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四百珊瑚

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継続編

第三十七話 彰悟の死

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 「ここは…?廃ビル?」

 一は、気がつくと廃ビルのような建物の中にいた。そして、目の前には今までとはな怪物がいた。それは、全身黒い甲冑のようなものを身にまとい、刀のような物を腰にさしていた。両脚で起立したまま静止しており、後ろ姿だけ見れば人間に見える。

 「なんだこいつ?!人型だと?!」

 思わず一がそう言った瞬間、そいつが振り向いた。黒兜の中の顔は明らかに生きた人間のものではなかった。黒兜の奥から、人間とは全く異なった生き物の骨が剥き出しになっていた。

 「やはり化け物か?!」

 一が身構えようとした瞬間、怪物が一に突っ込んできた。

 「グギギギギギ」

 「?!」

 奇妙な声をたてながら突進してきた。5mほど離れていたが、一瞬で距離をつめた。速い。目にもとまらぬ速さだった。

 「くっ!」

 なんとかギリギリのところで黒兜の一振りをかわした。これまでに数多くの死線をくぐってきた一だからこそできた芸当だが、常人なら間違いなく死んでいた。

 「サン!」

 『complete』

 ケータイを起動させ、応戦する。素早くボタンを押す。

 『20110 enter,blade mode 』

 一のケータイが刀状に変形した。黒兜に負けず、一も刀を振りさばく。

 ガキィィン!

 と激しい音がする。両者譲らずに刀を打ちつけ合う。刀と刀が衝突する瞬間、火花が散り、風圧で壁にヒビが走る。凄まじい迫力の戦いだ。

 「(っくそ!ほぼ互角!これじゃ埒があかない!)」

 すると黒兜は刀をもう一つ抜いた。

  「(二刀流だと?!)」

 先ほどにもまして黒兜の動きは一段と速く、激しくなった。

 「ぐはっ!」

 一は斬撃をもろに胴にくらった。

 「(剣術では敵わないな…。なら!)」

 『4010,shotgun mode』

 「グギッ?!」

 ズドンッという爆音と共に黒兜の胴に一の放った銃撃が命中。黒兜は少しひるみ、一と距離をとるため後ずさった。

 「逃がすか!」

 『1111,machine-gun mode』

 すかさず攻撃を繰り出す一。黒兜は一に背を向けて逃げ出した。

 「待て!」

 一は黒兜を追いかけた。しばらく追いかけると、突然黒兜は動きを止めた。何かを見つけたようだった。一は、黒兜の目線の先を見た。するとそこには彰悟と末永がいた。

 「なんで二人がここにいるんだ?!はやく逃げろ!」

 一は思い切り叫んだがどうやら二人には聞こえていない。それに二人ともケガをして疲れきっており、逃げれそうもなかった。そして黒兜は末永に襲いかかった。

 「やめろおぉ!」

 一の叫び声も虚しく、黒兜の攻撃は末永、ではなく末永を庇った彰悟に命中した。

 「ぶはっ!」

 彰悟は吐血した。どんどんと体から力が抜けていくのが目に見えた。

 「うそ…だろ…。」

 一の動きが一瞬停止した。その間にも黒兜は再び末永を襲おうとしていた。

 「うわあぁ!」

 慌てふためく末永。

 「ふざけんじゃねぇぞてめぇ!」

 怒り狂う一。

 『0973,magnam mode』

 ズドンズドンと爆音が廃ビルのなかに響き渡る。

 「グゴゴゴ!」

 黒兜にマグナムが命中した。不気味な叫び声をあげ、その場にひざまずく。

 「死ねぇ!」

 『20110,bkade mode』

 ザンッ!

 一の一振りで黒兜の首が跳ねた。

 「彰悟…彰悟…。」

 敵を仕留め、変わり果てた姿の友のもとへフラフラと歩み寄る一。

 「おい彰悟ぉ!目ぇ覚ませよ!また遊ぶんだろ!弟や親父さんはどうするだよ!なぁ!」

 大粒の涙を垂らしながら一は彰悟に問いかける。彰悟の吹き出した血と一の涙がぐちゃぐちゃに混ざった液体で彰悟の体が汚れていく。

 「てめぇが…てめぇがこんなとこに彰悟を呼ぶからだぞ!わかってんのか末永!」

 「…。」

 責める一。黙る末永。末永は青ざめた表情でただただ、呆然と泣いていた。

 『任務終了!ただちに帰還せよ!』

 一の頭の中の声が終わりを告げる。

 「まだ終わってねぇよ!終わってねぇよちくしょう!」

 彰悟の心臓は完全に停止していた。
 
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