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再来編
第十四話 監視
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事件からしばらく経った。少し前まではクラスメイトたちの話は事件のことばかりだったが、この時期にもなるともう事件のことはそんなに話題にならなくなった。しかし、僕にとっては大きな変化が今も続いている。
「おはよー一!」
彰悟とは今も仲がいい。
「おはよう、彰悟!」
僕は挨拶を返した。少し前まではこんなことはあり得なかった。まさか前の僕も、自分のことをいじめていた彰悟とこんなにも仲良くなるとは思っていなかっただろう。
「今日も家来るか?」
「またお邪魔していいの?」
あれ以来僕は彰悟の家に頻繁に行くようになった。しかし、その度に彰悟は僕にラーメンをおごってくれたので、僕は少し申し訳なく思っていた。
「そうだ!たまには僕の家に来なよ!僕以外誰もいないし!」
「え?家行っていいの?!そういや行ったことないし…行きたいわ!」
「やった!」
そんなことを話している間に、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「じゃあまたあとでな!」
矢本は嬉しそうに自分の席へ戻っていった。
……………
「へぇ。今は一人暮らししてるんだな。」
一方その頃、神谷と桜は、一たちのいる、鳴神高校で一の身辺調査をしていた。
「ちょっと神谷さん!流石に神谷さんの勘だけで一人の男子高校生を疑ってかかって学校で個人情報収集しまくるようなことしていいんですか?!」
「んー?いいのいいの。」
神谷は半ば他人事のように答えた。
「どうも、お待たせしました。」
神谷と桜がそんな会話をしていると、鳴神高校の校長と、一の担任がやって来た。
「私、校長の田村と申します。こちら、五代くんの担任の金子です。」
「どうも、私、鳴神警察署特務課の神谷と申します。こちら、私の部下の近藤巡査です。」
各々簡単に挨拶をしたところで、早速話は本題に移った。
「それで、刑事さん、うちの生徒について伺いたいこととは…?」
「うーんと、そうですねぇ。あんまり詳しいことは言えないんですが、これも操作の一貫で。」
「うちの生徒がなにか事件を起こしたんですか?!」
校長は顔を真っ青にして大声で神谷に聞いた。
「いや、そういうわけではないですよ。安心してください。」
「そうですか…。」
校長はホッとしたようだ。
「失礼しました…。では、刑事さんたちは何を知りたいのですか?」
「はい!五代くんについての生活態度などを聞きたいです!」
桜が単刀直入に言った。
「では、それについては校長ではなく、私から話させていただきます。」
金子が話し始めた。
「そうですねぇ…。先ほどお渡しした資料ももうご覧になってご存知かとは思うのですが、五代は少し複雑な環境で育ってきたようで…。」
「そうですね…。たしか父親が消息不明で母親も彼が幼いときに死亡。その後親戚の家に引き取られるが今は一人で暮らしている…。その親戚の家で何かあったかとか聞いてないですか?」
神谷は珍しく真剣な表情だった。
「そうですねぇ…。彼は元々内向的な性格なのであまり話すことがなくて…。ただ、面談の時は意外にもこちらの聞いたことは答えてくれたんですよ。「やはりこの年頃で一人暮らしは大変じゃないか、親戚の家で嫌なことがあって敢えて一人暮らしをしているのか」といったことを敢えて聞いたんです。彼を傷つけてしまうかもしれないとおそるおそる聞いたのですが、ちゃんと答えてくれましたよ。」
「なんと答えたんですか?」
「実は、彼は親戚の家があんまり居心地がよくなかったみたいなんですよ。だけど、その理由が意外というか彼らしいというか…。」
「というと?」
「それが、親戚の方々は彼に冷たくあたるどころかとても親切で優しくしてくれたようでして…。内向的であり、心優しい彼はそれが申し訳ないと感じてひどく辛かったそうなんですよ…。」
「…なるほど。」
「刑事さん、やっぱりあの五代が何か事件に巻き込まれてるんですか?あいつは被害者にはなったとしても、加害者になるような生徒ではないですよ!どうかあいつを、あんな心優しいやつを、守ってください!」
「わかりました。もちろん私たちも彼が事件に巻き込まれていないことを願っています。では、引き続き、学校での彼の様子を聞かせてください。」
………
「それにしても聞けば聞くほど五代くんはいい子だなって印象を受けましたね。なんで神谷さんはそんなに五代くんにこだわるんです?」
教師たちとの会話が終わって、車に戻っても神谷と桜は会話を続けていた。
「こだわるというか、なんか気になるんだよ。」
「うーん。私には神谷さんの考えは理解できないです…。あっ!でも、最近になって矢本くんと仲良くなったって言うのは確かに気になりました!」
「そうだ。一番の疑問はそこだ。どうやら教師たちの話によると元々仲が良くない様子だった彼らが事件前後ですっかり仲が良くなったっていうのが偶然とは思えない。しかももともと友達の多かった矢本が、対照的に友達の少ない五代とばかり最近は話しているところを見かけるというのにも違和感を感じる。少し五代の今の自宅付近を監視してみよう。」
「え?!そこまでするんですか?!上にばれたらどうするんですか?!まずいですよ!五代くんとあの事件の決定的な関係はまだ一つも見つかってないんですよ!また無意味な操作してサボってると思われますよ!」
「それを見つけるための捜査だよ。それに、俺が意味があると感じた捜査だ。現場の刑事が意味があると言えばどんな捜査にも意味があるんだよ。」
「(もうダメだ。)」
神谷の至って真剣な眼差しを見て、桜はそう悟った。
「おはよー一!」
彰悟とは今も仲がいい。
「おはよう、彰悟!」
僕は挨拶を返した。少し前まではこんなことはあり得なかった。まさか前の僕も、自分のことをいじめていた彰悟とこんなにも仲良くなるとは思っていなかっただろう。
「今日も家来るか?」
「またお邪魔していいの?」
あれ以来僕は彰悟の家に頻繁に行くようになった。しかし、その度に彰悟は僕にラーメンをおごってくれたので、僕は少し申し訳なく思っていた。
「そうだ!たまには僕の家に来なよ!僕以外誰もいないし!」
「え?家行っていいの?!そういや行ったことないし…行きたいわ!」
「やった!」
そんなことを話している間に、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「じゃあまたあとでな!」
矢本は嬉しそうに自分の席へ戻っていった。
……………
「へぇ。今は一人暮らししてるんだな。」
一方その頃、神谷と桜は、一たちのいる、鳴神高校で一の身辺調査をしていた。
「ちょっと神谷さん!流石に神谷さんの勘だけで一人の男子高校生を疑ってかかって学校で個人情報収集しまくるようなことしていいんですか?!」
「んー?いいのいいの。」
神谷は半ば他人事のように答えた。
「どうも、お待たせしました。」
神谷と桜がそんな会話をしていると、鳴神高校の校長と、一の担任がやって来た。
「私、校長の田村と申します。こちら、五代くんの担任の金子です。」
「どうも、私、鳴神警察署特務課の神谷と申します。こちら、私の部下の近藤巡査です。」
各々簡単に挨拶をしたところで、早速話は本題に移った。
「それで、刑事さん、うちの生徒について伺いたいこととは…?」
「うーんと、そうですねぇ。あんまり詳しいことは言えないんですが、これも操作の一貫で。」
「うちの生徒がなにか事件を起こしたんですか?!」
校長は顔を真っ青にして大声で神谷に聞いた。
「いや、そういうわけではないですよ。安心してください。」
「そうですか…。」
校長はホッとしたようだ。
「失礼しました…。では、刑事さんたちは何を知りたいのですか?」
「はい!五代くんについての生活態度などを聞きたいです!」
桜が単刀直入に言った。
「では、それについては校長ではなく、私から話させていただきます。」
金子が話し始めた。
「そうですねぇ…。先ほどお渡しした資料ももうご覧になってご存知かとは思うのですが、五代は少し複雑な環境で育ってきたようで…。」
「そうですね…。たしか父親が消息不明で母親も彼が幼いときに死亡。その後親戚の家に引き取られるが今は一人で暮らしている…。その親戚の家で何かあったかとか聞いてないですか?」
神谷は珍しく真剣な表情だった。
「そうですねぇ…。彼は元々内向的な性格なのであまり話すことがなくて…。ただ、面談の時は意外にもこちらの聞いたことは答えてくれたんですよ。「やはりこの年頃で一人暮らしは大変じゃないか、親戚の家で嫌なことがあって敢えて一人暮らしをしているのか」といったことを敢えて聞いたんです。彼を傷つけてしまうかもしれないとおそるおそる聞いたのですが、ちゃんと答えてくれましたよ。」
「なんと答えたんですか?」
「実は、彼は親戚の家があんまり居心地がよくなかったみたいなんですよ。だけど、その理由が意外というか彼らしいというか…。」
「というと?」
「それが、親戚の方々は彼に冷たくあたるどころかとても親切で優しくしてくれたようでして…。内向的であり、心優しい彼はそれが申し訳ないと感じてひどく辛かったそうなんですよ…。」
「…なるほど。」
「刑事さん、やっぱりあの五代が何か事件に巻き込まれてるんですか?あいつは被害者にはなったとしても、加害者になるような生徒ではないですよ!どうかあいつを、あんな心優しいやつを、守ってください!」
「わかりました。もちろん私たちも彼が事件に巻き込まれていないことを願っています。では、引き続き、学校での彼の様子を聞かせてください。」
………
「それにしても聞けば聞くほど五代くんはいい子だなって印象を受けましたね。なんで神谷さんはそんなに五代くんにこだわるんです?」
教師たちとの会話が終わって、車に戻っても神谷と桜は会話を続けていた。
「こだわるというか、なんか気になるんだよ。」
「うーん。私には神谷さんの考えは理解できないです…。あっ!でも、最近になって矢本くんと仲良くなったって言うのは確かに気になりました!」
「そうだ。一番の疑問はそこだ。どうやら教師たちの話によると元々仲が良くない様子だった彼らが事件前後ですっかり仲が良くなったっていうのが偶然とは思えない。しかももともと友達の多かった矢本が、対照的に友達の少ない五代とばかり最近は話しているところを見かけるというのにも違和感を感じる。少し五代の今の自宅付近を監視してみよう。」
「え?!そこまでするんですか?!上にばれたらどうするんですか?!まずいですよ!五代くんとあの事件の決定的な関係はまだ一つも見つかってないんですよ!また無意味な操作してサボってると思われますよ!」
「それを見つけるための捜査だよ。それに、俺が意味があると感じた捜査だ。現場の刑事が意味があると言えばどんな捜査にも意味があるんだよ。」
「(もうダメだ。)」
神谷の至って真剣な眼差しを見て、桜はそう悟った。
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