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第1部 第33話
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ロビン夫婦が去ったパーティー会場は白けた状態になっていた。
主役のケーシーは、どうこの場を取り繕えば良いのかもわからず、呆然としている。
まさかの、家族による妨害、失態で、選挙戦を行っていく上での大事なパーティーが台無しだ。
動けない自分に代わり、父ウラスにより集った人たちへ謝罪が行われ、この日のパーティーは早々にお開きとなった。
「信じられない!今日がどういったものだか、わかっていなかったのか!もう、本当にどうしてくれるんだ!」
身内だけが残った場で、ケーシーが、漸く声を発したかと思ったら、どうやら怒りが沸点に達したようで、ここに来て、母と姉妹に向けて怒鳴り散らしたのであった。
だが、母も姉妹も反省の色は全くない。
「お兄さまぁ、確かにぃ、エディが来ずぅ、今夜はぁ、失敗したかも知れないですがぁ、お姉さまがエディと婚姻さえすればぁ、資金も集まりぃ、このトウの町は実質ぅ、全てが我が家のものになりますのよぉ」
妹の方は、言葉の最後には満面の笑みまで見せだしており、自分たちの行動を改める様子は全くない。
それには、ケーシーは只々、呆れて言葉が出ないでいた。
「お前と言う奴は・・・、もう、俺は疲れたので休む」
ケーシーは、家族を睨みつけ、また、ドカドカと足を踏み鳴らし、怒りをこれでもかと表わすように自室へ戻って行った。
「そんなに怒らなくても」
ケーシーの態度に、姉もぶつくさと呟いた。
そんな姉妹の姿に、父ウラスは顔を歪めて、無言のままじろりと睨みつけてきた。
『うっ!お父様までも!ヤバいかも!』
『ひぇーー、何かぁ、怒っているみたいですわぁ!』
その視線に、姉妹は、ここにきて、父がかなりお怒りである事に少し怯え、「私たちも疲れましたので・・」と言いながら、バタバタと騒がしい音をさせながら、彼女たちも部屋に引き戻っていった。
「そんなに怒ることですの?いつもなら、私達も呼び寄せずに、パーティー事態を済ませる程なのに」
ウラスの妻も、たかだかパーティーでのことに大げさだと思っているようで悪びれたそぶりもない。
「対抗馬がいても、いつもと変わらないのでしょう?」
そう言いながら、妻は、さも疲れたと言わん顔をウラスに向けてみせた。
「お前、選挙には、「平民議員」には、金がかかるんだぞ!王都で過ごすにも金がいるんだ。今日はその資金徴収も兼ねていたんだぞ!」
ウラスは、そんな妻の態度にイラつき、低く唸るように妻に告げた。
そんなウラスに妻は怯える事もなく、「ええ、知ってますわ」と妻の方は平然と返す。
「知っているわ。お金がいるのよね?あの人に渡す為に・・」
妻は、そう口にしながら白い眼を夫ウラスに向ける。
「お前、知っていたのか?」
妻の言葉に、ウラスは目を瞠るのだった。
「ええ、知っていたわ。お金がいるのでしょう?だから、あなたは、お金の為に、大事な娘の縁談も平気で潰したのよねぇ?」
妻はフフフ・・と夫に意味深な笑いを見せてきた。
「知らないと思ってたんですか?まあ、私も、あの坊やは好きじゃなかったから、縁談はどうなっても良かったのよ。でもね、思わせぶりに時間だけ過ごさせられたら、女は困るのよ。他所の娘なら、私も気にはしないわ。だけどね?うちの娘を犠牲にされては、私も腹が立って。だから、あんな坊やよりもいい男を探そうと、王都で縁談探しに費やそうとしてたら、選挙如きで、田舎に呼ばれるわで。あなたにも本来なら、娘の縁談を壊したのだから、ちゃんと責任を取って貰いたいくらいなのに」
妻は、綺麗にまとめていた髪を解きながら、夫を見やる。
「お前、その話は誰から聞いたんだ!」
そんな妻の言葉を聞いて、ウラスは、妻に強い口調で問い詰めだした。
しかし、妻は、夫の態度には少しも怯まずに、釈然とした態度でやり過ごす。
「そんなの、見ていたらわかるわ。あの一家との付き合いは長いのよ。最近のあなたたちの様子はおかしかったもの。どうせ、資金提供を渋られたのでしょ?そこに、あの息子が娘に見せる態度の悪さもあって、お金を払わせるために、あの坊やを上手くハメてやったんでしょう?あそこの息子を!」
そう言って、妻は、ウラスをこれまで以上に睨みつける。
「言っときますが、あの娘は何も知らないわよ。父が自分の婚姻先を潰したなんて。あなたも、あの人も、本当にクズね」
吐き捨てる様に、妻はウラスに告げ、そして、あることを強請るのだった。
「ねぇ、今度は邪魔しないでね。どうせなら、あの坊やみたいに、ハロルド商会の会頭もハメてくださいな。今度は、娘の幸せの為に、娘との婚姻が叶うように」
ウラスの妻は、それだけ伝えると、ひとつ欠伸をして、「私も休みますわ」と夫を残して、寝室へ向かった。
そんな妻の姿を眺めながら、ウラスは唇を噛みしめた。
「クソ!」
ドン!と大きな音をテーブルに打ち立て、ウラスは今度はそのテーブルの脚を蹴った。
今日のパーティーで金を集める算段だった。
ケーシーの激励会と称して、王都に金を送る為の大事な資金集めだったのに。
それを妻たちに潰された。
「クソぉ!!」
最近、思う様に金が集まらない。なのに、金の要求は日々高まるばかりだ。
これも全て、「平民議員」の地位が低いからだ!
王都で平穏に「平民議員」が暮らす為には金がいる。
「あぁ。どうしたらいい・・」
ウラスは髪を掻きむしり、項垂れる。
このままでは、あの人は許してくれないだろう。
元々、あいつのこともそうだった。
売り上げが少なくなっているからと、支援金を拒み出したから、あの人が動いたんだ。
あいつの息子には、たまたま偶然仕掛ける形になっただけだが、結果は、あの人の思惑通り上手くいった。
ただ、うちの娘は、どうやら、日々話す言葉とは違い、幼馴染だったあいつの息子と将来は一緒になると信じていたみたいで、破断になったことで塞ぎこんでしまった。
娘を思うと、多少の罪悪感はある、だが、我が家には「平民議員」としての道しかない。
この道を維持する為には、あの人の力がどうしてもいるんだ。
その為には、あの人が求めるものは用意しなければならない。
「はあ」
ウラスは大きなため息をつく。
今日は、あの人が寄こした、いつものあの女がトウの町に来ている。
「どうする・・取り敢えず、今、手元の資金を手渡すしかないか。その後は、あの人とも相談していくしかないな」
ウラスは、そう呟いて、重い体を引きずり、今日、集まった金を確かめる為に、書斎へ向かって行ったのだった。
主役のケーシーは、どうこの場を取り繕えば良いのかもわからず、呆然としている。
まさかの、家族による妨害、失態で、選挙戦を行っていく上での大事なパーティーが台無しだ。
動けない自分に代わり、父ウラスにより集った人たちへ謝罪が行われ、この日のパーティーは早々にお開きとなった。
「信じられない!今日がどういったものだか、わかっていなかったのか!もう、本当にどうしてくれるんだ!」
身内だけが残った場で、ケーシーが、漸く声を発したかと思ったら、どうやら怒りが沸点に達したようで、ここに来て、母と姉妹に向けて怒鳴り散らしたのであった。
だが、母も姉妹も反省の色は全くない。
「お兄さまぁ、確かにぃ、エディが来ずぅ、今夜はぁ、失敗したかも知れないですがぁ、お姉さまがエディと婚姻さえすればぁ、資金も集まりぃ、このトウの町は実質ぅ、全てが我が家のものになりますのよぉ」
妹の方は、言葉の最後には満面の笑みまで見せだしており、自分たちの行動を改める様子は全くない。
それには、ケーシーは只々、呆れて言葉が出ないでいた。
「お前と言う奴は・・・、もう、俺は疲れたので休む」
ケーシーは、家族を睨みつけ、また、ドカドカと足を踏み鳴らし、怒りをこれでもかと表わすように自室へ戻って行った。
「そんなに怒らなくても」
ケーシーの態度に、姉もぶつくさと呟いた。
そんな姉妹の姿に、父ウラスは顔を歪めて、無言のままじろりと睨みつけてきた。
『うっ!お父様までも!ヤバいかも!』
『ひぇーー、何かぁ、怒っているみたいですわぁ!』
その視線に、姉妹は、ここにきて、父がかなりお怒りである事に少し怯え、「私たちも疲れましたので・・」と言いながら、バタバタと騒がしい音をさせながら、彼女たちも部屋に引き戻っていった。
「そんなに怒ることですの?いつもなら、私達も呼び寄せずに、パーティー事態を済ませる程なのに」
ウラスの妻も、たかだかパーティーでのことに大げさだと思っているようで悪びれたそぶりもない。
「対抗馬がいても、いつもと変わらないのでしょう?」
そう言いながら、妻は、さも疲れたと言わん顔をウラスに向けてみせた。
「お前、選挙には、「平民議員」には、金がかかるんだぞ!王都で過ごすにも金がいるんだ。今日はその資金徴収も兼ねていたんだぞ!」
ウラスは、そんな妻の態度にイラつき、低く唸るように妻に告げた。
そんなウラスに妻は怯える事もなく、「ええ、知ってますわ」と妻の方は平然と返す。
「知っているわ。お金がいるのよね?あの人に渡す為に・・」
妻は、そう口にしながら白い眼を夫ウラスに向ける。
「お前、知っていたのか?」
妻の言葉に、ウラスは目を瞠るのだった。
「ええ、知っていたわ。お金がいるのでしょう?だから、あなたは、お金の為に、大事な娘の縁談も平気で潰したのよねぇ?」
妻はフフフ・・と夫に意味深な笑いを見せてきた。
「知らないと思ってたんですか?まあ、私も、あの坊やは好きじゃなかったから、縁談はどうなっても良かったのよ。でもね、思わせぶりに時間だけ過ごさせられたら、女は困るのよ。他所の娘なら、私も気にはしないわ。だけどね?うちの娘を犠牲にされては、私も腹が立って。だから、あんな坊やよりもいい男を探そうと、王都で縁談探しに費やそうとしてたら、選挙如きで、田舎に呼ばれるわで。あなたにも本来なら、娘の縁談を壊したのだから、ちゃんと責任を取って貰いたいくらいなのに」
妻は、綺麗にまとめていた髪を解きながら、夫を見やる。
「お前、その話は誰から聞いたんだ!」
そんな妻の言葉を聞いて、ウラスは、妻に強い口調で問い詰めだした。
しかし、妻は、夫の態度には少しも怯まずに、釈然とした態度でやり過ごす。
「そんなの、見ていたらわかるわ。あの一家との付き合いは長いのよ。最近のあなたたちの様子はおかしかったもの。どうせ、資金提供を渋られたのでしょ?そこに、あの息子が娘に見せる態度の悪さもあって、お金を払わせるために、あの坊やを上手くハメてやったんでしょう?あそこの息子を!」
そう言って、妻は、ウラスをこれまで以上に睨みつける。
「言っときますが、あの娘は何も知らないわよ。父が自分の婚姻先を潰したなんて。あなたも、あの人も、本当にクズね」
吐き捨てる様に、妻はウラスに告げ、そして、あることを強請るのだった。
「ねぇ、今度は邪魔しないでね。どうせなら、あの坊やみたいに、ハロルド商会の会頭もハメてくださいな。今度は、娘の幸せの為に、娘との婚姻が叶うように」
ウラスの妻は、それだけ伝えると、ひとつ欠伸をして、「私も休みますわ」と夫を残して、寝室へ向かった。
そんな妻の姿を眺めながら、ウラスは唇を噛みしめた。
「クソ!」
ドン!と大きな音をテーブルに打ち立て、ウラスは今度はそのテーブルの脚を蹴った。
今日のパーティーで金を集める算段だった。
ケーシーの激励会と称して、王都に金を送る為の大事な資金集めだったのに。
それを妻たちに潰された。
「クソぉ!!」
最近、思う様に金が集まらない。なのに、金の要求は日々高まるばかりだ。
これも全て、「平民議員」の地位が低いからだ!
王都で平穏に「平民議員」が暮らす為には金がいる。
「あぁ。どうしたらいい・・」
ウラスは髪を掻きむしり、項垂れる。
このままでは、あの人は許してくれないだろう。
元々、あいつのこともそうだった。
売り上げが少なくなっているからと、支援金を拒み出したから、あの人が動いたんだ。
あいつの息子には、たまたま偶然仕掛ける形になっただけだが、結果は、あの人の思惑通り上手くいった。
ただ、うちの娘は、どうやら、日々話す言葉とは違い、幼馴染だったあいつの息子と将来は一緒になると信じていたみたいで、破断になったことで塞ぎこんでしまった。
娘を思うと、多少の罪悪感はある、だが、我が家には「平民議員」としての道しかない。
この道を維持する為には、あの人の力がどうしてもいるんだ。
その為には、あの人が求めるものは用意しなければならない。
「はあ」
ウラスは大きなため息をつく。
今日は、あの人が寄こした、いつものあの女がトウの町に来ている。
「どうする・・取り敢えず、今、手元の資金を手渡すしかないか。その後は、あの人とも相談していくしかないな」
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