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四百珊瑚

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激戦編

第五十二話 疲労

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 「や、やっと終わったな…」

 地べたに仰向けに寝転んだ彰悟が、疲れきった声で言った。

 「うん…さすがにすごい疲れた」

 数百体はいただろうが、次々に産み出される怪物を彰悟が倒し、一はビルを倒壊させるまでマグナムを撃ち込んだ。気がつくと黒い卵も粉々になっていた。

 『任務終了、ただちに帰還せよ』

 一と彰悟の脳内で声が響き渡る。

………

 「貴様らまだ捜査に進展がないのかぁ?!」

 会議室に怒号が響き渡る。

 「申し訳ございません…」

 特務課課長の加藤が深々と頭を下げる。

 「全く、これだから特務課は…」

 合同会議にて他の課の刑事や上官たちから責め立てられる特務課。やはり組織内での特務課の風当たりは厳しいらしい。

 「うちらのことを悪く言うわりにあなた方もなにもしてないじゃないですか」

 飄々とした態度で神谷が言う。

 「なんだと貴様ぁ!」

 「よせ!神谷!」

 会議室がさらに賑やかになる。危うく殴り合いの喧嘩が起こりそうになったところで特務課だけ会議室から追い出されることになった。

 「おい神谷!貴様また余計なことを!」

 「そうですよ神谷さん!」

 相変わらず加藤は神谷に対して怒り狂っている。それに加えて桜にまで責め立てられる神谷。

 「んまぁいいじゃないですか。どうせあんな会議に参加してたって時間の無駄でしょ。あの人たちだって何も一連の事件の手がかりつかんでないんだから。この前だって、芳野を捕まえたのは俺たちなのに、取調室に割り込んできやがって…」

 あれからはるかの父、芳野は捜査一課の手に渡ってしまった。有名アイドルの父親にして芸能事務所社長を摘発する手柄を横取りしたいらしく、かなり強引に捜査に割って入られた。

 「貴様!まだ言うか!」

 「課長があんな弱腰だから舐められるんでしょ!」

 睨み付け合う加藤と神谷。見かねた桜が神谷を文字通り引っ張って新たな事件の聞き込みに出た。

 「あの男は本当に手のかかる男だ…」

 深いためいきをつく加藤であった。

………

 「にしてもなんでこんなところに瓦礫の山が…」

 神谷たちは、昨夜一と彰悟が激戦を繰り広げた公園に来ていた。

 「やはり目撃者は誰もいませんね…。これも鳴神野球場事件から続く怪事件と同じ犯人の仕業でしょうか…」

 「わからないねぇなぁ…にしてもこんなことして何になるのかね。こんなことする奴等の目的ってなんだ?」

 「…さぁ。テロ、とか…」

 「それくらいしか思い付かないよなぁ…だけどテロにしては行動範囲が鳴神市内と限定的な上に、犯人が自分達の存在をアピールすることもなければ、なぜこんなことをやるのか目的を言ったりもしてこない…ただのテロではないよな。何か…」

 「うーん…」

 神谷たちの捜査は難航していた。
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