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救出編
第四十四話 怒髪天
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時速50kmほどの速度が出ている車のフロントガラスに跳び蹴りをした神谷。
「うわぁっ?!」
思わず男が叫ぶ。神谷は、天性の運動神経を駆使して、見事にフロントガラスだけを蹴りでぶち破りつつ、ボンネットに手を突いて、その反動で空中に跳び、ルーフの上に飛び乗った。車は停止した。
「な、なんだ?!」
男は慌てふためき、シートベルトを外して逃走しようとする。神谷は男がドアを開けた直後に、ルーフから飛び降りて男の前に立った。
「き、貴様刑事か?!金ならやるから見逃せ!」
神谷は表情ひとつ変えず、男を思い切り殴り飛ばした。
「ぐはっ?!」
男は数メートル吹き飛んだところで地べたにへばりついた。
その直後、神谷は後部座席のドアを開け、はるかに問いかける。
「大丈夫か?しっかりしろ!」
「…ん。私なら、大丈夫です…。ちょっとスタンガンで襲われたんですけど、それ意外は特に…。」
はるかの命に別状は無さそうだと判断した神谷は、再び男のもとに近づいていく。
「な、なんだ?!やめてくれ!これ以上殴られたら死んでしまう!」
男はしりもちをつきながら後ずさる。
「じゃあ死ねよクソ野郎!てめぇの娘、泣かせてんじゃねぇよ!」
そう言いながら拳を振り上げた神谷。思わず目を瞑る男。
「(こ、殺される!)」
男がそう覚悟したそのとき、
「神谷さん何やってるんですか?!やめてください!」
桜の声が聞こえた。はっと我に帰る神谷。そして桜は神谷に近づいた。
パンッ!
と桜が神谷の顔を叩いた。
「何やってるんですか神谷さん!こんなことしたら、神谷さんまでこんな男と同類になっちゃうんですよ?!」
そう言って桜は号泣しながら神谷に抱きついた。
「…ごめんよ。桜ちゃん…。でも、どうしてここに…?」
「だって案の定神谷さんこんな状況で暴走してるじゃないですか!だからこうして止めに来てあげたんですよ!神谷さんの世話をするのは相棒である私の役目ですよ!」
鼻水をすすりながら桜が怒鳴る。
「ありがとう。」
そう言って神谷もそっと桜のことを抱き締めた。そして、その直後、いいところにサイレンを鳴らしたパトカーがやって来た。
「ん、んんー。」
パトカーから降りてきた加藤がわざとらしく咳払いをする。
「お取り込みのところすまんね。」
さっと桜が神谷から距離をとる。
「23時15分、公務執行妨害の容疑で芳野俊也、あなたを逮捕します。」
加藤によって、ついに男の手に手錠がかけられた。
「あ、神谷さん!」
遅れて一と彰悟、そして末永が到着する。
「あぁ、君たちもご協力ありがとう!感謝するよ!えーと、そっちの子は?ていうか彰悟くんとそっちの子、ケガしてないか?」
神谷が末永のことと彰悟たちのケガのことを尋ねる。
「あ、こいつは末永って言ってさっきまで俺と喧嘩してたんすけど、仲直りしてはるかの捜索に協力してくれたやつです!はるかがここにいるって情報も、こいつが教えてくれたんです!」
彰悟が末永を紹介する。末永は、神谷に軽く礼をした。神谷も
「なんかめちゃくちゃ話が盛り込まれてるねぇ…。まぁ、それはよかった。ありがとう。」
と返事をした。
「そういえばはるかは?はるかは無事なんですか?事件に巻き込まれたって一体…?」
明らかに慌てている様子の一が神谷に問いかける。
「大丈夫。落ち着いてくれ。彼女はそこの車の後部座席で横になってるよ。事件の詳しいことは…そうだな、また後日、彼女が話す気になったら話すとしよう。」
そう言うと神谷は一から目をそらした。それを聞いて、一たちは車に近づく。後部座席を覗くと、そこには疲弊しきってはるかが横たわっていた。
「はるか!」
一は叫んだ。
「あ、一くん…。」
一を見て、安心したせいか涙がこぼれるはるか。
「おい!大丈夫?はるか?!」
「あれ?私、なんで泣いてるの?刑事さんが助けてくれたんだよね?なのになんで…。えへへ。」
はるかは涙を流しながら笑ってみせた。そして、一にあることを聞く。
「一くん。」
「ん、なに?」
「抱きしめてもいい?」
「…え?」
一が許可を出す前に、はるかは一の背中に手を回した。思わず一もはるかの背中に手を回す。二人は互いの熱を感じた。温かかった。そして、はるかと同じく、一も泣きながら微笑んだ。後ろでは
「ひゅーひゅー!」
と囃し立てる彰悟と末永、そして今後この事件をどう処理していくかを緊迫した空気のなかで相談する神谷や加藤たちがいた…。
「うわぁっ?!」
思わず男が叫ぶ。神谷は、天性の運動神経を駆使して、見事にフロントガラスだけを蹴りでぶち破りつつ、ボンネットに手を突いて、その反動で空中に跳び、ルーフの上に飛び乗った。車は停止した。
「な、なんだ?!」
男は慌てふためき、シートベルトを外して逃走しようとする。神谷は男がドアを開けた直後に、ルーフから飛び降りて男の前に立った。
「き、貴様刑事か?!金ならやるから見逃せ!」
神谷は表情ひとつ変えず、男を思い切り殴り飛ばした。
「ぐはっ?!」
男は数メートル吹き飛んだところで地べたにへばりついた。
その直後、神谷は後部座席のドアを開け、はるかに問いかける。
「大丈夫か?しっかりしろ!」
「…ん。私なら、大丈夫です…。ちょっとスタンガンで襲われたんですけど、それ意外は特に…。」
はるかの命に別状は無さそうだと判断した神谷は、再び男のもとに近づいていく。
「な、なんだ?!やめてくれ!これ以上殴られたら死んでしまう!」
男はしりもちをつきながら後ずさる。
「じゃあ死ねよクソ野郎!てめぇの娘、泣かせてんじゃねぇよ!」
そう言いながら拳を振り上げた神谷。思わず目を瞑る男。
「(こ、殺される!)」
男がそう覚悟したそのとき、
「神谷さん何やってるんですか?!やめてください!」
桜の声が聞こえた。はっと我に帰る神谷。そして桜は神谷に近づいた。
パンッ!
と桜が神谷の顔を叩いた。
「何やってるんですか神谷さん!こんなことしたら、神谷さんまでこんな男と同類になっちゃうんですよ?!」
そう言って桜は号泣しながら神谷に抱きついた。
「…ごめんよ。桜ちゃん…。でも、どうしてここに…?」
「だって案の定神谷さんこんな状況で暴走してるじゃないですか!だからこうして止めに来てあげたんですよ!神谷さんの世話をするのは相棒である私の役目ですよ!」
鼻水をすすりながら桜が怒鳴る。
「ありがとう。」
そう言って神谷もそっと桜のことを抱き締めた。そして、その直後、いいところにサイレンを鳴らしたパトカーがやって来た。
「ん、んんー。」
パトカーから降りてきた加藤がわざとらしく咳払いをする。
「お取り込みのところすまんね。」
さっと桜が神谷から距離をとる。
「23時15分、公務執行妨害の容疑で芳野俊也、あなたを逮捕します。」
加藤によって、ついに男の手に手錠がかけられた。
「あ、神谷さん!」
遅れて一と彰悟、そして末永が到着する。
「あぁ、君たちもご協力ありがとう!感謝するよ!えーと、そっちの子は?ていうか彰悟くんとそっちの子、ケガしてないか?」
神谷が末永のことと彰悟たちのケガのことを尋ねる。
「あ、こいつは末永って言ってさっきまで俺と喧嘩してたんすけど、仲直りしてはるかの捜索に協力してくれたやつです!はるかがここにいるって情報も、こいつが教えてくれたんです!」
彰悟が末永を紹介する。末永は、神谷に軽く礼をした。神谷も
「なんかめちゃくちゃ話が盛り込まれてるねぇ…。まぁ、それはよかった。ありがとう。」
と返事をした。
「そういえばはるかは?はるかは無事なんですか?事件に巻き込まれたって一体…?」
明らかに慌てている様子の一が神谷に問いかける。
「大丈夫。落ち着いてくれ。彼女はそこの車の後部座席で横になってるよ。事件の詳しいことは…そうだな、また後日、彼女が話す気になったら話すとしよう。」
そう言うと神谷は一から目をそらした。それを聞いて、一たちは車に近づく。後部座席を覗くと、そこには疲弊しきってはるかが横たわっていた。
「はるか!」
一は叫んだ。
「あ、一くん…。」
一を見て、安心したせいか涙がこぼれるはるか。
「おい!大丈夫?はるか?!」
「あれ?私、なんで泣いてるの?刑事さんが助けてくれたんだよね?なのになんで…。えへへ。」
はるかは涙を流しながら笑ってみせた。そして、一にあることを聞く。
「一くん。」
「ん、なに?」
「抱きしめてもいい?」
「…え?」
一が許可を出す前に、はるかは一の背中に手を回した。思わず一もはるかの背中に手を回す。二人は互いの熱を感じた。温かかった。そして、はるかと同じく、一も泣きながら微笑んだ。後ろでは
「ひゅーひゅー!」
と囃し立てる彰悟と末永、そして今後この事件をどう処理していくかを緊迫した空気のなかで相談する神谷や加藤たちがいた…。
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