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第1部 第27話

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ウラスの妻と娘らをカフェテリアの席から見送ってから、ロビンは足早に掛けて、アッシュの事務所に転がり込んだ。



その姿に、アッシュとラドは顔を見合わせてから、ロビンに尋ねた。



すると、ロビンが先程のウラスの妻と娘たちとの会話を聞かせてくれたのだった。



アッシュは、目を見開き、顔を青ざめさせていく。



どうやら、アッシュはあの姉妹のことを知っているようで、「なんで、私が婚姻しないといけないんだ!」と、顔面を青くさせて叫んでいた。



一方、ラドはいつもの美しい貌を歪めて・・・大笑いをしだした。



「えぇ、凄い方ですね。いやぁ、個人的に友だちになりたいなぁ。いや、本当に素敵な姉妹ですね。特に、姉がいい!」



ラドから出る言葉に、ロビンもアッシュも驚いて、顔を見合わせる。



「えっと、ラドさん?何故に笑うのでしょうか?」



「そうだよ!僕は吐きそうになったんだよ!頭がおかしいでしょ!あの三人!」



二人にあれこれ言われるが、ラドは、まだ笑っている。



怖いぐらいに笑顔を浮かべて・・・



その状況に、ロビンが首を掲げる。



『あれ?こいつ、何かおかしいぞ・・・』



ラドがいつになく表情にだして笑う仕草に、ロビンは怪しく思う。



「いやぁ、個人的にいい仕事してくれてるなぁと思いまして」



その言葉に、アッシュは眉間に大きく皺を刻み、ラドが今発言したことで、ますます解らなくなってきていた。



しかし、ロビンは自分の勘に確信を得る。



『やっぱり、こいつ、何かやってるな?これは、ちょっと探った方が良いかもな?』



「ううん?ラド、その良い仕事って何さ?何か別のこともしているわけなの?」



ロビンが、わざと顔に疑問を浮かべたようにしながら、問い掛けてみた。



しかし、ラドも、それに対して極上の笑みを零してみせるが、ロビンの問いには返そうとはしない。



その二人の姿によくわからないが、何故かアッシュは体に悪寒を感じた。



『なんだ、急に寒気がし出したような・・・まさか、ウラスの娘たちのせいか?』



なんて、体に受けた不快さは、あらぬ解釈となってしまい、アッシュにはラドとロビンの腹の探り合いが見えなかった。



「ところでさ、お義兄さんたちはどうだったんですか?」



変な雰囲気であった室内の様子を吹き消すかのように、ロビンが今日のアッシュたちの行動について問い掛けてきた。



それに、アッシュが丁寧に応えていった。



まずは、父ウォルトが勤める職場でのことを話した。



「そうだったんですか・・」



ロビンも話の内容に、視線を落として見せる。



「まあ、ラドさんのお陰で、まだ黒にはなってはないんだけどもね・・」



アッシュがチラリとラドを見るが、先程と違い、ラドは平然としている。



「その後は、気持ちを上げる為に、ケーシーたちに反発している感じのところを中心に何箇所か回った。皆、口を揃えて激励してくれた」



アッシュは、エディから渡された「重要」書類にあった名前の一覧を、ロビンにも見せて、今日、訪問した箇所を指差して教える。



「結構、回られたんですね?」



アッシュが差し示す名前を、ロビンは数えながらそう告げた。



「まあ、中にはどちらとも言えない人も居て、私が来たから、愛想を向けた人もいてそうだがな・・」



アッシュは肩をすぼめて、そう話した。



「まあ、なかなか難しいですよね?人の裏なんて見る事は・・」



そう言いながら、今度は、ロビンがラドを見つめる。



ラドはその視線に対して薄く笑い「そうですよ。人は何を考えているかなんて、わかりませんからね」と囁く。



アッシュは、ここでまた、嫌な空気を感じてしまい、ラドとロビンに「今日は疲れたから帰ろうか!」と提案してみた。



すると、ロビンがその言葉にすぐに飛びついてくれたので、アッシュは少し嫌な空気を消せて、安堵した。



そして、その勢いのまま、執務机から立ち上がろうとした時、ラドが声を掛けてきたのだ。



「あぁそうそう、明日なんですが、個人的にお休みを頂きたくて」



ラドがにこやかに告げるので、アッシュはつられて「どうぞ!」と頷きかけたが、それをロビンが制したのである。



「何言ってるの!こんな大事な時に、休みなんかある訳ないでしょう!」



ロビンがいつになく突っかかるので、アッシュも驚いて、暫し、呆然としていたが。



「まあでも、何か用があるのかもしれないじゃないか?」



アッシュはラドの事を思い、ロビンを諭すが、ロビンはいつになく頑なに拒む。



「ダメですよ!選挙なんですよ。負けたら、どうするんですか!ウラスの娘と婚姻になっても良いんですか!」



ロビンが目を吊り上げて凄みだす。



「こ・・婚姻は嫌だけど、でも、休みがないと体も壊れるじゃないか・・」



アッシュも正論で返すが、なかなかに引かないロビンの様子に、とうとうラドが休みの許可を引き下げたのだった。



「わかりました。今は我慢の時ですね。いいでしょう。選挙に全力投球しますよ」



ラドが美しく微笑む。その姿に、アッシュは申し訳なさを覚え、ひたすら謝る。



そんなアッシュとラドの姿を見ながら、ロビンは訝しげにラドを睨む。



しかし、ラドはその視線も流してみせる。



『こいつ、何を企んでるんだ?』



ロビンはラドをじーっと見ながら、「ラド、わかってくれて良かったよ」といつもの笑顔を浮かべた。

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