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継続編
第三十話 はるかの違和感
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一夜あけて、学校に登校すると、すでにはるかが登校していた。
「あ、一くんおはよー!」
はるかは朝から元気な声で挨拶をしてくれた。昨夜、テレビの画面に映ったいつもとは違う、妖艶な雰囲気のはるかの姿がふと頭に浮かび、僕はなぜか恥ずかしくなった。それを打ち消すように、僕も「おはよう!」と、なるべく大きな声で返事をした。
僕は入学したての時の早起きの癖が抜けず、朝のホームルーム開始の30分ほど前には教室についてしまう。もう一年生もこの時期になると、他のほとんどの生徒はホームルーム開始直前に教室に入り込んでくる。そんなわけで、ここ最近は自分以外誰もいない教室で、家から持ち込んだヒーローものの漫画を読むのが毎日の日課となっていたのだが、今日はなぜかはるかが僕よりも早く教室にいた。
「今日はなんでこんなに早いの?」
僕は少し気になったので聞いてみた。
「ん。私、家にいるの、あんまり好きじゃないから…。」
珍しくはるかの表情が暗くなった。そういえば昨日の別れ際もそのようなことを言っていた。僕はそれを察し、話題をそらそうとも思った。だが、無性に気になったので、思いきってつっこんだ話を聞いてみた。
「なんで?家族のこと嫌いなの?」
「え?ううん!ママもパパも大好きだよ!」
はるかは、明らかにぎこちない作り笑いをしてそう答えた。
「…そうなんだ。」
そういいながらも、僕ははるかの表情以上に、はるかの言葉に違和感を覚えた。たしか、はるかは父はいないと言っていた。
「うん!お母さんはとっても優しいし、お父さんも…。」
明らかにはるかの様子がおかしい。
「…はるか。」
「ん?なに?」
「何か、困ったことがあったら僕に言ってよ。僕でよければ、何でも、どんなことでも…聞くよ。」
はるかは少し驚いた表情をして、しばらく下を向いてうつむいた。しばらく沈黙が続いた。
「ありがとね!一くん!でも、私は大丈夫!」
はるかはまた作り笑いをしていた。目が少し潤んでいた…。
………
『ピンポーン』
インターホンの音が響き、しばらく静寂が続いた。
「いないんですかねぇ…。」
と、桜が呟く。
「うーん…。かもなぁ…。」
と、神谷が言ったところでインターホンの向こうから声がした。
「はい。どちら様でしょうか?」
女の声だった。
「こんにちは。私ども、鳴神警察署 特務課の近藤と、神谷と申します。」
そういいながら、桜は警察手帳をインターホンに向けた。
「刑事さんですか?!少々お待ちください!」
しばらくして扉が開き、女が姿を表した。女は40歳前後のはずだが、かなり若く見えた。肌は色白く、黒いロングヘアーをなびかせ、黒を貴重としたドレス風の洋服を来ていた。
「あのう、刑事さんがなんのご用でしょうか…。」
女は不安そうにこちらの様子を伺ってきた。
「あ、すみませんね奥さん!実は、周辺住民の方から、こちらのお宅から夜な夜な変な物音がするって聞きまして。何か心当たりございませんか?」
神谷が単刀直入に聞いた。
「…さぁ。知らないですね…。それに私、ここ最近は海外で仕事をしていて家を空けていて…。私が日本にいない間に引っ越しの準備も全部主人と娘が済まして、この家に入ったのも今日が初めてで…。」
「そうなんですね。それはお疲れのところ失礼しました!」
「いえいえ!とんでもないです!」
「誠に申し訳ないのですが、一応今度ご主人と娘さんにもお話を伺いたいので、お二人がいらっしゃる時を教えていただけないでしょうか?」
「そうですねぇ…。主人は芸能事務所の社長をしていて、娘も主人が勤めている事務所でアイドル活動をしていて、職業柄いつ家に戻ってくるのか私もわからなくて…。わかり次第またこちらからご連絡いたしましょうか?」
「ご協力ありがとうございます。他にも何かお困りのことがあったらいつでもこちらに!」
そう言って神谷は名刺を手渡した。
「それでは、本日は失礼しました!」
そう言って二人は女の家を後にした。
「あ、一くんおはよー!」
はるかは朝から元気な声で挨拶をしてくれた。昨夜、テレビの画面に映ったいつもとは違う、妖艶な雰囲気のはるかの姿がふと頭に浮かび、僕はなぜか恥ずかしくなった。それを打ち消すように、僕も「おはよう!」と、なるべく大きな声で返事をした。
僕は入学したての時の早起きの癖が抜けず、朝のホームルーム開始の30分ほど前には教室についてしまう。もう一年生もこの時期になると、他のほとんどの生徒はホームルーム開始直前に教室に入り込んでくる。そんなわけで、ここ最近は自分以外誰もいない教室で、家から持ち込んだヒーローものの漫画を読むのが毎日の日課となっていたのだが、今日はなぜかはるかが僕よりも早く教室にいた。
「今日はなんでこんなに早いの?」
僕は少し気になったので聞いてみた。
「ん。私、家にいるの、あんまり好きじゃないから…。」
珍しくはるかの表情が暗くなった。そういえば昨日の別れ際もそのようなことを言っていた。僕はそれを察し、話題をそらそうとも思った。だが、無性に気になったので、思いきってつっこんだ話を聞いてみた。
「なんで?家族のこと嫌いなの?」
「え?ううん!ママもパパも大好きだよ!」
はるかは、明らかにぎこちない作り笑いをしてそう答えた。
「…そうなんだ。」
そういいながらも、僕ははるかの表情以上に、はるかの言葉に違和感を覚えた。たしか、はるかは父はいないと言っていた。
「うん!お母さんはとっても優しいし、お父さんも…。」
明らかにはるかの様子がおかしい。
「…はるか。」
「ん?なに?」
「何か、困ったことがあったら僕に言ってよ。僕でよければ、何でも、どんなことでも…聞くよ。」
はるかは少し驚いた表情をして、しばらく下を向いてうつむいた。しばらく沈黙が続いた。
「ありがとね!一くん!でも、私は大丈夫!」
はるかはまた作り笑いをしていた。目が少し潤んでいた…。
………
『ピンポーン』
インターホンの音が響き、しばらく静寂が続いた。
「いないんですかねぇ…。」
と、桜が呟く。
「うーん…。かもなぁ…。」
と、神谷が言ったところでインターホンの向こうから声がした。
「はい。どちら様でしょうか?」
女の声だった。
「こんにちは。私ども、鳴神警察署 特務課の近藤と、神谷と申します。」
そういいながら、桜は警察手帳をインターホンに向けた。
「刑事さんですか?!少々お待ちください!」
しばらくして扉が開き、女が姿を表した。女は40歳前後のはずだが、かなり若く見えた。肌は色白く、黒いロングヘアーをなびかせ、黒を貴重としたドレス風の洋服を来ていた。
「あのう、刑事さんがなんのご用でしょうか…。」
女は不安そうにこちらの様子を伺ってきた。
「あ、すみませんね奥さん!実は、周辺住民の方から、こちらのお宅から夜な夜な変な物音がするって聞きまして。何か心当たりございませんか?」
神谷が単刀直入に聞いた。
「…さぁ。知らないですね…。それに私、ここ最近は海外で仕事をしていて家を空けていて…。私が日本にいない間に引っ越しの準備も全部主人と娘が済まして、この家に入ったのも今日が初めてで…。」
「そうなんですね。それはお疲れのところ失礼しました!」
「いえいえ!とんでもないです!」
「誠に申し訳ないのですが、一応今度ご主人と娘さんにもお話を伺いたいので、お二人がいらっしゃる時を教えていただけないでしょうか?」
「そうですねぇ…。主人は芸能事務所の社長をしていて、娘も主人が勤めている事務所でアイドル活動をしていて、職業柄いつ家に戻ってくるのか私もわからなくて…。わかり次第またこちらからご連絡いたしましょうか?」
「ご協力ありがとうございます。他にも何かお困りのことがあったらいつでもこちらに!」
そう言って神谷は名刺を手渡した。
「それでは、本日は失礼しました!」
そう言って二人は女の家を後にした。
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