イケメンの園のMariko ~私に友だちができるまで~

ゴオルド

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3 そんな純情あってたまるか

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 マリコにあることないこと言われながらも、四天王の守護のおかげでエロ騒ぎに巻き込まれることなく、どうにか勉強を進める日々だった。私はどうしても資格が取りたい。マリコたちはアレだが、講師の下谷先生の解説はわかりやすく、勉強会のおかげで模試の結果も上々、エロごときに負けてたまるかと思っていた。

 そんなある日のこと。

 勉強会にやってきた私は、公民館の入り口で、マリコ派閥のイケメン宮田に呼び止められた。
「相談したいことがあるから、今度時間をつくってくれないか」
 宮田は私の手にメモ用紙を強引に押し付けた。赤いボールペンで書かれた連絡先が禍々しい呪いのように見えた。
 相談したいことだなんて。とても危険な香りがする。罠かもしれない。となれば、四天王に相談だ。そう一瞬思ったが、いくらなんでも、そんなふうに彼らを頼ってばかりじゃ、それこそオタサーの姫じゃないかと思い直した。
 こんなしょうもないことで相談したら、四天王から呆れられてしまうかもしれない。自分で何とかしよう。だって「相談女」だと思われても嫌だ。相談女とは、「相談したいことがあるの」といって男性に近寄り、そのまま寝技に持ち込む女のことである。柔道の選手でさえ、相談女の寝技からは簡単には抜け出せないという。私は相談女だと思われたくない。
 宮田の相談なんか無視すればいいという気もするが、そうするとマリコは「同じ受験生なのにひどい」と絶対文句を言う。間違いなく言う。断言できる。

 もうこれ以上悪口を言われたくなくて、とりあえず話だけ聞くことにした。会うのは怖いから電話で。

 宮田の相談内容は、一言で言うと「エロいことしようぜ」だった。これ相談か? 思わず鼻水が出た。その場で断ったのだが、そこから先が問題だった。マリコが、「北斗は男のピュアな純情を踏みにじった」と言いふらし始めたのだ。
 エロいことしようぜといきなり切り出す男の純情ってなんだ。そんなもんあってたまるか。そもそも私は口説かれてすらいないではないか。ただエロの交渉をされただけで、そこに恋愛要素は皆無だった。
 しかし、マリコからしてみれば、私を悪く言う絶好のチャンス。誹謗中傷はエスカレートし、「北斗は魔性の女」とまで言われるようになった。それを聞いたマリコ派閥の男たちは「貢がせたんだろう」とか「浮気したんだ」とか憶測で私を批判するようになった。付き合ってもいない男性とのエロ行為を電話で断っただけでここまで言われるとは。噂は最終的には、「私が宮田のことを好き過ぎて、でも宮田がマリコとエッチしまくっているから、私がヤキモチを焼いている」という内容になり、アホらしすぎて放置した。言い返す気にもならなかったのだ。

 その結果、なんと私は四天王から見捨てられることとなってしまった。
 まさか。予想外だった。

「北斗のやつ、勉強会にエロを持ち込むのに反対だと言っておきながら、裏でマリコ派閥のイケメンに手を出しておった。これすなわち裏切りなり」ということである。

 違うのだけれども。私は誰にも手を出していないし、誰からも手を出されていない。そう説明しても信じてもらえなかった。肉欲に堕ちた女の言い訳、そう思われてしまって、軽蔑のまなざしが返ってくるだけだった。
 悲しかった。だが、私と四天王は、必死に誤解を解こうと思えるほどの関係性もない。信じてくれないならどうでもいいかなという感じになってしまい、四天王が勉強会を辞めていくのを「達者でな」という気持ちで見送った。

 四天王が去り、ノーガードとなった私は、危険だから会を辞めたほうがいいのはわかっていた。しかし勉強会だけは参加を続けた。懇親会にはさすがに不参加だが、まあ勉強会ぐらいなら大丈夫だろうと高をくくっていた。
 私はどうしても資格が取りたかったのだ。少なくとも模試で合格圏内に入るまでは、この会にいたかった。
 だが……。
 不運というのは続くものなのかもしれない。
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