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第1部 第25話
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今日も、ロビンは、例のこの町に似つかわしくないカフェテリアで、薫り高いコーヒーを頂いていた。
しかし、彼、ロビンが、ケーシー事務所が見渡せる例の特等席に着いたのは、昼を過ぎてからの時間であった。
その前は、午前の時間には、昨日のメイから聞いた話もあり、実家の方へ出向いたのだった。
実家兼、自宅となる門の入り口に辿りは着いたが、兄エディとの約束もあり、中には入ることは出来ないので、仕方なくうちの門などを守る守衛に声を掛ける。
「あれ、ロビン様じゃないですか?」
ロビンの姿を目にした守衛が、声を掛けてくれた。それを幸いに思い、ロビンが、守衛にこのハロルド商会の女主人である母への言伝を頼んだのであった。
「母さん、今日はまだここに居るかな?居るなら、祖父さんのところで、僕が待っていると伝えて欲しいんだ?」
ロビンの言葉に、守衛は頷き、「承知しました」と告げてから、屋敷の使用人へ伝えに行ってくれた。
その姿を確認してから、ロビンは実家の門に背を向けて歩き出した。
ロビンが次に訪れたのは、ロビンの母方の祖父が住まう邸宅である。
ロビンの母の実家も商家である。
ただ、ハロルド商会の様に、多岐に渡り品を集めて商売しているのではなく、母の実家は、紐の染色とそれに伴う飾り紐などの制作を主にした工房と工房で制作された品の販売をしている、どちらかと言うと、伝統工芸のようなものを営んでいる。
そんな母の実家とハロルド商会が、事業拡大の為に手を結ぶ手段としたのが、ロビンたちの父ジェームスと母イボンヌの政略結婚であった。
貴族でもない、平民の同士の政略結婚。どちらかと言うと、お見合いじゃないの?とロビンは思ったが、当人たちがそう言うのだから、政略結婚らしい。
そんな二人が親なもんだから、エディも一時期は結婚は利益を生むものでなければならないと思い込んでいたんだろうなと、今ならわかる。
幸い、ロビンには、両親は色々なものの期待はいつしか持つ事をやめていってくれた。そのお陰で、色々と自由にさせて貰ってきた。
学校の選択も、自分の結婚相手も・・・
その分、兄エディがいろいろと背負ってはいるのだが。
そんなことを考えながら、ロビンは、大好きな祖父のところに転がり込んだ。
「ごめん、遊びにきちゃった」
ニコニコといつもの笑顔を祖父に向ける。
勝手知ったる我が家の様に、ロビンは室内に入り寛ぎだす。
それを見た祖父は「今日は、お前さんだけかい?」と尋ねてみせる。
ロビンがその返事に、少し顔を曇らせて「また今度、子どもも連れてくるよ」と告げたのだった。
祖父はその言葉に、ウンウンと頷いて、「まぁ、ゆっくりとしていくがえぇ」と言ってから、日課の散歩に使用人と出かけていった。
そう、ロビンは小さな頃から、この祖父を慕い、遊びに来ていたのだ。
今は、何かあるとメイやフェイが一緒だから、ウォルトの家に転がり込んでいるが、メイと結婚する前はよくここへ来ていた。
祖父は、事業から完全に手を引いて隠居生活で、代わりに母の弟が稼業を引き継いでいる。
そのうち、ロビンの従兄弟の誰かが伯父の後を継ぐのだろう。
ロビンが、祖父の家でお茶を頂いていると、自分がいる部屋の外、廊下が少し騒がしく聞こえてくる。
その声が一度止んだと思ったら、ロビンがいる部屋の扉がノックもなく開かれた。
現れたのは、呼び出した相手、母のイボンヌである。
「あら、お前、元気だったのね?」
母はロビンの顔を見るなり、顔を顰めだす。
「久々に会う息子にその言葉、あんまりじゃないですか?」
ロビンも同じく、顔を不満気にして応える。
「で、私に用とからしいけれど。何ごとかしら?お前と違い、私は忙しいのよ」
そう言いながら、イボンヌはソファーに腰を沈める。
その物言いに、ロビンは舌打ちする。
『よく言うな。メイに会った時点で、僕が顔出す計算だったくせに』
フンっと、一度、鼻を鳴らしてから、ロビンが母に向き直り話をし始めた。
「昨日、メイと会ったようだね?メイから色々と聞いたよ。兄さんたちのこととか・・」
ロビンが、目を細めながら、母を睨みつけるがイボンヌはそれをやり過ごす。
「知らないよ。ある事ない事言って、兄さんがキレても」
そのロビンの言葉に母イボンヌの肩が、ピクリと跳ねる。
それを見ながら、尚もロビンが母に釘を打ち込んでいく。
「離縁なんてありえないよ。するわけない。しない為に、あれだけ仕事に邁進してたんじゃないかな?」
ロビンは兄を思いながら、母へ猛攻撃をする。が、ここでイボンヌがロビンの言葉を振り切り、反撃に出た。
「良く言うわね。今回の騒動のそもそもの原因は、ロビンお前にあるのよ。ローサは心が壊れたのよ。私だって、ローサにはこれまで色々と話をしてきたのよ。それをお前がぶった切ったのよ。どう責任をとるつもり!」
イボンヌの発する言葉には、ロビンも返す言葉が浮かばない。
「それは、そうなのかも知れませんが・・」
項垂れるロビンに、引き続き、イボンヌが容赦なく言葉のナイフを突きつける。
「お前わかっているの?エディたちが離縁したら、ハロルド商会にも大きな影響がでるのよ。いつまでも、のんびりとお前もメイもしていられないことくらい解るわよね?お前の言う通り、エディは誰にも文句を言わせない為に仕事をしてきたわ。それもこれも、ローサの為に。でも、ローサは、あの子は・・・」
イボンヌは途中で口ごもり、涙ぐみだした。
「これでも、ローサとは4年も共に暮らし、義娘と思ってきたのよ」
今日のこの会話で、母なりに義姉を心配してることがわかった。
「母さん、今回のことは不用意に話した僕が確かに悪い。兄さんにもそれは謝った。そしたら、兄さんが、夫婦の問題だから口出すな!って言ってくれて。離縁については、わからないって言ってたけど。兄さん、義姉さんが自分には必要だと言ってたんだ。その時は、兄さん自身になのか、仕事の為になのかわからなかったけど、今なら、兄さん自身の為だけにって意味だとわかるよ」
母は、尚もロビンを睨みつけながら、話を聞いている。
「だからさ、拗らした僕が言うのも変だけど、あの二人を信じようよ、ねっ?」
ロビンは旨くまとめ上げたと思って、にこりと微笑み返すが、それぐらいでは、母は騙せれなかった。
「そうねぇ、エディなら、きっとこの苦境も乗り切るでしょうね。あの子は、こちらが思う以上の成果をいつも上げてくれますからね」
母の言葉から、母が兄たちについて納得したとロビンは勝手に思い、漸く一人安堵しだしたのだが、
「でもね、ロビン、あなたも、もう一児の父親、メイもですが、いつまでもエディにぶら下がるだけではいけないわよね?今回のことで、私もお前に対して、きちんとした大人にさせねばと思い直したのよ。だから、自宅に戻ったら、あなたたち夫婦を改めて教育することにしたの。わかったわね!」
イボンヌは、いつもロビンがしているようなにこやかな笑顔を浮かべたのだった。
勿論、ロビンは開いた口が塞がらず、暫く、固まっていた。
「待ってよ!なんで、僕もなのさ!メイがって話じゃなかったの?」
先程の母の言葉を漸くかみ砕いたロビンは、慌ててイボンヌに縋りつく。
「お前の教育のが重要よ!フェイがお前の様な大人になったら困るからね。父親がしっかりせねば、子にも悪影響よ」
はァとため息をついた母は、手元にあった扇子を広げて、パタパタと仰ぎだす。
「いい事?ロビン、あなたにもハロルド商会の者として、これからは、しっかりと自覚をもって行動し働いて貰いますからね!」
「今も、僕はそれなりに頑張ってやっています!」
フンと鼻を鳴らしたロビンは、母をギロリと睨む。
「まぁ、それはそれは頼もしいこと」
母イボンヌは、不敵な笑みをロビンに向ける。
「あっ、僕ね、今、とっても忙しいんだよ。ホラッ!、メイのお義兄さんが「平民議員」になることになったから、その手伝いとか色々とね。だから、め、め、メイだけ先に色々と教えてあげてよ。ねっ?」
ロビンはあろうことか、メイを生贄に差しだす提案を試みる。
汗をたらりと流して、ロビンは母に直訴してみたが、「家族揃って、早く帰ってらっしゃいね」と言われてしまったのだ。
そう、これは、母イボンヌからの大きなお仕置きの始まりだったのである。
しかし、彼、ロビンが、ケーシー事務所が見渡せる例の特等席に着いたのは、昼を過ぎてからの時間であった。
その前は、午前の時間には、昨日のメイから聞いた話もあり、実家の方へ出向いたのだった。
実家兼、自宅となる門の入り口に辿りは着いたが、兄エディとの約束もあり、中には入ることは出来ないので、仕方なくうちの門などを守る守衛に声を掛ける。
「あれ、ロビン様じゃないですか?」
ロビンの姿を目にした守衛が、声を掛けてくれた。それを幸いに思い、ロビンが、守衛にこのハロルド商会の女主人である母への言伝を頼んだのであった。
「母さん、今日はまだここに居るかな?居るなら、祖父さんのところで、僕が待っていると伝えて欲しいんだ?」
ロビンの言葉に、守衛は頷き、「承知しました」と告げてから、屋敷の使用人へ伝えに行ってくれた。
その姿を確認してから、ロビンは実家の門に背を向けて歩き出した。
ロビンが次に訪れたのは、ロビンの母方の祖父が住まう邸宅である。
ロビンの母の実家も商家である。
ただ、ハロルド商会の様に、多岐に渡り品を集めて商売しているのではなく、母の実家は、紐の染色とそれに伴う飾り紐などの制作を主にした工房と工房で制作された品の販売をしている、どちらかと言うと、伝統工芸のようなものを営んでいる。
そんな母の実家とハロルド商会が、事業拡大の為に手を結ぶ手段としたのが、ロビンたちの父ジェームスと母イボンヌの政略結婚であった。
貴族でもない、平民の同士の政略結婚。どちらかと言うと、お見合いじゃないの?とロビンは思ったが、当人たちがそう言うのだから、政略結婚らしい。
そんな二人が親なもんだから、エディも一時期は結婚は利益を生むものでなければならないと思い込んでいたんだろうなと、今ならわかる。
幸い、ロビンには、両親は色々なものの期待はいつしか持つ事をやめていってくれた。そのお陰で、色々と自由にさせて貰ってきた。
学校の選択も、自分の結婚相手も・・・
その分、兄エディがいろいろと背負ってはいるのだが。
そんなことを考えながら、ロビンは、大好きな祖父のところに転がり込んだ。
「ごめん、遊びにきちゃった」
ニコニコといつもの笑顔を祖父に向ける。
勝手知ったる我が家の様に、ロビンは室内に入り寛ぎだす。
それを見た祖父は「今日は、お前さんだけかい?」と尋ねてみせる。
ロビンがその返事に、少し顔を曇らせて「また今度、子どもも連れてくるよ」と告げたのだった。
祖父はその言葉に、ウンウンと頷いて、「まぁ、ゆっくりとしていくがえぇ」と言ってから、日課の散歩に使用人と出かけていった。
そう、ロビンは小さな頃から、この祖父を慕い、遊びに来ていたのだ。
今は、何かあるとメイやフェイが一緒だから、ウォルトの家に転がり込んでいるが、メイと結婚する前はよくここへ来ていた。
祖父は、事業から完全に手を引いて隠居生活で、代わりに母の弟が稼業を引き継いでいる。
そのうち、ロビンの従兄弟の誰かが伯父の後を継ぐのだろう。
ロビンが、祖父の家でお茶を頂いていると、自分がいる部屋の外、廊下が少し騒がしく聞こえてくる。
その声が一度止んだと思ったら、ロビンがいる部屋の扉がノックもなく開かれた。
現れたのは、呼び出した相手、母のイボンヌである。
「あら、お前、元気だったのね?」
母はロビンの顔を見るなり、顔を顰めだす。
「久々に会う息子にその言葉、あんまりじゃないですか?」
ロビンも同じく、顔を不満気にして応える。
「で、私に用とからしいけれど。何ごとかしら?お前と違い、私は忙しいのよ」
そう言いながら、イボンヌはソファーに腰を沈める。
その物言いに、ロビンは舌打ちする。
『よく言うな。メイに会った時点で、僕が顔出す計算だったくせに』
フンっと、一度、鼻を鳴らしてから、ロビンが母に向き直り話をし始めた。
「昨日、メイと会ったようだね?メイから色々と聞いたよ。兄さんたちのこととか・・」
ロビンが、目を細めながら、母を睨みつけるがイボンヌはそれをやり過ごす。
「知らないよ。ある事ない事言って、兄さんがキレても」
そのロビンの言葉に母イボンヌの肩が、ピクリと跳ねる。
それを見ながら、尚もロビンが母に釘を打ち込んでいく。
「離縁なんてありえないよ。するわけない。しない為に、あれだけ仕事に邁進してたんじゃないかな?」
ロビンは兄を思いながら、母へ猛攻撃をする。が、ここでイボンヌがロビンの言葉を振り切り、反撃に出た。
「良く言うわね。今回の騒動のそもそもの原因は、ロビンお前にあるのよ。ローサは心が壊れたのよ。私だって、ローサにはこれまで色々と話をしてきたのよ。それをお前がぶった切ったのよ。どう責任をとるつもり!」
イボンヌの発する言葉には、ロビンも返す言葉が浮かばない。
「それは、そうなのかも知れませんが・・」
項垂れるロビンに、引き続き、イボンヌが容赦なく言葉のナイフを突きつける。
「お前わかっているの?エディたちが離縁したら、ハロルド商会にも大きな影響がでるのよ。いつまでも、のんびりとお前もメイもしていられないことくらい解るわよね?お前の言う通り、エディは誰にも文句を言わせない為に仕事をしてきたわ。それもこれも、ローサの為に。でも、ローサは、あの子は・・・」
イボンヌは途中で口ごもり、涙ぐみだした。
「これでも、ローサとは4年も共に暮らし、義娘と思ってきたのよ」
今日のこの会話で、母なりに義姉を心配してることがわかった。
「母さん、今回のことは不用意に話した僕が確かに悪い。兄さんにもそれは謝った。そしたら、兄さんが、夫婦の問題だから口出すな!って言ってくれて。離縁については、わからないって言ってたけど。兄さん、義姉さんが自分には必要だと言ってたんだ。その時は、兄さん自身になのか、仕事の為になのかわからなかったけど、今なら、兄さん自身の為だけにって意味だとわかるよ」
母は、尚もロビンを睨みつけながら、話を聞いている。
「だからさ、拗らした僕が言うのも変だけど、あの二人を信じようよ、ねっ?」
ロビンは旨くまとめ上げたと思って、にこりと微笑み返すが、それぐらいでは、母は騙せれなかった。
「そうねぇ、エディなら、きっとこの苦境も乗り切るでしょうね。あの子は、こちらが思う以上の成果をいつも上げてくれますからね」
母の言葉から、母が兄たちについて納得したとロビンは勝手に思い、漸く一人安堵しだしたのだが、
「でもね、ロビン、あなたも、もう一児の父親、メイもですが、いつまでもエディにぶら下がるだけではいけないわよね?今回のことで、私もお前に対して、きちんとした大人にさせねばと思い直したのよ。だから、自宅に戻ったら、あなたたち夫婦を改めて教育することにしたの。わかったわね!」
イボンヌは、いつもロビンがしているようなにこやかな笑顔を浮かべたのだった。
勿論、ロビンは開いた口が塞がらず、暫く、固まっていた。
「待ってよ!なんで、僕もなのさ!メイがって話じゃなかったの?」
先程の母の言葉を漸くかみ砕いたロビンは、慌ててイボンヌに縋りつく。
「お前の教育のが重要よ!フェイがお前の様な大人になったら困るからね。父親がしっかりせねば、子にも悪影響よ」
はァとため息をついた母は、手元にあった扇子を広げて、パタパタと仰ぎだす。
「いい事?ロビン、あなたにもハロルド商会の者として、これからは、しっかりと自覚をもって行動し働いて貰いますからね!」
「今も、僕はそれなりに頑張ってやっています!」
フンと鼻を鳴らしたロビンは、母をギロリと睨む。
「まぁ、それはそれは頼もしいこと」
母イボンヌは、不敵な笑みをロビンに向ける。
「あっ、僕ね、今、とっても忙しいんだよ。ホラッ!、メイのお義兄さんが「平民議員」になることになったから、その手伝いとか色々とね。だから、め、め、メイだけ先に色々と教えてあげてよ。ねっ?」
ロビンはあろうことか、メイを生贄に差しだす提案を試みる。
汗をたらりと流して、ロビンは母に直訴してみたが、「家族揃って、早く帰ってらっしゃいね」と言われてしまったのだ。
そう、これは、母イボンヌからの大きなお仕置きの始まりだったのである。
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