【完結】神産みの箱 ~私が愛した神様は

ゴオルド

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第十五話 好きなのに

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 昼食とともに黒紀酒を出すと、辰様はまず黒紀酒に手をつけた。何度か盃を飲み干し、少し落ち着かれたようだった。箸も手に取ってくれたけれど、食は進まないようだ。
 お酒のつまみとして用意していた鮭の楚割すわやりを見て、「これは陽葉瑠がつくったものですか」と聞くので、そうだと答えると、それだけは残さず食べてくれた。

 落ち込んでいて元気がないのは、このところずっとだ。しかし、今の辰様は元気がないだけでなく、妙に動きが緩慢だった。盃を持つ手もぎこちない。そのくせ私と目が合うと、なんでもないと言いたげに微笑まれる。気を遣ってくれているのだろう。
 何かがおかしい気がした。喜びごとというのは、それほど体に負担がかかるものなのだろうか。確かに立て続けではあったけれど……。
 会話をするのもはばかられて、静かに食事を済ませた。

「では、辰様、ゆっくり休んでくださいね。私は午後の鍛錬がありますので、子葉に戻ります」
「子葉に……」
 立ち上がり、戸を開けようと踏み出したら、背後からぎゅっと抱きしめられた。密着した背がいつもより熱い。疲労のせいだろうか。
「辰様? 大丈夫ですか、まだお体が……」
 振り返ろうとしたら首に唇を押し当てられた。いや、ぬるりとした熱い感触に、舐められているのだとわかる。
「子葉に行ったら、あの男と二人きりになるのですよね」
 もしや留園先生に嫉妬されているのだろうか……。私は慌てて言い訳した。
「でも、二人きりといっても、建物の中にはほかにも紅飛斗がたくさんおりますし、それに勉強の話しかしませんし」
「それでも部屋では二人なのでしょう。心配です、陽葉瑠が男を誘惑しそうで」
「そんなことしません!」
 耳を軽く噛まれて、ぞくりとした。
「陽葉瑠は誘惑しそうだし、男は男で誘惑に乗りそうな気配がするのです」
 舌が耳の形をなぞるように這う。
「そ、それはないです、先生は堅物ですし……というか、そもそも私は誘惑なんかしません」
「そうでしょうか?」
 辰様の手が、私の着物の裾をかきわけて入り込む。
 後ろから秘部を手のひらで覆うようにして優しく撫でる。
「……っ」
「陽葉瑠……」
 もう片手は私の胸を弄んでいる。全体を優しく撫でるようにされたかと思えば、時折乳首をきゅっとつままれる。
「し、辰様、私、子葉に行かないと……」
 先生を待たせてしまう。
 それなのに、もう既に濡れている入り口をかきまぜられて、私の体は卑猥な音を立てている。
 背中を押されて体勢を崩しそうになり、とっさに壁に両手をついた。
 お尻を突き出すような形になった。指が増やされ、圧迫感が増す。おなか側を掻くようにかきまぜられて水音が大きくなる。羞恥で体が燃えるようだ。

「あ、あ……もう、だめ、辰様、私本当に……行かないと……っ」
 指が抜かれた。ほっと息をついたとき、後ろから指よりも大きなものが挿入された。
 背に震えが走る。
 すっかり慣らされた体は、受け入れてももう痛むこともない。痛みではない別の感覚に体がおののく。
 
「ねえ、陽葉瑠。私はこんな……無理やり犯すのではなくて、愛し合って抱き合いたかった……」
 貫かれながらかぶりを振る。
「いいえ、私は無理やり犯されてなんか……犯されていません」
 腰を掴まれて奥まで突き上げられる。辰様の吐息が耳にかかった。
「犯されているんですよ」
 耳元でささやく声はかすれて、どこか切ない響きを持っていた。
「あなたは愛していない男から犯されているんですよ……」
「はあ……んっ……そんなこと……言わないで……」
 だって、その言葉で傷つくのは私じゃなくて辰様のほうなのに。

 いつもより乱暴にされて、それなのに甘い痺れに膝ががくがくと震えた。今にも倒れてしまいそうだ。踏ん張った太ももを粘ついた密が伝い落ちていく。

「好きでもない男に犯されて、こんなになってしまうなんて、陽葉瑠はいやらしい子ですね。これだから信用ならない……誰に抱かれてもこうなってしまうのでしょう?」
「違う……違うんです……」
「何が違うんです」
「辰様だから……」
「嬉しいことを言ってくださるのですね。でもそんな甘い嘘、私は要りません。こうして肌を合わせていればわかるのですよ。陽葉瑠はちっとも胸がどきどきしていないではありませんか。私を愛していないからでしょう。そのくせ私を誘惑してくる。あの男のことも誘惑するつもりなのではないですか」
 冷たく言い放ち、腰の動きがより激しくなった。まるでやるせなさをぶつけるかのように。それでも逃げることなく全部受け止めたいと思った。辰様の愛も怒りも悲しみも全て。

「……私は……辰様のことが好きです……、辰様だけです……」
 壁に両手をつっぱり、揺すり上げられながら、うわごとのように何度も繰り返す。

「やめてください。信じてしまいそうになる」
 骨がきしむほど強く抱きしめられて、熱い飛沫を体の最奥に感じた。
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