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四百珊瑚

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昇天編

第二話 白い部屋

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 高校の屋上から飛び降りて、死んだはずの僕は、何故か生きていた。いや、本当に生きてるのかさえよくわからない。もしかしたらここが俗に言うあの世なのかもしれない…。

 「どこだ?ここは…?僕は今どういう状態だ?」

 目覚めると視界はただただ真っ白であった。よく見ると透明なガラスが目の前にある。体は温かく、しかしさっきまで身につけていたはずの制服や靴は着ておらず、僕は裸のまま仰向けに寝ていた。

 しかも、よく見るとどうやら僕の体は水のような温かい液体に満たされた白い棺のような箱の中で寝ているようだ。液体のなかで寝ているにも関わらず、不思議と息苦しさはなく、むしろ心地よく、どこか懐かしい感じがした。

 「(とにかく、今の状況をもっと知りたい。)」

 このままずっとこの箱の中で寝ているわけにもいかないので、僕は思いきって箱の中から出てみようと思い、目の前のガラスに手を触れてみた。

 すると、ガラスが横にスライドして、箱が開いた。僕は立ち上がり、自分が今さっきまで入っていた箱を眺めてみた。

 箱は真っ白く、西洋風の箱で、かなり昔に作られた古いもののようであったが丈夫そうで、どこか品のある、高級そうな造りであった。箱の表面には十字架のような紋様の彫られたガラスが取り付けてあり、これは手を触れるだけで横にスライドして箱が開く仕組みになっており、この部分だけは近未来的に感じる。

 箱の外に出ると辺りは一面どこまでも真っ白であり、果たしてこの空間がどれほどの広さなのか全く検討がつかない。

 しかし、一面白い空間のなかに、自分の体と白い箱以外にとても目立つものがあった。僕が寝ていた箱の頭側から2,3メートル間を開けたすぐのところに大きな円柱状の、ガラス張りの水槽のようなものがあった。こちらも液体で満たされていた。しかも、

 女性の髪は美しい長髪で金に輝いていた。西洋風の顔立ちをしており、鼻が高く色白い。細身で背が高く、スタイルが良い。
 
 しかしこの女性もまた、何も服を身に付けておらず、目を閉じてずっと眠っているようだ。

 「大丈夫ですか?ここは一体どこなんですか?あなたも死んだんですか?」

 声をかけても全く反応はなかった。どうやらかなり深い眠りについているようだが、死んでいる様子ではないので、ひとまず様子を見ることにした。

 しかし、この女性も自分もいつまでも裸と言うわけにはいけない。なにか着れるものはないかと、辺りを見渡してみた。よく見ると、僕が入っていた白い箱の足元に、黒い重箱のような形をしたものがあった。

 その黒い箱の中をたしかめようと、手を振れてみたら、こちらもまた手を触れただけで動き出した。表面の蓋のような部分がスライドして、中から黒い革のアタッシュケースが出てきた。

 アタッシュケースを開けてみると、なかには革のベルトと銀色の時計、メガネ、ネクタイと、俗に言うガラパゴスケータイと、ケータイの説明書のようなものが入っていた。スマートフォンが世に浸透している今、ガラパゴスケータイを見たのは久しぶりであった。

 とりあえず箱の中のものを全部取り出してみた。どうやらどれも危険なものではなさそうだ。とりあえず、一点一点調べていこうと思う。

 ベルトは非常に高級そうな革製のもので、スーツと一緒に用いられるようなフォーマルなデザインだ。他の時計やメガネ、ネクタイ、ケータイも高級感のある作りで、黒を基調としていた。

 とりあえず、何も身に付けていないよりはマシかもしれないと思い、試しにこれらの物を身に付けてみることにした。

 すると、Y。まるで、特撮ヒーローの変身のようだ。

 もしやと思い、ベルトも腰に巻いてみると、やはりトラウザーズと革靴が出現した。これらも黒を基調としたデザインであった。

 更に時計とメガネを着用し、ケータイに関しては、ベルトにケータイ用らしきホルダーが付属していたため、そちらに挿入した。

 こうしてみるとまるでSPのような格好だ。

 他に気になるのはケータイに付属していた説明書だ。もしかしたら説明書にこの白い空間に関するヒントも書いてあるかもしれないと思い、説明書を手に取った瞬間、大きな警報が鳴り響いた。

「緊急事態発生!緊急事態発生!転送まであと10秒!」

 突然の警報にびっくりした。あと、10秒で何かが起きるのだろうか?

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 気がつくと僕はさっきまでいた白い空間にはいなかった。どうやら今度は野球場らしきところにやってきた。もう何がなんだか理解のしようがなかった。しかも目の前には体長3メートルほどの蛙のような姿をした、僕の方を睨み付ける怪物が存在していたのだった…。
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