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天女編
第五十八話 兆し
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「そういえばはるか、最近あの男の子たちは来てる?」
ふとはるかの母、のぞみがはるかに尋ねる。
「あ、一くんたちのこと?よく来てくれてるよ!」
「そう、よかったわ。」
「なんで?」
「学校にいるときに比べて、お友だちと会う時間が少ないでしょ?だから、寂しい思いをしてないかと思って…」
のぞみが少し暗い表情で話す。
「うーん…。先生はもう大分落ち着いてるから、そろそろ退院してもいいんじゃないかって言ってたよ」
「あら、そうなの!そうしたら学校に行ける日も近そうね!」
今度は明るい表情になった。どうやらのぞみははるかになるべくはやく復学してほしいようだ。ただでさえ芸能活動で忙しく、なかなか学校で勉強する機会のなかったはるかが、周囲の友達からも勉強からもおいていかれるのではと気にかけているようだ。
「そうだね!私もはやく学校へ行きたいな…でも、まだ…」
はるかが何かいいかけたとき、のぞみがはっと席を立った。
「いけない!今日この後仕事入ってたんだわ!ごめんなさいはるか!私、行くわね!また近いうちにお見舞いに来るわ!」
あわただしくのぞみが出ていった。一人ぼっちになったはるかは、突如過呼吸になる。
「(まただ…)」
実ははるかの具合はあまりよくなっていなかった。のぞみや一だけでなく、医師にも気づかれていないが、辛かったときのことをふと思い出し、過呼吸になったり、頭痛や吐き気を催すなどの症状が出ていた。夜、寝ている間も悪夢を見て、なかなか寝付けない日々が続いていた。一応薬も服用しているが、どうやらあまり効いていないほどひどいらしい。鬱のような症状も自覚している。
「(あ、まずい…意識が…)」
はるかは意識を失い、ベッドから転がり落ちた。
「キャー!!!」
幸いすぐに看護師に発見された。急いで他のスタッフたちがやって来る。それから神谷たちが駆け込んでくる。
「どうしましたか?!」
警察手帳片手に神谷が病室に入り込んでくる。遅れて一たちもやって来る。
「あ、それが入院している患者さんが突然倒れてしまって…」
神谷が目をやった先にはるかが倒れていた。一と彰悟もそれを確認する。
「はるか?!」
一が思わず呼び掛ける。するとはるかが意識を取り戻した。
「あ…看護師さんに先生まで…あれ?神谷さんや一くんたちまで…」
どうやら状況がよくわかっていないらしい。
「突然意識を失ってベッドから落ちたのよ。大丈夫?どこか痛かったりしない?」
看護師が問いかける。
「あ…多分貧血です…お騒がせしました…」
とは言っても明らかに顔色が悪い。
「…一応診察しましょうか。すみませんが刑事さんと…いつもお見舞いに来てくれてる友達だね、皆さんはお引き取り下さい。お騒がせしました」
一礼したあと、医師がはるかを診察室まで連れていく。
「はるか大丈夫かな?」
彰悟が心配そうに呟く。
「…」
一は言葉が出てこなかった。
………
一たちは診療所の外に出て、各々帰路に向かう。
「君たちにはまだまだ怪しいところがあるね。今度じっくり話を聞きに行くよ」
そういって神谷たちは車に乗り込み、どこかへ去っていった。車が離れていくのを見送って、一と彰悟も歩きだす。
「危ないところだったな…あれ以上問い詰められてたらほんとにヤバかった…」
歩きながら彰悟がホッとしたように話す。
「…うん。だけど、疑いが強まったみたい…」
「あ、ごめん…俺がうまくごまかせなかったから…」
「いや、しょうがないよ」
「…」
しばらく二人の間に沈黙が生じる。
「なぁ、そういえばはるか大丈夫かな?」
「かなり気分が悪そうだったよね…まだ退院には時間がかかるのかな…」
「俺、なんか嫌な予感がする…このままはるかがどんどん俺たちから離れてっちゃうような…」
「やめてよ!そんな…」
一が珍しく声をあらげて怒りを露にする。
「…ごめん」
そのあと二人は一言もしゃべらないまま歩き続けた。
ふとはるかの母、のぞみがはるかに尋ねる。
「あ、一くんたちのこと?よく来てくれてるよ!」
「そう、よかったわ。」
「なんで?」
「学校にいるときに比べて、お友だちと会う時間が少ないでしょ?だから、寂しい思いをしてないかと思って…」
のぞみが少し暗い表情で話す。
「うーん…。先生はもう大分落ち着いてるから、そろそろ退院してもいいんじゃないかって言ってたよ」
「あら、そうなの!そうしたら学校に行ける日も近そうね!」
今度は明るい表情になった。どうやらのぞみははるかになるべくはやく復学してほしいようだ。ただでさえ芸能活動で忙しく、なかなか学校で勉強する機会のなかったはるかが、周囲の友達からも勉強からもおいていかれるのではと気にかけているようだ。
「そうだね!私もはやく学校へ行きたいな…でも、まだ…」
はるかが何かいいかけたとき、のぞみがはっと席を立った。
「いけない!今日この後仕事入ってたんだわ!ごめんなさいはるか!私、行くわね!また近いうちにお見舞いに来るわ!」
あわただしくのぞみが出ていった。一人ぼっちになったはるかは、突如過呼吸になる。
「(まただ…)」
実ははるかの具合はあまりよくなっていなかった。のぞみや一だけでなく、医師にも気づかれていないが、辛かったときのことをふと思い出し、過呼吸になったり、頭痛や吐き気を催すなどの症状が出ていた。夜、寝ている間も悪夢を見て、なかなか寝付けない日々が続いていた。一応薬も服用しているが、どうやらあまり効いていないほどひどいらしい。鬱のような症状も自覚している。
「(あ、まずい…意識が…)」
はるかは意識を失い、ベッドから転がり落ちた。
「キャー!!!」
幸いすぐに看護師に発見された。急いで他のスタッフたちがやって来る。それから神谷たちが駆け込んでくる。
「どうしましたか?!」
警察手帳片手に神谷が病室に入り込んでくる。遅れて一たちもやって来る。
「あ、それが入院している患者さんが突然倒れてしまって…」
神谷が目をやった先にはるかが倒れていた。一と彰悟もそれを確認する。
「はるか?!」
一が思わず呼び掛ける。するとはるかが意識を取り戻した。
「あ…看護師さんに先生まで…あれ?神谷さんや一くんたちまで…」
どうやら状況がよくわかっていないらしい。
「突然意識を失ってベッドから落ちたのよ。大丈夫?どこか痛かったりしない?」
看護師が問いかける。
「あ…多分貧血です…お騒がせしました…」
とは言っても明らかに顔色が悪い。
「…一応診察しましょうか。すみませんが刑事さんと…いつもお見舞いに来てくれてる友達だね、皆さんはお引き取り下さい。お騒がせしました」
一礼したあと、医師がはるかを診察室まで連れていく。
「はるか大丈夫かな?」
彰悟が心配そうに呟く。
「…」
一は言葉が出てこなかった。
………
一たちは診療所の外に出て、各々帰路に向かう。
「君たちにはまだまだ怪しいところがあるね。今度じっくり話を聞きに行くよ」
そういって神谷たちは車に乗り込み、どこかへ去っていった。車が離れていくのを見送って、一と彰悟も歩きだす。
「危ないところだったな…あれ以上問い詰められてたらほんとにヤバかった…」
歩きながら彰悟がホッとしたように話す。
「…うん。だけど、疑いが強まったみたい…」
「あ、ごめん…俺がうまくごまかせなかったから…」
「いや、しょうがないよ」
「…」
しばらく二人の間に沈黙が生じる。
「なぁ、そういえばはるか大丈夫かな?」
「かなり気分が悪そうだったよね…まだ退院には時間がかかるのかな…」
「俺、なんか嫌な予感がする…このままはるかがどんどん俺たちから離れてっちゃうような…」
「やめてよ!そんな…」
一が珍しく声をあらげて怒りを露にする。
「…ごめん」
そのあと二人は一言もしゃべらないまま歩き続けた。
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