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四百珊瑚

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激戦編

第四十七話 夏休み

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 はるかが入院して1ヶ月ほどが経つ。あと数週間で夏休みが始まるが、はるかが学校に出てこれる様子はない。学期末のテストが終わり、生徒は皆安心しきった様子であったが、一ははるかのことをずっと心配に思っていた。
 「どうした?」
 思い悩んでいるのがよほど顔に表れていたのか、彰悟が声をかけてきた。
 「ん?あぁ、なんでもないよ。」
 とっさに何でもないフリをした。未だに一以外のクラスメイトたちははるかが入院していることを知らない。
 「ほんとにそうか?やっぱはるかが気になるんじゃないか?」
 「たしかに少し気になるけど、仕事だからしょうがないよ。」
 半分自分に言い聞かせるように言った。
 「んでも最近テレビに出たりしてねぇよなぁ。一は今のはるかの状況知ってんのか?」
 「僕も知らない。」
 「そうか。電話とかしてみるか?」
 彰悟が制服のポケットからケータイを取り出した。
 「かけても繋がらないんじゃないかな?」
 「そうだとしても、留守電だけでもいれとくわ。」
 そういって彰悟ははるかに電話を掛けた。やはりはるかは電話に出ない。彰悟は、留守電に簡単な挨拶と、近況報告をしてほしいとの旨を残して電話を切った。
 「んじゃ、帰るか。」
 「うん。」
 そのまま僕たちは帰路に着いた。末永も合流して、学校近くの公園の真ん中を貫く、駅へと続く道を三人で歩いた。7月とは言え気温は30度を越えており、暑さにやられて道の途中で脇にあるベンチに腰掛け、自動販売機で買ったジュースを片手に三人で話し始めた。
 「そういえばテストの調子はどうだった?」
 唐突に彰悟がテストの話題をしだした。
 「僕はまぁまぁできたよ。ただ、相変わらず金子先生の世界史は難しかったな。」
 「俺もそう思う。世界史以外は結構自身あるんだけどな。」
 「そうかぁ。やっぱお前ら頭いいんだな。」
 「「いや、この中で一番頭いいの彰悟だろ!」」
 僕と末永のツッコミがハモった。僕たち三人は顔を合わせて一瞬の間のあとに一斉に笑い出した。そうなのだ、意外(?)にもこの三人のなかで一番成績がいいのは彰悟だ。
 「折角だからさ、夏休みにはいったらはるかに勉強教えにいかね?一はあいつの家知ってるか?」
 彰悟はまた唐突に言い出す。おそらく、テストの話題もはなからこのために用意したものだったのだろう。おそらく彰悟も一と同じくらいはるかのことを心配しているのだろう。
 「ごめん、知らない。」
 しかし一は本当のことを話すことをしなかった。はるかは入院しており、おそらく自分も知らない複雑な事情があるのだろうと察していた。彰悟には悪いが、彰悟に本当のことを言うことが今はできない。
 「そうか…。仕方ない。気長に待つか。」
 「芳野休み始めてから長いよな。最後に会ったときも体調悪そうだったし…。無理してないといいな。」
 末永も同じく気にかけているようだった。
 「夏休みに入ったら、少しは時間できるかな。そしたら、四人でどこかに遊びにいきたいな。」
 「いいね!絶対行こう!」
 彰悟と末永は今後のことを前向きに、楽しみに計画していた。しかし、この時僕は得たいの知れない不安に包まれていた。そして、
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