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救出編
第四十話 暴力
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桜の驚く声を聞いて神谷がやってきた部屋はどうやらこの家の娘の部屋のようだった。そしてそこには血のついたシーツが散乱していた。
「うっ…。」
桜は口に手を当てて膝をついた。
「大丈夫か?立てるか?」
とっさに桜の肩に手をやり、桜を立たせるよう誘導する神谷。なんとか立ち上がり、よろよろと歩く桜。トイレへ向かい、桜は便器に顔を寄せて嘔吐した。神谷はそっと桜の背中を擦った。
「なんで…。なんでこんな…。」
桜は泣きながら嘔吐し続けた。
しばらくして桜の嘔吐は落ち着いたが、呆然と座り込んでおり、とても動けそうな状態ではなかった。
「悪いがここからは俺一人で捜査を続ける。桜ちゃんはここで休んでて。」
そう言って神谷は桜に背を向けた。
「神谷さん…。」
しかし桜は神谷を呼び止めた。
「暴走はしないでくださいね…。」
こんな状態になっても桜は神谷の心配をしていた。
「…できる限りな。」
そう言って神谷は歩み出した。
「トメさん。すいません。桜ちゃんを頼みます。」
「…わかったわ。気を付けてね。」
トメさんは物わかりがよかった。神谷はマンションから走り去り、近くに駐車しておいたパトカーに乗り込んだ。
「(まずは少女の保護が最優先だな。とは言ってもどうやって探し出すか…。とりあえず署に連絡するべきか…。)」
とりあえず神谷は特務課課長の加藤に連絡をした。
「どうした神谷?またなんかやらかしたか?」
「はぁ実は…。」
神谷は今までの経緯を一通り説明した。
「なるほどな。つまりお前は許可も出ていないのにマンションのドアをぶち破って不法侵入したと。だから警電(警察電話のこと)を使わずにケータイから連絡してきたんだな。」
「まぁそういうことになります。」
「まったくお前にはつくづく呆れるよ。まぁ個人的にはお前のそういうところが嫌いではないんだがな。だからまたこうして助けてやるわけだ。」
「いやぁいつもありがとうございます!」
「署の方にはうまいこと言っといてやるから、お前は単独でその娘を探してろ。まぁ言われんでもお前ならそうするか。」
「まぁそうですね。」
一通り話して神谷は電話を切った。
「さて、とは言ってもどうやって探し出すか…。」
考えはじめたその時、ケータイが鳴った。一からだった。
「あ、神谷さんですか?着信が入ってたんですけど、どうかしましたか?」
「あぁ、実は君の学校の生徒が事件に巻き込まれているかもしれなくてな…。」
「え?!誰ですか?!」
「芳野はるかだ。」
「え?!」
「彼女について何か知らないか?今どこにいるかとか、最近の様子とか。」
「そういえば…。さっき鳴神駅のホームで見ました!さっきとは言っても一時間以上前ですが…。」
「本当か?!わかった!ありがとう!できることなら君やあと矢本くんにも協力して欲しい!彼女を見つけたら俺に連絡をくれ!」
「わかりました!」
そして電話が切れた。
「はるかが…事件に?なんだか嫌な予感がする。」
一は、目覚めて間もないなか、全力で走り出した。
「うっ…。」
桜は口に手を当てて膝をついた。
「大丈夫か?立てるか?」
とっさに桜の肩に手をやり、桜を立たせるよう誘導する神谷。なんとか立ち上がり、よろよろと歩く桜。トイレへ向かい、桜は便器に顔を寄せて嘔吐した。神谷はそっと桜の背中を擦った。
「なんで…。なんでこんな…。」
桜は泣きながら嘔吐し続けた。
しばらくして桜の嘔吐は落ち着いたが、呆然と座り込んでおり、とても動けそうな状態ではなかった。
「悪いがここからは俺一人で捜査を続ける。桜ちゃんはここで休んでて。」
そう言って神谷は桜に背を向けた。
「神谷さん…。」
しかし桜は神谷を呼び止めた。
「暴走はしないでくださいね…。」
こんな状態になっても桜は神谷の心配をしていた。
「…できる限りな。」
そう言って神谷は歩み出した。
「トメさん。すいません。桜ちゃんを頼みます。」
「…わかったわ。気を付けてね。」
トメさんは物わかりがよかった。神谷はマンションから走り去り、近くに駐車しておいたパトカーに乗り込んだ。
「(まずは少女の保護が最優先だな。とは言ってもどうやって探し出すか…。とりあえず署に連絡するべきか…。)」
とりあえず神谷は特務課課長の加藤に連絡をした。
「どうした神谷?またなんかやらかしたか?」
「はぁ実は…。」
神谷は今までの経緯を一通り説明した。
「なるほどな。つまりお前は許可も出ていないのにマンションのドアをぶち破って不法侵入したと。だから警電(警察電話のこと)を使わずにケータイから連絡してきたんだな。」
「まぁそういうことになります。」
「まったくお前にはつくづく呆れるよ。まぁ個人的にはお前のそういうところが嫌いではないんだがな。だからまたこうして助けてやるわけだ。」
「いやぁいつもありがとうございます!」
「署の方にはうまいこと言っといてやるから、お前は単独でその娘を探してろ。まぁ言われんでもお前ならそうするか。」
「まぁそうですね。」
一通り話して神谷は電話を切った。
「さて、とは言ってもどうやって探し出すか…。」
考えはじめたその時、ケータイが鳴った。一からだった。
「あ、神谷さんですか?着信が入ってたんですけど、どうかしましたか?」
「あぁ、実は君の学校の生徒が事件に巻き込まれているかもしれなくてな…。」
「え?!誰ですか?!」
「芳野はるかだ。」
「え?!」
「彼女について何か知らないか?今どこにいるかとか、最近の様子とか。」
「そういえば…。さっき鳴神駅のホームで見ました!さっきとは言っても一時間以上前ですが…。」
「本当か?!わかった!ありがとう!できることなら君やあと矢本くんにも協力して欲しい!彼女を見つけたら俺に連絡をくれ!」
「わかりました!」
そして電話が切れた。
「はるかが…事件に?なんだか嫌な予感がする。」
一は、目覚めて間もないなか、全力で走り出した。
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