ONE

四百珊瑚

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再来編

第十六話 再び

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 一が目覚めるとまたあの白い部屋の、白い棺の中いた。

 「またここか…。」

 一はこの前来たときと同じように、棺からでて、そばにある黒いアタッシュケースを開いた。そしてなれた手つきでベルトとネクタイを手に取り、スーツが現れた。そして、謎の女性も水槽の中にいた。

 「(一体この人はなんなんだ?)」 

 一がそう思った瞬間、また警報が鳴った。

 「緊急事態発生!緊急事態発生!転送まであと10秒!」

 「(まさか、また化け物と戦うのか?!)」

 一は恐怖した。折角彰悟とも仲良くなれたのだ。生きる希望も持てたのだ。一はと願った。

 だが、一の願いもむなしく、気がつくと、一の視界の周りには空が広がっており、目の前には例のごとく怪物がいた。足元を見ると、一はランドマークタワーの天辺にいることにきづいた。そして、怪物は、以前現れた怪物よりも巨大で、地上20階建てのランドマークタワーと同じくらいの大きさで、タワーの前に佇んでいた。怪物は、静かに一のことを睨み付けていた。

……………

 「全くどうなってるんだ?!化け物が現れただって?!」

 一が怪物と対面するのと同じ頃、神谷はあわてて車を走らせていた。

 「ちょっと神谷さん!とばしすぎですよ!」

 車の速度はすでに法廷速度をオーバーしていた。いくらサイレンを鳴らして走っているからと言って、かなり荒々しく、危ない運転だった。

 「たしか、場所はランドマークタワーでしたよね?この速度ならあと5分程で到着するでしょうか?」

 「わからない!だが、なるべく速く行くしかないだろ!」

 神谷は無我夢中で車を走らせた。

 「(まさか一がいたりしないといいんだが…。嫌な予感がする…。)」

……………

 「(また戦わなくてはいけないのか?!)」

 同じ頃、一は迷っていた。いっそ化け物から目を背けて逃げようか、戦おうか。やはり一もまだ中学生、生死を分ける戦いを前に、怖じ気づいているのも無理はない。

 「いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!」

 一は一目散に逃げた。

 「もうこれ以上あんな怖い思いをしたくない!」

 しかし、無情にも化け物は一を敵と認識した。

 「ウグアァァァァァァァァァァァ!!!」

 大地を揺るがす雄叫びをあげながら、腕を振り、一を思い切り投げ飛ばした。 

 「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 一は隣のビルに思い切り打ち付けられた。一は、ビルの壁を貫通し、ビル内のオフィスの床に転がった。

 「ぐはっ!」

 どうやら体のあちこちを骨折したようだった。全身にいままで感じたことのないような痛みが走った。口からは大量の血を吐き出した。意識は朦朧としていた。その間にも怪物は暴れていた。すでにランドマークタワー周辺の建築物は崩れ始めていた。

 「(やめろ!やめてくれ!これ以上、僕たちの街を壊さないでくれ…。)」

 一は遠のく意識のなかで静かに願った…。
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