくなってきた頭でそう思い出すと眠気が一気に襲ってくる。
「そうしたら俺ももうすぐ準備するから少し待ってろ」
 そう言われたのは分かったが、うまく返事もできない。先生は気にせずカバンの用意を始めてしまったので、ぼうっとしていると頭が段々前のめりになる。
 だめだ、と思ったけど三大欲求には抗えず、ゆっくりと瞼を閉じてしまった。
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