勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

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【第八章】 美少女と、研究施設で罪を知る

●155 side ヴァネッサ

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 ギャビンが冒険者だと知ってからというもの、あたしは決まった相手とばかり喋っていた自分を反省した。
 広い世界を知るためには、たくさんの人から話を聞くことが大事であり、あたしはそれが出来る環境にいたのだ。
 それなら、自分から行動を起こさないのはもったいない。

「もっといろんな人と話してみた方がいいのかもしれないわね」

「何だよ急に」

 あたしの独り言を聞いた生意気な男の子が、ぶっきらぼうに返事をした。
 別に彼に向かって話したわけではないのだけれど。でも返事をされたからには、会話を始めよう。

「だってこの学び舎に冒険者ギルドに登録してる人がいるなんて知らなかったんだもの」

「ああ、ギャビンのことか……もしかして惚れたのか?」

 彼はムッとした様子であたしのことを見た。
 異性と話しただけで、惚れたと決めつけるのは恋愛脳が過ぎる。
 この世界の半分は異性だというのに。

「どうしてそうなるのよ。もっと見識を広めたいって話よ」

「なんだ、いろんな話を聞きたいってことか」

 彼は安心したように息を吐いた。

「そう。たとえばあの人、休み時間はいつも内職をしてるわよね。話しかけてみたいけど隙が無いのよね」

 あたしはそう言うと、一人の女の子を指差した。
 あたしよりも年上だということは知っているけれど、それ以外のことは知らない。
 いつも真面目に授業を受けていて、休み時間には内職をしていて、常に忙しそうだから話したことがないのだ。

「あいつには関わらない方が良いぜ。悪い噂が多いから」

「悪い噂?」

 彼女のことを真面目な人間だと思っていたあたしに返ってきたのは、正反対の評価だった。
 勤勉そうに見えるのに、悪い噂が流れているとは、どういうことだろう。

「あいつ、ここで学んだ内容を書き記して、町で売ってるらしいぜ。ここの授業料よりも高い値段で」

「なにそれ!?」

 予想外の事実に声が裏返った。
 真面目に勉強していたのは、金儲けをするためだったということ!?

「というか、売れるの?」

 ここの授業料よりも高い値段を出して授業内容を書き記したノートを買うくらいなら、自らが学び舎に通った方が良い気がする。
 しかしあたしの疑問に、彼は明確な答えをくれた。

「大人に売れるらしいぜ。学び舎には子どもしか入れないから。大人になってから勉強を学びたいと思っても、高い料金で家庭教師を雇うしかないらしい。それよりは学び舎での授業をまとめたノートを買った方が安上がりなんだってさ」

「そうなの……でも、この学び舎では先生たちが厚意で教えてくれてるのよね。ここの授業料はかなり安いと聞いたわ」

 儲けではなく、子どもたちに勉強を教えることを目標とした立派な大人たちが、この学び舎の先生だ。
 そのためここの授業料は普通の学校と比べて格段に安いらしい。
 つまりこの学び舎は、先生たちの厚意で成り立っているのだ。

「らしいな。だから悪い噂なんだよ。あいつは他人の厚意を無下にする奴だって噂されてるんだ」

 男の子は、例の女の子のことをチラリと見ながらそう言った。

「確かに……罪では無いにしても、ちょっとどうかと思う行為よね」

 先生たちのせっかくの厚意を、金儲けに利用するのは褒められた行為ではない。
 だけど、彼女には彼女なりの理由があるのかもしれない。
 噂だけを信じて、話したこともない彼女を軽蔑するのは、それこそ褒められた行為ではない。
 彼女がどういう人物であるかは、きちんと自分で彼女と接触をして判断するべきだ。

 だからあたしがするべきは噂を鵜呑みにして彼女から距離を取ることではなく。

「何か事情があるのかもしれないし、そもそも噂自体が嘘かもしれないわ。噂を鵜呑みにしないで、実際に自分の目で悪い人かどうか確かめてみるわ」

「ちょっと、おい、ヴァネッサ!?」

 あたしは彼女がどういう人物かを探るべく、彼女と接触することを決めた。



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