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天女編
第五十八話 痕跡
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「神谷さん、そういえば根本さんに頼んでた例の件どうだったんですか?」
夜が明け、署にやってきたさくらに早速聞かれた。本当のことを答えるべきか、伏せるべきか悩んだ結果、神谷は真実を話すことにした。
………
「そんなことが…一体どうなってるんでしょうか…」
「俺も訳わかんねぇよ…」
二人の間に沈黙が続いたあと、さくらがあることに気づく。
「あれ?そういえば私たちもともと彰悟くんたちと事件との関連性を疑ってあのビルに行ったんですよね?その謎の傷痕と彰悟くんたちが関係してるって証拠は見つかったんですか?」
「あっそういやすっかりそっちを聞くの忘れてたわ」
神谷は傷痕を意識しすぎていて珍しく本来の目的を忘れていた。
「もう一度根本くんのとこにいこう」
………
「(まずい!はやく一に相談しないと!)」
彰悟は急いで一のもとに向かった。教室の扉を勢いよく開けて、一に向かって一直線に突き進んでいく。
「うそでしょ…」
「それがどうやらほんとらしい…」
彰悟は一に神谷たちの動向を伝えた。
「やっぱりまずいよな…」
顔を真っ青にして焦る彰悟。
「いや、だけどまだ神谷さんたちにバレたと決まった訳じゃない。ディフェンダーと怪物の痕跡や目撃した人の記憶はうまいこと消えてるはずだから、もしかしたら今回も…」
内心一も不安で一杯だった…
………
「えーと、例の傷痕以外に関しては何種類かの指紋や血液などが採取できたんですけど、指紋の一つは矢本彰悟のものと一致してます。採取されたうち一部の血液のDNAはやはり神谷さんが採取してきた矢本彰悟の毛髪のDNAと一致しました。他の指紋や血液はおそらく矢本と一緒にいた高校生たちのものでしょう。痕跡の位置関係や傷の性質からして、何者かに切りつけられて流血したわけではなさそうです。血液の量も少なかったので喧嘩の最中に怪我してできたものでしょう。」
「傷痕と血液はそれぞれいつ頃できた?」
「比較的最近だと思うんですけど、なにせ傷痕はわからないことだらけで…」
「うーん、やっぱり彰悟くんたちちょっと怪しいですけど、これだけだと何か関係してるとは言い切れないですよね…」
「くそっ!」
神谷は苛立ちを募らせていた。
………
「神谷さんが何かアクションを起こすとしたらおそらくすぐに僕たちの前に現れるはずだ。最近ははるかにも接触してるようだから、もしかしたらはるかのところに行けば会えるかもしれない」
「そうだな…よし、放課後行ってみよう」
一と彰悟ははるかの診療所に行くことにした。案の定、診療所まであと少しというところで神谷とさくらの二人組に遭遇した。
「おっ!二人ともこれからはるかちゃんのとこ?」
苛立ちを隠して接触する神谷。さくらは彰悟たちに対して半信半疑というところだ。
「そうです。神谷さんたちもですか?」
「いや、俺たちは今日は君たちに用があってね」
「僕たちにですか?」
「そう、特に彰悟くん。君、以前末永くんて子達と廃ビルで喧嘩したでしょ?その時何か気になることなかった?」
「き、気になること?いえ…あのときは末永とその他何人かに囲まれて喧嘩の騒ぎで大変だったことくらいしか覚えてないです…」
「そう?その時誰かが刃物を使ったりは?」
「…いえ、みんな素手で戦ってました。」
「実はね、俺はちょっと気になって例の現場に行ってみたんだ」
「?!」
一と彰悟の表情が曇る。
「行ってみると壁やら床やらに刃物で切ったような傷痕が見つかってね。そうそう、その刃物で何者かが切られたときに出血してできたと思われる血痕があってね。その血痕のDNAと君のDNAが一致したんだよ。」
神谷は嘘をついた。彰悟に揺さぶりをかけるつもりだ。
「う、うそだ!そんなばかな…それに、そんだけの出血量だったら僕は死んでるはずですよ!」
「あれ?俺は刃物で切られたとしかいってないんだけどね。現場からはそんなに大量の血は採取されなかったんだけど…本当は君、大量に出血したの?」
「(まずい!)」
一はこのままでは神谷のペースにのまれる一方だと思った。ここは少し怪しくても逃れるべきだと思ったその時
「きゃあー!誰か!人を呼んで!」
はるかのクリニックから悲鳴が聞こえてきた。
「ちっ!行くぞさくらちゃん!彰悟くん、話はまた今度、じっくり聞かせて貰うよ!」
神谷とさくらはクリニックの中へ走り去って行った。
夜が明け、署にやってきたさくらに早速聞かれた。本当のことを答えるべきか、伏せるべきか悩んだ結果、神谷は真実を話すことにした。
………
「そんなことが…一体どうなってるんでしょうか…」
「俺も訳わかんねぇよ…」
二人の間に沈黙が続いたあと、さくらがあることに気づく。
「あれ?そういえば私たちもともと彰悟くんたちと事件との関連性を疑ってあのビルに行ったんですよね?その謎の傷痕と彰悟くんたちが関係してるって証拠は見つかったんですか?」
「あっそういやすっかりそっちを聞くの忘れてたわ」
神谷は傷痕を意識しすぎていて珍しく本来の目的を忘れていた。
「もう一度根本くんのとこにいこう」
………
「(まずい!はやく一に相談しないと!)」
彰悟は急いで一のもとに向かった。教室の扉を勢いよく開けて、一に向かって一直線に突き進んでいく。
「うそでしょ…」
「それがどうやらほんとらしい…」
彰悟は一に神谷たちの動向を伝えた。
「やっぱりまずいよな…」
顔を真っ青にして焦る彰悟。
「いや、だけどまだ神谷さんたちにバレたと決まった訳じゃない。ディフェンダーと怪物の痕跡や目撃した人の記憶はうまいこと消えてるはずだから、もしかしたら今回も…」
内心一も不安で一杯だった…
………
「えーと、例の傷痕以外に関しては何種類かの指紋や血液などが採取できたんですけど、指紋の一つは矢本彰悟のものと一致してます。採取されたうち一部の血液のDNAはやはり神谷さんが採取してきた矢本彰悟の毛髪のDNAと一致しました。他の指紋や血液はおそらく矢本と一緒にいた高校生たちのものでしょう。痕跡の位置関係や傷の性質からして、何者かに切りつけられて流血したわけではなさそうです。血液の量も少なかったので喧嘩の最中に怪我してできたものでしょう。」
「傷痕と血液はそれぞれいつ頃できた?」
「比較的最近だと思うんですけど、なにせ傷痕はわからないことだらけで…」
「うーん、やっぱり彰悟くんたちちょっと怪しいですけど、これだけだと何か関係してるとは言い切れないですよね…」
「くそっ!」
神谷は苛立ちを募らせていた。
………
「神谷さんが何かアクションを起こすとしたらおそらくすぐに僕たちの前に現れるはずだ。最近ははるかにも接触してるようだから、もしかしたらはるかのところに行けば会えるかもしれない」
「そうだな…よし、放課後行ってみよう」
一と彰悟ははるかの診療所に行くことにした。案の定、診療所まであと少しというところで神谷とさくらの二人組に遭遇した。
「おっ!二人ともこれからはるかちゃんのとこ?」
苛立ちを隠して接触する神谷。さくらは彰悟たちに対して半信半疑というところだ。
「そうです。神谷さんたちもですか?」
「いや、俺たちは今日は君たちに用があってね」
「僕たちにですか?」
「そう、特に彰悟くん。君、以前末永くんて子達と廃ビルで喧嘩したでしょ?その時何か気になることなかった?」
「き、気になること?いえ…あのときは末永とその他何人かに囲まれて喧嘩の騒ぎで大変だったことくらいしか覚えてないです…」
「そう?その時誰かが刃物を使ったりは?」
「…いえ、みんな素手で戦ってました。」
「実はね、俺はちょっと気になって例の現場に行ってみたんだ」
「?!」
一と彰悟の表情が曇る。
「行ってみると壁やら床やらに刃物で切ったような傷痕が見つかってね。そうそう、その刃物で何者かが切られたときに出血してできたと思われる血痕があってね。その血痕のDNAと君のDNAが一致したんだよ。」
神谷は嘘をついた。彰悟に揺さぶりをかけるつもりだ。
「う、うそだ!そんなばかな…それに、そんだけの出血量だったら僕は死んでるはずですよ!」
「あれ?俺は刃物で切られたとしかいってないんだけどね。現場からはそんなに大量の血は採取されなかったんだけど…本当は君、大量に出血したの?」
「(まずい!)」
一はこのままでは神谷のペースにのまれる一方だと思った。ここは少し怪しくても逃れるべきだと思ったその時
「きゃあー!誰か!人を呼んで!」
はるかのクリニックから悲鳴が聞こえてきた。
「ちっ!行くぞさくらちゃん!彰悟くん、話はまた今度、じっくり聞かせて貰うよ!」
神谷とさくらはクリニックの中へ走り去って行った。
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