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四百珊瑚

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天女編

第五十三話 出会い

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 「(一くん、今頃どうしてるかなぁ…)」

 はるかが病室でふとそんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。

 「はーい」

 「失礼します。こんにちは」

 桜だった。はるかとはこれが初対面だ。

 「?どちら様ですか?」

 「あ、私こういうものです」

 胸ポケットからそっと警察手帳を出す桜。

 「刑事さん?あの男はもう証拠が集まったはずじゃ…」

 はるかの表情が一気に曇るのがわかった。

 「あ、今日はそんなこと聞きに来たんじゃないの!」

 とっさに話題を変える桜。

 「お見舞いもかねて、別件でね」

 「別件?」

 「最近鳴神市でおかしな起こってる事件は知ってる?それについての情報を集めてるの」

 「おかしな事件?私、最近引っ越してきたからわからないです…そういえば今日の朝、公園に大量の瓦礫が散乱してる謎の事件が起こったってニュースはテレビで見ました」

 「そうそう、そういうのでなんか知ってること…無さそうだね。じゃあ、五代一くんと矢本彰悟くんのことで何か変わったことない?」

 「え、一くんたち?なんでですか?」

 「それが私の上司がちょっと一くんたちと顔見知りでね。最近元気かなぁって思って」

 「元気そうですよ。二人とも私が転校してきたときからずっと仲良さそうです。あ、でも…」

 「でも?」

 「一くんが言ってたんですけど、最近末永くんて子が突然一くんたちと仲良くなり始めたそうです」

 「末永くん?たしか事件の時に一緒にいた子だよね?神谷さんが事情聴取してたけど…」

 「刑事さんすみません、そろそろ…」

 回診にやってきた看護師に話しかけられた桜。どうやらこれ以上は迷惑がられそうだ。

 「あ、すみません、ついつい話が長くなりました…。ごめんね、はるかちゃん。一くんたちによろしく言っといて、じゃあ」

 桜はそう言いながら名刺をさっと渡して、はるかの病室を後にした。

………

 「どうだった?」

 診療所の外に停めていた車に乗り込んですぐさま、神谷に聞かれた。

 「だめです。やっぱり何も知りませんよ。どうしてあの子にこんなこと聞くんです?」

 「何となくな…。あと、見舞いもかねて、やっぱりあんな事件があって…気になるじゃん?」

 「それはそうですけど…」

 「他に気になったこととかは?」

 「うーん…強いて言うなら、一くんたち末永くんて子と仲良くなったらしいってことくらいしか…」

 「末永…?末永ってあの事件の時一緒にいた奴か」

 「えぇ多分。そのことを聞こうとしたところで看護師さんに入られて…」

 「そうか…ちょっとそいつのこと調べてみよう」

 「え?」

 「お!ちょうど来たぞ!」

 神谷に指差された方に目を向ける桜。するとその先には一と彰悟、そして末永がいた…。
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