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第1部 第9話
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転がるように、アッシュの手から逃げ出してきたロビンは、我も忘れて駆け出した。
どこをどう巡ったのかはわからないが、手には、アッシュの顔が描かれた紙の束が詰まる箱を抱えて走るロビン。
走りながら、どうしたものかと思うが、特に名案が浮かぶことなく彷徨う。
こんな時に頼れる人はと考えれば、浮かぶのはロビンが尊敬するあの人である。
そうと思えば、ロビンの足は、ハロルド商会へ方向を定める。
ハロルド商会では、今日も会頭であるエディが高級なシャツを着込んで、執務室で一人書類仕事をテキパキと熟している。
そんないつものありふれた日常の雰囲気の中、扉を叩く音がする。
エディは顔を上げて、自分の一番信頼できる部下であるカルロの入室を許可する。
「会頭、弟君が今日も見えられていますよ」
入室してきたカルロも少し呆れた顔をしながら、会頭であるエディに用件を告げた。
カルロの言葉に顰め面になりながらも、ロビンの面会の許可をエディは仕方なく言い渡したのだった。
「兄さん、ごめん」
カルロが出て行ったと思ったらすぐに、ロビンが執務室に顔を出してきたので、もう一度、エディは顔を顰める。
「今日は、何だ!」
自分は忙しいんだと見せつける様に、机の上に置かれている書類を手で再度束ね、机の面を使ってわざと音を鳴らしてから揃えたりしたが、ロビンは、その動作も気にすることなく話し出す。
「昨日のことなんだけど・・」
ロビンの言葉に、ため息が零れる。
「お前、まだ言ってるのか?」
呆れて、ロビンの話が聞けそうにない。帰らそうかと思っていると、
「うん、あれから町をうろついてたんだ、で、兄さんの言っていたことがわかったと言うかで・・」
ロビンは抱えたままになっていた箱から紙を一枚取り出して、エディに手渡してから、昨日あった大まかな話を伝えだしていった。
昨日、行く当てなく彷徨うロビンは、町の皆が、このトウから出ている「平民議員」に良くない感情をもってることを聞いた。
また、今回立候補しているのは、その一族の奴で、こいつも、頗る評判が悪い奴らしいこと、出来るなら、他の者がなってほしいと思ってる事などを聞く。
それを聞いた自分は、皆の救世主となる人物(メイの父)を知っていることを思わず伝えたのだ。
だが、伝えれば伝えるほど、メイの父ではなく、アッシュの話題になっていったこと。
しかも、アッシュは有名人で評判が良くて、あっという間に、「その紙」が出来上がったことを、最後は自慢げに話しだした。
エディは、手にした紙を見つめる。
「で、これを作ったから、費用をだせと言うのか?」
兄が、紙に描かれているアッシュの顔を指で弾いてから、ロビンを睨みつける。
「お前、メイの父親の名前言ってみろ?」
鋭い目でロビンをさらに睨むエディに、ロビンは顔を背けだした。
『こいつ、義理の親の名、忘れてるな・・』
ロビンの愚かさには呆れを覚えるが、これは、今に始まったことでないので、エディはこれ以上は突っ込んでの質問はやめた。
「昨日も言った。私は勝算がないものにはのらない」
エディの冷たい言葉に、ロビンは顔を上げて、何故かニヤリと口角をあげて見せる。
「勝算はあるはずですよ。兄さんだって、アッシュ義兄さんならって言いましたよね?僕、エディ兄さんが言うなら間違いないと思うんです!」
ロビンが勝ち誇った顔を向けて、エディに食い下がる姿に、当のエディが目を瞠る。
『おいおい、昨日とはまるで違うもの言いじゃないか・・』
ロビンの反応に驚きながらも、その口調に、エディは何故か心を揺さぶられ出していく。
「このまま、紙切れ、ゴミになってしまうのはどうかと思います。それに、家を出る際に貰ったお金で支払った分以外の支払いは、僕の素性からハロルド商会へ請求が来ると思うんですよ。もう、ハロルド商会の名が出ている状態で、このまま引き下がるのはどうかと思うんですが?」
いつになく、饒舌なロビンの話ぶりに、エディは感心までしている。
「ほぅ、お前はここで手を引けば、ハロルド商会、すなわち、私が腑抜けであると知らしめ、そして、名を落とすと言いたいんだな?」
エディが手を組み、顎をその組手に乗せた状態でロビンに問いただす。
「そこまでは。ただ、兄さんなら、この状況なら勝ちにいくんじゃないかと。それに、ハロルド商会に利益を持たせるんじゃないかと」
ロビンはにこりといつもの笑みを浮かべて見せると、それを見た、エディはフンと鼻で笑って返した。
「アッシュくんは納得済みなのか?」
エディが確認の為に、ロビンに問いかけるが、ロビンは頭を振るだけだった。
「わかった。アッシュくんと会おう。そして、彼には「平民議員」になって貰おう。資金は、ハロルド商会が出す」
エディが不敵な笑みを浮かべていうと、ロビンは大きく頷き、兄エディへの尊敬の念を更に深めたのだった。
どこをどう巡ったのかはわからないが、手には、アッシュの顔が描かれた紙の束が詰まる箱を抱えて走るロビン。
走りながら、どうしたものかと思うが、特に名案が浮かぶことなく彷徨う。
こんな時に頼れる人はと考えれば、浮かぶのはロビンが尊敬するあの人である。
そうと思えば、ロビンの足は、ハロルド商会へ方向を定める。
ハロルド商会では、今日も会頭であるエディが高級なシャツを着込んで、執務室で一人書類仕事をテキパキと熟している。
そんないつものありふれた日常の雰囲気の中、扉を叩く音がする。
エディは顔を上げて、自分の一番信頼できる部下であるカルロの入室を許可する。
「会頭、弟君が今日も見えられていますよ」
入室してきたカルロも少し呆れた顔をしながら、会頭であるエディに用件を告げた。
カルロの言葉に顰め面になりながらも、ロビンの面会の許可をエディは仕方なく言い渡したのだった。
「兄さん、ごめん」
カルロが出て行ったと思ったらすぐに、ロビンが執務室に顔を出してきたので、もう一度、エディは顔を顰める。
「今日は、何だ!」
自分は忙しいんだと見せつける様に、机の上に置かれている書類を手で再度束ね、机の面を使ってわざと音を鳴らしてから揃えたりしたが、ロビンは、その動作も気にすることなく話し出す。
「昨日のことなんだけど・・」
ロビンの言葉に、ため息が零れる。
「お前、まだ言ってるのか?」
呆れて、ロビンの話が聞けそうにない。帰らそうかと思っていると、
「うん、あれから町をうろついてたんだ、で、兄さんの言っていたことがわかったと言うかで・・」
ロビンは抱えたままになっていた箱から紙を一枚取り出して、エディに手渡してから、昨日あった大まかな話を伝えだしていった。
昨日、行く当てなく彷徨うロビンは、町の皆が、このトウから出ている「平民議員」に良くない感情をもってることを聞いた。
また、今回立候補しているのは、その一族の奴で、こいつも、頗る評判が悪い奴らしいこと、出来るなら、他の者がなってほしいと思ってる事などを聞く。
それを聞いた自分は、皆の救世主となる人物(メイの父)を知っていることを思わず伝えたのだ。
だが、伝えれば伝えるほど、メイの父ではなく、アッシュの話題になっていったこと。
しかも、アッシュは有名人で評判が良くて、あっという間に、「その紙」が出来上がったことを、最後は自慢げに話しだした。
エディは、手にした紙を見つめる。
「で、これを作ったから、費用をだせと言うのか?」
兄が、紙に描かれているアッシュの顔を指で弾いてから、ロビンを睨みつける。
「お前、メイの父親の名前言ってみろ?」
鋭い目でロビンをさらに睨むエディに、ロビンは顔を背けだした。
『こいつ、義理の親の名、忘れてるな・・』
ロビンの愚かさには呆れを覚えるが、これは、今に始まったことでないので、エディはこれ以上は突っ込んでの質問はやめた。
「昨日も言った。私は勝算がないものにはのらない」
エディの冷たい言葉に、ロビンは顔を上げて、何故かニヤリと口角をあげて見せる。
「勝算はあるはずですよ。兄さんだって、アッシュ義兄さんならって言いましたよね?僕、エディ兄さんが言うなら間違いないと思うんです!」
ロビンが勝ち誇った顔を向けて、エディに食い下がる姿に、当のエディが目を瞠る。
『おいおい、昨日とはまるで違うもの言いじゃないか・・』
ロビンの反応に驚きながらも、その口調に、エディは何故か心を揺さぶられ出していく。
「このまま、紙切れ、ゴミになってしまうのはどうかと思います。それに、家を出る際に貰ったお金で支払った分以外の支払いは、僕の素性からハロルド商会へ請求が来ると思うんですよ。もう、ハロルド商会の名が出ている状態で、このまま引き下がるのはどうかと思うんですが?」
いつになく、饒舌なロビンの話ぶりに、エディは感心までしている。
「ほぅ、お前はここで手を引けば、ハロルド商会、すなわち、私が腑抜けであると知らしめ、そして、名を落とすと言いたいんだな?」
エディが手を組み、顎をその組手に乗せた状態でロビンに問いただす。
「そこまでは。ただ、兄さんなら、この状況なら勝ちにいくんじゃないかと。それに、ハロルド商会に利益を持たせるんじゃないかと」
ロビンはにこりといつもの笑みを浮かべて見せると、それを見た、エディはフンと鼻で笑って返した。
「アッシュくんは納得済みなのか?」
エディが確認の為に、ロビンに問いかけるが、ロビンは頭を振るだけだった。
「わかった。アッシュくんと会おう。そして、彼には「平民議員」になって貰おう。資金は、ハロルド商会が出す」
エディが不敵な笑みを浮かべていうと、ロビンは大きく頷き、兄エディへの尊敬の念を更に深めたのだった。
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