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救出編
第四十一話 行くところ、帰るところ
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はるかは電車に乗っていた。はるかを乗せた電車は環状線状の路線を走り続けていた。
「(私、これからどうしよう。)」
現実の世界と夢の世界の狭間のような意識のなか、はるかはずっとそんなことを考えていた。義父からの性的虐待は想像以上にはるかの心身を蝕んでいた。しかも、その事が母や世間の人々に訴えれば、はるかは芸能活動を辞め、父親の仕返しに怯えながらひっそりと生きていくことを余儀なくされる。はるかはどうすることもできなかった。このまま電車に乗って現実逃避をし続けているわけにもいかない。もう電車の本数も少なくなってきた。しかし、行くあてもなければ帰る場所もない、いや帰りたくない。
「(そうだ、死んじゃえばいいんだ。)」
はるかの思考は遂に究極の選択にたどり着いてしまった。
「(だけど、どこで、どうやって死のう…。)」
はるかはその思考を実行に移そうとしていた。
「御乗車ありがとうございましたー、次はー、終点鳴神駅ー、鳴神駅ー、お乗りのお客様は…」
独特のイントネーションの車掌のアナウンスが、旅の終わりを告げる。電車が停車して、はるかは下車した。
………
彰悟は、気がつくと廃ビルで寝転がっていた。
「(あれ?俺、そういえばあのあと生き返ってそれで…)」
「どうした彰悟?」
呼ばれた方を振り向くと末永が寝転がっていた。
「どうしたんだよ?なんか様子が変だぞ?」
「お前、なんともないのか?怪物のこと、覚えてないのか?」
「なんともないってそんなことねぇよ!お前に殴られたとこめっちゃ痛いぞ!怪物?お前、自分のこと怪物みたいに強いって言いたいのか?(笑)」
どうやら末永は怪物に襲われたことを忘れているらしかった。彰悟が目覚めたばかりで混乱していると、ケータイが鳴った。
「はい、もしもし。一か?」
「彰悟!悪いんだけどはるかを探すのを手伝ってくれ!はるかが事件に巻き込まれている可能性があるらしいんだ!」
「なんだって?!どういうことだよ?!訳わかんねぇぞ!」
「今、説明してる暇はないんだ!とにかくはるかを探してくれ!見つけたら神谷さんに連絡して、はるかを保護して欲しい!じゃあ、切るぞ!」
そう言って電話は切れた。彰悟は次々と起こる異常事態に混乱し続けていた。
「どうした?五代からか?」
「…正直俺も何が何だか訳がわからないが、はるかが、芳野はるかの身が危ないらしい。悪いが俺と一緒に探してくれないか?末永。」
「なんだって?!わかった、お前には借りを作ってしまったからな。罪滅ぼしがてら手伝ってやるよ!」
意外にも末永はもう改心しきっていた。
「ありがとう!お前がいてくれると頼もしい!悪いがお前の友達にも協力を仰いでもらえないか?」
「おう!全然いいけど、俺の友達より親父の方が頼りになると思うぜ!ちょっくら連絡してみるわ!」
末永は、末永の父親に電話を掛けた。
「あ、もしもし親父?忙しいところごめん、ちょっと友達が困っててさぁ、親父の力を借りたいんだけど…」
「(あれ?そういえば末永の父親って何者だ?)」
彰悟がそんな疑問を抱く傍ら、末永はそれから数十秒ほど電話をしていた。
「お、ありがとう親父!じゃあ切るわ!」
末永は会話を終え、そして彰悟に衝撃のことを伝える。
「ついさっき鳴神駅にいたらしいぜ。」
「え?!ほんとかよ?!お前のお父さんて一体何者なんだ?!」
「んなこといいからさっさと行こうぜ!」
そう言って末永は、彰悟の手を引っ張り、走り出した。
「(今日は一体何て日だ…。)」
彰悟はますます混乱した。
「(私、これからどうしよう。)」
現実の世界と夢の世界の狭間のような意識のなか、はるかはずっとそんなことを考えていた。義父からの性的虐待は想像以上にはるかの心身を蝕んでいた。しかも、その事が母や世間の人々に訴えれば、はるかは芸能活動を辞め、父親の仕返しに怯えながらひっそりと生きていくことを余儀なくされる。はるかはどうすることもできなかった。このまま電車に乗って現実逃避をし続けているわけにもいかない。もう電車の本数も少なくなってきた。しかし、行くあてもなければ帰る場所もない、いや帰りたくない。
「(そうだ、死んじゃえばいいんだ。)」
はるかの思考は遂に究極の選択にたどり着いてしまった。
「(だけど、どこで、どうやって死のう…。)」
はるかはその思考を実行に移そうとしていた。
「御乗車ありがとうございましたー、次はー、終点鳴神駅ー、鳴神駅ー、お乗りのお客様は…」
独特のイントネーションの車掌のアナウンスが、旅の終わりを告げる。電車が停車して、はるかは下車した。
………
彰悟は、気がつくと廃ビルで寝転がっていた。
「(あれ?俺、そういえばあのあと生き返ってそれで…)」
「どうした彰悟?」
呼ばれた方を振り向くと末永が寝転がっていた。
「どうしたんだよ?なんか様子が変だぞ?」
「お前、なんともないのか?怪物のこと、覚えてないのか?」
「なんともないってそんなことねぇよ!お前に殴られたとこめっちゃ痛いぞ!怪物?お前、自分のこと怪物みたいに強いって言いたいのか?(笑)」
どうやら末永は怪物に襲われたことを忘れているらしかった。彰悟が目覚めたばかりで混乱していると、ケータイが鳴った。
「はい、もしもし。一か?」
「彰悟!悪いんだけどはるかを探すのを手伝ってくれ!はるかが事件に巻き込まれている可能性があるらしいんだ!」
「なんだって?!どういうことだよ?!訳わかんねぇぞ!」
「今、説明してる暇はないんだ!とにかくはるかを探してくれ!見つけたら神谷さんに連絡して、はるかを保護して欲しい!じゃあ、切るぞ!」
そう言って電話は切れた。彰悟は次々と起こる異常事態に混乱し続けていた。
「どうした?五代からか?」
「…正直俺も何が何だか訳がわからないが、はるかが、芳野はるかの身が危ないらしい。悪いが俺と一緒に探してくれないか?末永。」
「なんだって?!わかった、お前には借りを作ってしまったからな。罪滅ぼしがてら手伝ってやるよ!」
意外にも末永はもう改心しきっていた。
「ありがとう!お前がいてくれると頼もしい!悪いがお前の友達にも協力を仰いでもらえないか?」
「おう!全然いいけど、俺の友達より親父の方が頼りになると思うぜ!ちょっくら連絡してみるわ!」
末永は、末永の父親に電話を掛けた。
「あ、もしもし親父?忙しいところごめん、ちょっと友達が困っててさぁ、親父の力を借りたいんだけど…」
「(あれ?そういえば末永の父親って何者だ?)」
彰悟がそんな疑問を抱く傍ら、末永はそれから数十秒ほど電話をしていた。
「お、ありがとう親父!じゃあ切るわ!」
末永は会話を終え、そして彰悟に衝撃のことを伝える。
「ついさっき鳴神駅にいたらしいぜ。」
「え?!ほんとかよ?!お前のお父さんて一体何者なんだ?!」
「んなこといいからさっさと行こうぜ!」
そう言って末永は、彰悟の手を引っ張り、走り出した。
「(今日は一体何て日だ…。)」
彰悟はますます混乱した。
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